1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

アジアに関する論文

ユーラシアの地政学と日米中を考える

1997年11月号

ズビグニュー・ブレジンスキー 戦略問題国際研究所(CSIS)顧問

世界の人口の75パーセント、GNPの60パーセント、エネルギー資源の75パーセントが存在するユーラシア大陸は21世紀の安定の鍵を握る「スーパー・コンチネント」だ。ユーラシアにおけるアメリカの差し迫った課題は、「いかなる単独の国家、あるいは国家連合も、アメリカを放逐したり、その役割を周辺化させたりするような力をもてないようにすることだ。この点でとりわけ重要なのが、NATO、そして、アメリカと中国の関係であり、これを軸に、ロシア、中央アジア、日本との安定的共存を図っていかなければならない。NATO拡大とロシアの関係同様に、アメリカ、日本、中国の戦略関係にも細心の配慮が必要になる。肝に銘じておくべきは「再軍備路線への傾斜であれ、単独での対中共存路線であれ、日本が方向性を誤った場合には、安定した米日中の3国間アレンジメント形成の可能性はついえ去り、アジア・太平洋地域でのアメリカの役割は終わる」ということだ。

インドはいま何をなすべきか

1997年9月号

ラメッシュ・タクール オーストラリア国立大学平和研究所所長

独立から五〇年を経たインドは、自らの立場を貫くためにふんだんに資金を使えるほど豊かでも、圧力をかけるほど強大でも、相手を感化するほどに規律立ってもいない。インドは何をどう読み間違えたのだろうか。冷戦後のいま、非同盟国が力を失い、核保有が必ずしも大国の代名詞ではなく、経済力こそが大きなパワーの源泉となっていることを忘れてはならない。宗教的対立を克服し、「繁栄とパワーと原則を相互補完的に一つへと導く」将来の見取り図を描き出すには「自国への自信を十分にもち、パワーを構成する新要素がなんであるかを理解し、近隣の小国と大きな配慮をもって交渉する巧みさ」が必要である。

スハルト以後のインドネシア

1997年9月号

アダム・シュワルツ ジョンズ・ホプキンス大学客員研究員

経済発展によって、すでにインドネシアには民主主義の根幹を支えるべき中産階級が誕生しており、成長率からみても、この国は順風満帆のように思える。だが裏を返せば、腐敗や汚職、経済の一族支配がビジネスの常態とされているために、人々の起業家精神は抑え込まれ、水面下でのこそこそしたやり方ばかりが助長されている。さらに、複雑な民族、宗教、人権問題が存在するだけでなく、この国で唯一の確立された機構としての軍、そして大規模な若年失業者の存在、さらには、政治にはとにかく及び腰の中産階級と、堅固に織り込まれたスハルトの支配体制のなかで社会は硬直化している。経済成長を支えているこの国特有の経済・社会システムが、スハルトの表舞台からの退場とともに崩壊し、経済成長の影の部分で鬱積した感情を抱いている多様な民族、政治、宗教集団が一気に政治化するとすれば、この国の安定と繁栄だけでなく、ひろく東南アジア全域の経済と安全保障が脅かされることになるだろう。

文化は宿命である

1994年5月号

リー・クアンユー 元シンガポール首相(論文発表当時)
ファリード・ザカリア 『フォーリン・アフェアーズ』副編集長(論文発表当時)

東洋の社会においては、個人が家族の延長線上に存在すると考えられている。個人は家族から分離した存在ではないし、一方では、家族も親類の一部、友人の環、より大きな社会の一部として存在する。

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