1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

アジアに関する論文

インドはアメリカの戦略的パートナーだ
――米印核合意の本当の目的

2006年8月号

アシュトン・B・カーター/ハーバード大学ケネディ・スクール教授(科学、国際関係)

ワシントンが核の平和利用をめぐってインドに譲歩したのは、別の領域でもっと多くのものを勝ち取るためだった。イランの脅威、政情不安定なパキスタン、そしてとかく行動が読めない中国などの国々が将来引き起こすであろう課題に対処していくうえで、戦略的な要地に位置し、めざましい経済成長を遂げる民主国家インドの支援と協力を確保することをワシントンは重視した。核保有国としての地位を認めることと引き換えに、インドを戦略的パートナーとして取り込むという取引は、アメリカにとって妥当な決断だった。この合意が成功するかどうかは、ひとえにインドの将来の行動にかかっている。

北東アジア戦略環境を検証する

2006年8月号

FAJブリーフィング

日米を中心に各国が対北朝鮮金融制裁を強化するなか、今度は北朝鮮が核実験を準備しているという情報も出てきている。だが、今後を考える上で、7月のミサイル実験を境に、北朝鮮をとりまく戦略環境がすでに変化していることにも目を向ける必要がある。日本は地上配備型ミサイル防衛システムの配備にますます積極的になり、一方、北朝鮮の不安定化を恐れ、これまで慎重な姿勢をとってきた韓国と中国の立場も明らかに変化してきている。韓国はこれまでの北朝鮮関与政策を見直し始め、中国も北朝鮮関係口座の凍結へと踏み切った。ウィリアム・ベリー元国防長官は、「北朝鮮が核実験に踏み切れば、①北朝鮮は核兵器、核関連物質の輸出を試み、②アジア太平洋全域で核の軍拡レースが起き、③イランの核開発を事実上黙認せざるを得なくなり、その結果、イスラエルのイランに対する先制攻撃の可能性を含むまったく新しい問題がつくりだされる」と指摘している。

インド経済モデルの誕生か
――成功の検証と今後の課題

2006年7月号

グーチャラン・ダス
P&G・インド前最高経営責任者

インドの経済的台頭をめぐって特筆すべきは、東アジア諸国のように労働集約型の安価な商品を欧米市場に輸出して経済発展を遂げたのではなく、輸出よりも国内市場を、投資よりも消費を、工業よりもサービス業を、非熟練型の製造業よりもハイテク産業を重視して成長を達成していることだ。だがインドの規制緩和、経済改革はまだ完遂されていないし、教育、医療、水資源をめぐる適切な公共サービスさえ確立されていない。すべてのインド人がすぐれた学校、まともな医療施設、清浄な飲料水へのアクセスを持って初めて、偉大な国家への仲間入りができる。経済成長の黄金時代が続くと当然視してはならない。改革を続け、民間経済のペースについていけるように統治を改善していかなければ、非常に大きなチャンスを逃すことになる。

対北朝鮮制裁を行い、金正日後に備えよ
(2009年ミサイル発射実験後の分析)

2006年7月号

ビクター・チャ 前米国家安全保障会議アジア担当部長

「短期的には平壌のミサイル発射に対する制裁にむけた圧力をうまく作り出し、一方で、自由で民主的な統一朝鮮に備えた準備を長期的な観点から始める必要がある。……オバマ政権は北朝鮮を再度「テロ支援国家」にリストアップすることも検討すべきだし、金正日後の北朝鮮にどう対処していくかをめぐって中国、韓国との本格的な交渉を水面下で始め、北朝鮮が建設的な路線をとれば、その見返りに安全の保証と経済援助を与えるという取引を示すことで、(日本とともに)、潜在的な平壌の新指導層への接触を試みていくべきだろう」

ブッシュ政権が北朝鮮との平和条約交渉の可能性を示唆したことで、北朝鮮の核問題をめぐる外交的膠着状態が打開されるかに思われたが、専門家の多くは、そうした並行協議で貿易、人権、紙幣偽造などの厄介な問題が解決しやすくなるとは考えていない。むしろ、「アメリカに次期政権が誕生するまで待つのが北朝鮮の戦略のようだ」とみる専門家もいる。中国と韓国が北朝鮮に対する強硬路線をとることに難色を示すなか、平壌は交渉に参加するか離脱するかを勝手に決め、離脱した場合には、交渉復帰の条件を示すというやり方を繰り返している。「ゼロサム的な世界観しか持っていない北朝鮮から色よい返事を引き出すには、われわれの目的のすべてを断念し、彼らの目的のすべてを受け入れなければならない」と北朝鮮の頑迷さに、半ばさじを投げる専門家もいる。

ブッシュ政権が北朝鮮との平和条約交渉の可能性を示唆したことで、北朝鮮の核問題をめぐる外交的膠着状態が打開されるかに思われたが、専門家の多くは、そうした並行協議で貿易、人権、紙幣偽造などの厄介な問題が解決しやすくなるとは考えていない。むしろ、「アメリカに次期政権が誕生するまで待つのが北朝鮮の戦略のようだ」とみる専門家もいる。中国と韓国が北朝鮮に対する強硬路線をとることに難色を示すなか、平壌は交渉に参加するか離脱するかを勝手に決め、離脱した場合には、交渉復帰の条件を示すというやり方を繰り返している。「ゼロサム的な世界観しか持っていない北朝鮮から色よい返事を引き出すには、われわれの目的のすべてを断念し、彼らの目的のすべてを受け入れなければならない」と北朝鮮の頑迷さに、半ばさじを投げる専門家もいる。

核の平和利用、石油シーレーンの安全確保などをめぐってアメリカとインドが急接近しつつある。一方、中国をこれまで安全保障上の脅威とみなしてきたインドと中国の関係も経済・貿易を軸に改善へと向かいつつある。対中封じ込めのためにアメリカはインドとの緊密な関係を形成しようとしていると考える専門家もいれば、インドには対中封じ込めに加担する気はないし、そもそも、アメリカにも対中封じ込めの意図はないと指摘する専門家もいる。中国とインドの台頭によって急激に動きだした南アジア秩序再編の流れを検証する。

エネルギー資源輸出国のロシア、経済成長を支えるのに必要なエネルギー資源を求める中国。互いの経済的必要性を満たす両国の接近を自然のなりゆきと考える専門家も多い。だが、両国の接近は貿易領域に留まらない。「アメリカの影響力を封じ込める」という共通の戦略目標を掲げる中国とロシアは、貿易だけでなく、中央アジアにおける資源開発や安全保障、そして、北朝・イランの核開発問題をめぐっても協調・共闘路線をとっている。両国は、アメリカの覇権に対抗するために広範な領域での外交問題について政策のすりあわせを行い、協調している。また、「ロシアが中国の後ろ盾となれば、経済的にも軍事的にもますます日本の立場は危うくなる」と中ロ連合の日本への余波を指摘する専門家もいる。アメリカの覇権に対抗する中ロ連合を軸に、東アジアの地政学はどう変化していくのか。

核合意は核不拡散体制を脅かす

2006年4月号

ストローブ・タルボット/前米国務副長官

ブッシュ政権は今回の米印核合意をつうじて、「われわれは世界を『良い国と悪い国』、あるいは『良い国、悪い国、どちらともいえないあいまいな国』に区別し、まちがいなく良い国なら、核不拡散条約(NPT)の例外措置を認める」と表明したようなものだ。クリントン政権で国務副長官を務めたストローブ・タルボットは、「今回の合意の余波によって、すでに形骸化し始めているNPTがさらに弱体化していくこと」を憂慮し、インドにNPTの例外措置を事実上認めた以上、「今後、同様の例外措置の適用を望む国が出てくると思われる」とコメントした。現在ブルッキングス研究所の会長を務める同氏は、「われわれが良い・悪い、信頼できる・信頼できないという基準で、NPTの例外措置を認めるかどうかを決めれば、NPT体制は崩壊する」と警鐘を鳴らした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRブリーフィング
東アジアで新たな役割を模索する韓国

2006年3月号

エスター・パン スタッフライター

最近の韓国はアメリカとは距離を置いて、中国との関係を深めようとし、北朝鮮との協調路線を進めている。北朝鮮問題をめぐるアメリカとの路線対立、駐韓米軍の規模削減合意など、韓国のアメリカ離れは着実に進行している。むしろ、朝鮮半島の統一を最終目的に掲げる韓国は、日中間の対立、米朝間の核開発問題をめぐる膠着状態を含む地域内の問題の仲裁、調停役を担うことを望んでいるようだ。台頭する中国、日中対立、アメリカ離れという東アジアの新環境の下、韓国は何をめざしているのか。

Page Top