1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

アジアに関する論文

The Clash of Ideas
アジアのナショナリズムと革命思想(1950年)

2012年3月号

ジョン・K・フェアバンク ハーバード大学教授(中国史)

1930年代初頭、毛が引き継いだ共産党は衰退途上にあった。事実、1937年に日本が中国を侵略するまで、共産党は中国政治ではまったく目立たない存在だった。しかしその後共産党は、中国北方における愛国主義運動の指導的役割を担うようになった。外国の専門家が彼らを愛国主義者と呼んだのは間違いではなかった。外国の侵略者が家屋に火を放ち、虐殺行為を行っているさなかに、農民を組織するのは簡単ではなかったが、日本軍の行動が、結果的には中国北部の農民を中国共産党の懐へと送り込んだ。共産党側は準備万端調えて、農民が自分たちのところへ転がり込んでくるのを待っていればよかった。重要なポイントは、あえて地主階級への反対を前面に出すより、むしろ抗日戦への愛国主義を訴えるほうが、国内の青年知識層が呼びかけに応じる可能性が高いことを共産主義勢力が理解していたことだ。

アジアにおけるアメリカと中国
―― 相互イメージと米中関係の未来

2012年3月号

ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

先の読めない 北朝鮮の権力継承プロセス

2012年2月号

スコット・A・スナイダー  米外交問題評議会アジア担当シニア・フェロー

北朝鮮は、アメリカと韓国に異なる姿勢をみせて、米韓を離反させたいと考えているようだ。・・・北朝鮮の国防委員会は、金正日の葬儀が終わった直後に、韓国との関係、特に李明博政権との対話路線について非常に高圧的で強硬な声明を出し、一方でアメリカや日本との個別交渉には前向きな姿勢をみせた。・・・6者協議の再開にはまだ時間がかかるだろう。・・・(平壌が)もっとも重視しているのは、権力継承をスムーズに進めることだ。だが、(日本で出版された著作で)金正恩を批判する金正男の発言が引用されている。常識的に考えて、北朝鮮のエリート層内で対立が起きていない限り、彼がそうした批判的なコメントを出せたはずはない。身辺に危険が及ぶ可能性がないと確信しない限り、金正恩を公然と批判する発言をするとは思えない。・・・・

2012年、 われわれは何を心配すべきか
――世界のマクロ政治・経済リスクを検証する

2012年2月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・グローバルマクロ分析部門ディレクター

・ ヨーロッパがソブリン債務危機を克服することはあり得ないが、ユーロゾーンの崩壊も、ヨーロッパ主要国が2012年に信用危機に陥っていくこともない。だが、ギリシャは非常に深刻な事態に直面する。
・ アメリカ(とドル)が安全地帯とみなされる限りは、ワシントンは経済を前に進めることができる。
・ 中東地域では歴史的なスンニ派とシーア派の対立が再燃しつつある。シリア、イラク、そしてイランもこの宗派対立にとらわれている。
・ インドは今後大きな危険にさらされることになる。インドのことを南アジアにおける欧米の前哨基地とみなすテロ集団の標的にされる恐れがある。
・ 急速に北朝鮮が崩壊へと向かった場合に何が起きるか。米軍と韓国軍は核施設の安全を確保するために北へ向かい、一方で、中国軍も自国への難民流入を阻止するために、鴨緑江を越えて現地に入り、秩序を確立しようとするかもしれない。・・・

CFR Interview
せめぎ合う米中とアジア諸国の立場

2011年12月号

サイモン・タイ シンガポール国際問題研究所(SIIA)理事長

いまやアジアの現実は大きく変化している。変貌を遂げたアジアは統合度を高め、中国の経済的役割が地域的に広く受け入れられている。だが、北朝鮮をあからさまに擁護する路線にはじまり、尖閣諸島、南シナ海の領有権問題にいたるまで、北京は外交的失策を重ね、ワシントンは「同盟国としてのアメリカの価値」を相手国に認識させるような戦略を表明することで、これに対処してきた。・・・ワシントンは、アジア太平洋関与戦略の中枢であるTPPのことを、アジアにおいて中国と影響力を競い合うための試金石とみなし、一方の北京はこれを「中国を除外してアメリカがアジア経済にエンゲージするための枠組み」と警戒している。アジア地域内でも中国が主導するFTA(自由貿易協定)に参加するか、それとも、TPPに参加してアメリカを重視するかという構図ができつつある。・・・

フォーリン・アフェアーズ・アップデート
覆されるリー・クアンユーの遺産

2011年11月号

アミタフ・アチャルヤ アメリカン大学・国際関係大学院教授

権威主義体制下で経済的繁栄と社会の安定を実現したリー・クアンユーの政策と思想は、これまでシンガポール国内でだけでなく、途上国においても高く評価され、先進諸国においてさえ大きな注目を集めてきた。だが、シンガポールの有権者は繁栄と安定だけでなく、民主化を求め始めた。この流れは、貧富の格差の増大、不動産価格の高騰、物価や生活コストの増大、そして移民流入の増大に伴う失業問題の深刻化などによって生じている。政府が抜本的な対策をとらないことに有権者は怒りを露わにし、しだいにリーの政党である人民行動党を見放しつつある。2011年の議会選挙と大統領選挙の双方において、シンガポールの有権者たちは、より大きな政治的自由を望んでいることを明確に示した。これは、「開発と安定に必ずしも民主主義が必要とは限らない」というリーの信条の一つを人々が拒絶し始めていることを意味する。すでに、選挙における人民行動党の後退を受けて、リーは政府ポストを辞し、「若い閣僚チームが若い世代とつながり、交流することで、シンガポールの未来を形作って欲しい」と表明している。

覆されるリー・クアンユーの遺産

2011年11月号

アミタフ・アチャルヤ アメリカン大学・国際関係大学院教授

権威主義体制下で経済的繁栄と社会の安定を実現したリー・クアンユーの政策と思想は、これまでシンガポール国内でだけでなく、途上国においても高く評価され、先進諸国においてさえ大きな注目を集めてきた。だが、シンガポールの有権者は繁栄と安定だけでなく、民主化を求め始めた。この流れは、貧富の格差の増大、不動産価格の高騰、物価や生活コストの増大、そして移民流入の増大に伴う失業問題の深刻化などによって生じている。政府が抜本的な対策をとらないことに有権者は怒りを露わにし、しだいにリーの政党である人民行動党を見放しつつある。2011年の議会選挙と大統領選挙の双方において、シンガポールの有権者たちは、より大きな政治的自由を望んでいることを明確に示した。これは、「開発と安定に必ずしも民主主義が必要とは限らない」というリーの信条の一つを人々が拒絶し始めていることを意味する。すでに、選挙における人民行動党の後退を受けて、リーは政府ポストを辞し、「若い閣僚チームが若い世代とつながり、交流することで、シンガポールの未来を形作って欲しい」と表明している。

CFRインタビュー
ユドヨノ大統領が語る
インドネシアの次なる改革アジェンダ

2011年7月号

スシロ・バンバン・ユドヨノ インドネシア大統領

新興市場国の仲間入りを果たしたインドネシアのGDP成長率はいまや6%に達している。G20のメンバーになり、2011年にはASEANの議長国にも選ばれた。すでにインドネシアの国際社会での地位は大きく向上している。だが、外国の投資家は、インフラがまだうまく整備されておらず、政治腐敗が横行していることなどを懸念して、インドネシアへの投資には必ずしも積極的ではない。ユドヨノ大統領自身、この点をはっきりと認識し、次のように述べている。「優れた統治構造を築き、政治腐敗と闘い、法的枠組みを強化し、法の支配を定着させなければならない」。・・・その上で「ビジネス環境が改善され、われわれの改革路線が評価されて、より多くの外国からの投資が舞い降りるようになることを期待している」。だが大きな懸案とされる政治腐敗の撲滅はなかなか進展していない。「150名を越える、官僚、大臣、議員、州知事、市長に法の裁きを受けさせているが、・・・・政治腐敗を撲滅するにはまだ多くの努力が必要だ」と大統領自身認め、「この問題に取り組んでいくのは非常に困難な課題だ」と、改革がまだ道半ばであることを認めた。

Page Top