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アジアに関する論文

核の平和利用、石油シーレーンの安全確保などをめぐってアメリカとインドが急接近しつつある。一方、中国をこれまで安全保障上の脅威とみなしてきたインドと中国の関係も経済・貿易を軸に改善へと向かいつつある。対中封じ込めのためにアメリカはインドとの緊密な関係を形成しようとしていると考える専門家もいれば、インドには対中封じ込めに加担する気はないし、そもそも、アメリカにも対中封じ込めの意図はないと指摘する専門家もいる。中国とインドの台頭によって急激に動きだした南アジア秩序再編の流れを検証する。

エネルギー資源輸出国のロシア、経済成長を支えるのに必要なエネルギー資源を求める中国。互いの経済的必要性を満たす両国の接近を自然のなりゆきと考える専門家も多い。だが、両国の接近は貿易領域に留まらない。「アメリカの影響力を封じ込める」という共通の戦略目標を掲げる中国とロシアは、貿易だけでなく、中央アジアにおける資源開発や安全保障、そして、北朝・イランの核開発問題をめぐっても協調・共闘路線をとっている。両国は、アメリカの覇権に対抗するために広範な領域での外交問題について政策のすりあわせを行い、協調している。また、「ロシアが中国の後ろ盾となれば、経済的にも軍事的にもますます日本の立場は危うくなる」と中ロ連合の日本への余波を指摘する専門家もいる。アメリカの覇権に対抗する中ロ連合を軸に、東アジアの地政学はどう変化していくのか。

核合意は核不拡散体制を脅かす

2006年4月号

ストローブ・タルボット/前米国務副長官

ブッシュ政権は今回の米印核合意をつうじて、「われわれは世界を『良い国と悪い国』、あるいは『良い国、悪い国、どちらともいえないあいまいな国』に区別し、まちがいなく良い国なら、核不拡散条約(NPT)の例外措置を認める」と表明したようなものだ。クリントン政権で国務副長官を務めたストローブ・タルボットは、「今回の合意の余波によって、すでに形骸化し始めているNPTがさらに弱体化していくこと」を憂慮し、インドにNPTの例外措置を事実上認めた以上、「今後、同様の例外措置の適用を望む国が出てくると思われる」とコメントした。現在ブルッキングス研究所の会長を務める同氏は、「われわれが良い・悪い、信頼できる・信頼できないという基準で、NPTの例外措置を認めるかどうかを決めれば、NPT体制は崩壊する」と警鐘を鳴らした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRブリーフィング
東アジアで新たな役割を模索する韓国

2006年3月号

エスター・パン スタッフライター

最近の韓国はアメリカとは距離を置いて、中国との関係を深めようとし、北朝鮮との協調路線を進めている。北朝鮮問題をめぐるアメリカとの路線対立、駐韓米軍の規模削減合意など、韓国のアメリカ離れは着実に進行している。むしろ、朝鮮半島の統一を最終目的に掲げる韓国は、日中間の対立、米朝間の核開発問題をめぐる膠着状態を含む地域内の問題の仲裁、調停役を担うことを望んでいるようだ。台頭する中国、日中対立、アメリカ離れという東アジアの新環境の下、韓国は何をめざしているのか。

台湾の陳水扁総統が中国の「一つの中国」路線に抵抗するなか、中台は互いに相手への批判を強めつつある。だが、現状を危機的な状況にあると考える専門家はほとんどいない。陳が台湾独立にこだわるのは、総統としてうまく権力を行使できないためだとみる専門家も多い。立法院(議会)では国民党と親民党の野党連合が多数派であるため、陳の政治構想のほとんどは挫折し、結果、陳は政治的には身動きのとれない状況にある。台湾政治が二極化するなか、中国は台湾の野党陣営との接触を増やし、一方、独立を求める陳水扁政権は、台湾政治内での存在をアピールしようと中国を挑発するかのような行動をとっているが、現実には「レームダック」に陥りつつある。

CFRインタビュー
米副大統領前顧問が語る北朝鮮問題の本質
――アメを与えるだけでは問題は解決しない

2006年2月号

アーロン・L・フリードバーグ 前国家安全保障問題担当米副大統領副補佐官

「北朝鮮にアメを与えれば、彼らも未来に期待をもつようになり、援助や安全の保証と引き替えにこれまで試みてきた核開発計画を放棄すると考えるのは非現実的だ」。金正日の目的は自らの生存を確保することにあり、自分の権力基盤を揺るがす開放路線・経済改革路線などまじめに検討してはいない、とみるアーロン・フリードバーグは「北朝鮮との交渉を続けるとともに、彼らを締めあげる必要がある」と述べる。チェイニー米副大統領の国家安全保障問題担当副補佐官を務めた同氏は、「紙幣・貨幣偽造や資金洗浄などの北朝鮮の問題を公表し、偽造たばこ、麻薬取引など、北朝鮮が関与していると思われる不法行為を暴き、資金源を断つ必要がある」と強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

アメリカは対テロ戦争の観点から東南アジア諸国との軍事関係の強化を望み、一方、中国は東南アジアでの鉄工業、天然ガス資源、森林伐採事業への直接投資を拡大させ、FTA構想を積極的に展開している。日本もベトナム北部など、東南アジアへの投資を積極化させている。しかし、中国の経済成長が、東南アジアの経済成長の原動力となっている部分があり、「あと3~5年もすれば、この地域における日本やアメリカの経済、貿易上の影響力を脅かすようになるかもしれない」とみる専門家もいる。軍事関係をテコに関係強化をめざすアメリカと、経済攻勢を強化する中国と日本。自立を高めたい東南アジア。今後の流れはどこへ向かうのか。

CFRインタビュー
中国は北朝鮮とイランをどうみているか
―― 北京の核不拡散路線と米中関係

2006年1月号

アダム・シーガル
米外交問題評議会シニア・フェロー

現在の中国が北朝鮮の非核化を望んでいるのは明らかだが、一方で中国には、北朝鮮崩壊というシナリオを回避したいという思惑もある。その理由についてアダム・シーガル(CFRシニア・フェロー)は次のように述べる。「中国が恐れているのは、(北朝鮮が崩壊すれば)大量の難民が中朝国境に押し寄せ、すでに朝鮮民族が数多く暮らす国境地域をますます不安定化させてしまうことだ。北朝鮮の崩壊とともに、(すでに38度線付近に駐留している)在韓米軍が朝鮮半島を北上してきたら、どうなるかという不安もある」。一方イランの核問題については、「中国にとって、イランよりもアメリカのほうがはるかに重要な国であり」、「イランに対する経済制裁には反対しつつもその旗振り役にはロシアになってほしいと北京は考えていると思う」とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRリポート
北朝鮮の核保有を受け入れるのか?
―― そして、世界は核拡散へと突き進む

2006年1月号

スピーカー
スティーブン・ボスワース 元駐韓米大使 / ゴードン・チャン ジャーナリスト / ドナルド・グレッグ コリア・ソサエティー理事長
司会
エバンス・レベール 米外交問題評議会シニア・フェロー

北朝鮮の核開発はこの国が抱える問題の象徴に過ぎない。問題の本質は、北朝鮮が国家として破綻途上にあることだ。したがって、北朝鮮問題の究極の解決策は韓国との国家統合しかない。(S・ボスウォース)

中国をホストにした交渉が悪いとは言わないが、話し合うことは一方でコストを伴う。……中国は交渉プロセスを続けることには関心があっても、解決策は持っていない。これまでのような交渉なら、話し合いを続ければ続けるほど、状況は悪化する。(G・チャン)

北朝鮮をどうしたいのかについてアメリカが統一的な見解を持っているのかどうか、私にはわからない。クリストファー・ヒルが何を望んでいるかと、ディック・チェイニーが何を望んでいるかは随分違うと思う。(D・グレッグ)

人畜共通感染症の脅威
――鳥インフルエンザからBSE、エボラ出血熱まで

2005年12月号

ウイリアム・B・カレシュ 野生動物保護学会獣医学プログラム ディレクター
ロバート・A・クック 野生動物保護学会副会長

現代医学によって明らかになっている1415の感染症の60%以上が動物と人間双方への感染力を持っている。鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ出血熱、牛海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)などを含むこれらの人畜共通感染症のほとんどは、本来動物の病気であったものが生物種の壁を越えて人間に感染するようになったものだ。また、注目される機会はより少ないが、人間に一般的に見られるヘルペス、結核、はしかは動物にも感染する。病気は生物種や学問領域の垣根を越えて発生するという真実を認識し、それに応じた対応メカニズムを構築しない限り、人類は存亡の危機に立たされることになる。

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