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アジアに関する論文

同時多発テロ後のインドの内政と外交

2002年7月号

デニス・クックス ウッドロー・ウィルソンセンター上級政策研究員

同時多発テロ以降、米印は、政治・安全保障・経済に関する共通の利益をますます重視するようになり、いまや両国の関係は大きく前進し、緊密化している。だが、バジパイ政権は、対米外交では成果を上げつつも、カシミール紛争をめぐってパキスタンと深刻な軍事的対立局面にあるし、国内でも、政治危機、宗教対立、低迷する経済などの難題に直面している。対米関係の改善という成果を、パキスタンとの軍事的危機の解決、国内経済問題の解決に、どうすれば結びつけられるのか。

中央アジアを安定化させるには

2002年5月号

ポーリーン・ジョーンズ・ルオン  イエール大学政治学助教授 、エリカ・ウェインソール テルアビブ大学政治学助教授

中央アジア各国の政治的抑圧体制ゆえにイスラム主義運動が過激化し、民衆を過激派への支持へと向かわせている。これが秩序の不安定化を招き、さらに、穴だらけの国境線を越えて兵器や過激派が自由に移動していることが状況をさらに深刻にしている。過酷な抑圧体制を敷くウズベキスタンを、ブッシュ政権が、対テロ戦争との関連で中央アジアの覇権国に仕立て上げれば、地域秩序はますます不安定化する。イスラム原理主義の脅威をもっぱら軍事問題としてとらえれば、水資源をめぐる紛争、麻薬、難民、武器の流出入など、テロを招いた根本的問題への対応が放置され、不安定な状態が続くことになるからだ。

パキスタンでのイスラム革命を回避せよ

2002年2月号

アナトール・リーベン カーネギー国際平和財団シニア・アソシエート

パキスタンの歴代文民政権同様に、現在の軍事政権も社会・経済状況を改善できないとすれば、イスラム主義が、残された唯一の選択肢として浮上してくるかもしれない。イスラム過激派のテロリストたちは、インドのヒンズー教徒にイスラム教徒を迫害させることが、パキスタンで革命を起こす手っ取り早い方法であることを知っている。その結果インド・パキスタン戦争が起きれば、両国間の核戦争という忌まわしい危険が生じることになる。

グローバル経済の格差をなくすには

2002年2月号

ブルース・R・スコット ハーバード大学ビジネス・スクール教授

現在のグローバル経済では、勝ち組と負け組が必然的に出てくるし、1日1ドル足らずしか稼げない人々が世界にはほぼ10億人もおり、世界的な所得格差はますます拡大している。しかも、これを市場メカニズムで是正していくのは不可能である。問題の核心は、富裕国が移民と農産品輸入に対する障壁を設け、 一方で、発展途上世界の多くの政府が無能で効率性を欠いているために、外国資本を呼び込めずにいることだ。経済発展のためには制度の改革が必要であり、そのためには政治的・社会的近代化も必要になってくる。制度的不備こそが発展途上諸国の経済発展を妨げている大きな障害であり、外部からの助言や援助も制度面での整備に配慮したものとする必要がある。

外交問題評議会タスクフォース・レポート
アメリカと東南アジア

2001年8月号

J・ロバート・ケリー   米外交問題評議会・東南アジア政策タスクフォース議長  ロバート・A・マニング   同ディレクター

以下は二〇〇一年六月に公開された、アメリカの東南アジア政策に関する米外交問題評議会タスクフォースによる大統領へのメモランダムと、リポート本文の要約・抜粋。反対意見を含む英文の全文はhttp://www.cfr.orgからアクセスできる。

米外交問題評議会ミーティング
キッシンジャーが読み解く新世界
――元大統領補佐官が語る新政権の課題

2001年5月号

リチャード・V・アレン、ロバート・C・マクファーレン  

アジアは外交的にはグローバル・システムの一部を形成しているが、戦略的には各国が互いに相手国を潜在的な敵対勢力と見なしていた十九世紀のヨーロッパと同じメカニズムでいまも動いている。だが、最大の問題は特定の一国がアジアを支配しようと試みることで、かつてそのような試みをした日本とアメリカは戦争をした。しかし、そのような試みが具体化していない現状では、中国を含むいかなる国も敵対国と見なすべきではない。(キッシンジャー)

知識革命の南北間格差を是正せよ

2001年4月号

アヴィナシュ・パサード ステート・ストリート銀行調査部長

グローバリゼーションはゼロサム・ゲームではなく、万人がそこから利益を引き出すことができる。問題は貧困諸国が、グローバリゼーションという機会の拡大をうまく利用するのに必要な知識や技術をもっておらず、制度が整っていないために、投資も呼び込めず、それを活かせずにいることだ。必要なのは、途上諸国側が投資を呼び込めるような制度を確立し、教育を充実させ、一方で先進諸国がこれまでのダブルスタンダードを改めることだ。先進国は自分達が圧倒的優位にある部門については自由貿易を主張し、一方で、貧しい国からの農産物輸入の関税引き下げをためらってきた。富裕国が今後知的所有権を盾に、このような態度をくずさなければ、発展途上国はグローバル経済に関わっていく気力をなくしてしまい、世界の平和と繁栄も脅かされかねない。

資本主義の精神と文化

2001年4月号

ロバート・サミュエルソン/ニューズウィーク誌コラムニスト

アジアにおける親密な個人関係と血縁を基盤とする社会関係は、この地域の経済発展に一役買った。この二つの要素が相まって、欧米の法と独立した司法がはぐくんできたのとまったく同質の、商取引に必要とされる安心感と信頼が作り出された。戦後のアジア諸国はこうした家族支配の企業へ依存することによって、アジア諸国は「商法の整備を待たずに、経済成長を加速できた」。問題なのはアジアが急成長しすぎたため、こうしたシステムでは間に合わなくなっていることだ。

経済改革を阻むアジアの社会環境

2001年4月号

ヒルトン・L・ルート ミルケン・インスティチュート グローバル経済担当ディレクター

アジア企業が欧米流の改革を断行していないとすれば、それは欧米の改革を理解していないからではなく、単に彼らが置かれている状況下で改革を行うことが意味をなさないからだ。欧米の批評家たちは、アジアの企業が、この地域の社会、制度面での特異性に合理的に対応してきたことを見落としている。こうしたやり方が過去における成長を呼び込み、今でも、短期的な成長の基盤を提供している可能性がある。 だが、資金を調達できない状況が続けば、アジア企業も資本市場にアクセスするために自己変革を余儀なくされる。グローバル経済にむけた自己変革に成功した企業が収益と生産性の伸びを示すことこそ、改革の妥当性を示す根拠となり、改革を促進する刺激となるだろう。

世界は三つの貿易ブロックに分裂してしまうのか

2001年4月号

フレッド・バーグスティン 国際経済研究所所長

グローバル化のなかで、世界には三つの貿易ブロックが形成されつつある。アメリカ経済が大幅にスローダウンすれば、ヨーロッパとアジアはより大胆に独自の道を歩み始めるだろうし、実際に東アジアは歴史上始めて自分達の経済圏を構築しつつある。「資金もたいして出さず、自国の法律ややり方を変えることもなく、他国に命令だけを下す」。アメリカに対するこのような不満が、世界中でより一般的な反米主義と混じり合い、それを強化している。だからこそ、ヨーロッパと東アジアは自分たち独自の経済圏づくりに乗り出しているのだ。問題は、アメリカが無気力なままであれば、伝統的に多国間プロセスにもプラスの方向で作用してきた地域的自由化の試みが、しだいに地域ブロック間の反目と敵意によって彩られかねないことだ。

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