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テーマに関する論文

高齢化が支える世界の平和
―― 少子高齢化で戦争は減少する

2025年9月号

マーク・L・ハース デュケイン大学 教授(政治学)

人口動態は、国にとって経済的・軍事的に可能なことを大きく左右する。この意味で、高齢化は、平和へのかつてない原動力になる可能性がある。高齢化は戦争をする能力も、戦争への社会的許容度も低い社会を誕生させると考えられるからだ。実際、高齢社会への対応を含む、社会保障への政府支出が国の予算に占める割合が25%を超えると、その国が軍事的紛争を起こす可能性は大きく低下する。高齢化した国の多くは、この閾値を超えようとしているか、すでに超えている。21世紀は「人口減少の時代」になると広く予測されているが、「より平和な時代」になるかもしれない。

驚異的なドローン革命
―― ウクライナからいかに学ぶか

2025年9月号

ジョン・ファイナー 元米大統領副補佐官(国家安全保障担当)
デイヴィッド・シャイマー 元米国家安全保障会議(NSC)部長

ウクライナ軍の前線部隊は、ドローンの戦場におけるパフォーマンスを軍需企業に伝え、企業側はこれを基にシステムを常に改善し続けている。アメリカを含む世界のほとんどの国々は、兵器のフィードバックと改善という領域でウクライナに大きな後れをとっている。すでにウクライナとロシアは、ドローンなどの防衛技術にAIを徐々に組み込むことで、イノベーションをさらに進化させている。もしアメリカがウクライナ支援から手を引けば、実績のある防衛技術や戦場における知見、ロシアの軍事パフォーマンスに関するデータへのアクセスを失う危険がある。

アメリカと世界経済の未来
―― 不安と不確実性の時代

2025年8月号

モハメド・エル・エリアン ケンブリッジ大学 クイーンズ・カレッジ学長

経済・財政的にみると、現在のアメリカは、途上国に似た状況にある。不備のある税制で歳入を切実に必要としている途上国のように、多くの輸入品に唐突に高関税を課している。この行動を続ければ、途上国のように資本流出に直面し、対米投資をためらう流れが生じる。ワシントンはグローバル秩序の基盤を揺るがし、しかも、そこには「次の何か」への複雑な移行を誘導できる信頼できる道筋や指標がなく、世界は大いなる不確実性に備えなければならない状況にある。シナリオは二つある。

東南アジアの選択
―― なぜ中国に傾斜しているか

2025年8月号

ユエンフォン・コン シンガポール国立大学 公共政策大学院 教授
ジョセフ・チンヨン・リウ 南洋理工大学 教授

「米中のどちらかを選んでいる」という自覚はないのかもしれないが、東南アジア諸国の多くが、アメリカから離れて、中国へ傾斜しているのはいまや明らかだろう。しかし、そのパワーを北京がどのように使うかをめぐって、地域諸国が大きな懸念をもっているのも事実だ。実際、この地域のエリートを対象とする調査で「誰を信頼しているか」という問いで、第1位に選ばれたのは日本で、中国は4位だった。流れは中国にあるとしても、北京が地域諸国の懸念を和らげ、信頼を勝ちとるには、まだ、やるべきことが多く残されている。だが、2期目のトランプ政権の政策が、北京がこの課題を克服するのを容易にするのかもしれない。

変化したイランの社会契約
―― 空爆はいかにテヘランを強化したか

2025年8月号

モハマド・アヤトラヒ・タバール テキサスA&M大学 行政・公共サービス大学院 准教授

空爆を受けた後のイランでは、国家安全保障を何よりも優先する新しい社会契約が生まれているようだ。攻撃によってイランは弱体化したかもしれないが、指導層はイスラエルとアメリカの攻撃に耐えたことを誇りに感じている。イスラエルの都市に大きな損害を与えたことを大きな成果とみなし、 侵略に対して(報復で)決意を示すことが、相手を抑止する唯一の方法だと信じている。テヘランはいずれ「抵抗の枢軸」の再構築に乗り出すはずだ。これまで以上に、外交交渉を信用しなくなり、むしろ、イスラエルとの長期的な消耗戦、潜在的核武装に備えた基盤を築いていくだろう。

インドの大国幻想
―― 多極世界のポテンシャルと限界

2025年8月号

アシュリー・J・テリス カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

「多極世界では、特定の一国が自国の意思を他国に強要できないため、世界の平和には多極化が必要になる」。インドは、この視点から、アメリカに近づきつつも、戦略的自立を維持し、公的な同盟関係を避け、イランやロシアといった欧米の敵対国との関係を維持している。多様な連携を通じて、インドは近い将来に中国、アメリカ、欧州と肩を並べる存在になり、その結果、単独で中国への対抗バランスを形成できるようになるとニューデリーは考えている。だが、それは幻想にすぎない。

もう誰も相手にしない
―― ポスト・アメリカ世界のアメリカ

2025年8月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 ディレクター(外交・国防政策研究)

国際システムの他のアクターが(特定の言動に)どのように反応し、どのような流れを形作るかを予測することも外交手腕に含まれる。トランプ・チームには、そのような能力が欠落している。ワシントンのパートナーのなかには、友人であるアメリカが正気に戻ることを期待して、様子見をする国もあるかもしれない。しかし、もう元には戻れない。同盟国やパートナーの信頼と信用は修復不能なほどに損なわれている。いまや問うべきは、アメリカパワーの基盤だった米主導の協調的秩序から各国が手を引けばどうなるかにあるのかもしれない。

木材資源と非合法マネー
―― 国際犯罪組織による森林伐採

2025年8月号

ユスティナ・グゾフスカ セントリー エグゼクティブ・ディレクター
ユローラ・フェリス セントリー ディレクター(非合法財務政策対策担当)

森林の違法伐採は、自然環境の破壊にとどまらず、麻薬カルテル、テロ組織、ならず者国家の資金源とされ、いまや国際安全保障上の脅威を作り出している。南米、アフリカ、東南アジアなどを中心に、国家・非国家アクターを問わず悪辣なアクターが違法伐採を試みている。世界の木材取引の15―30%が非合法だとみなす推定もある。違法行為による収益が増大する一方で、その脅威は過小評価されたままだ。各国が違法伐採を真剣に取り締まるまでは、犯罪者たちは森林伐採を通じて資金を調達し続けるだろう。

トランプは皇帝なのか
―― 独裁を阻む抑制と均衡の再確立を

2025年8月号

エリザベス・N・サンダース コロンビア大学 政治学教授

米大統領は、これまでもまるで帝国の指導者のようだったが、本当に皇帝のように振る舞おうとした大統領は、少なくとも、2期目のドナルド・トランプまではいなかった。米同時多発テロ以降、米議会は外交領域における大統領権限の拡大を認め、それを取り戻そうとしなかった。最高裁も、有意義な抑制を大統領に課すことに乗り気ではなかった。こうして、トランプは、外交政策や国家安全保障にわずかにでも関連する案件なら、ほぼ思うままにできるようになった。世界各国に追加関税を課し、議会が定めた対外援助を骨抜きにし、同盟国をいじめ、独裁者に言い寄っている。あらゆる制約がなくなれば、個人独裁体制下の指導者は間違った軍事的冒険主義をとり、衝動的な決定を下し、自滅的な政策をとりやすくなる。

新しい世界の創造へ
―― もう過去には戻れない

2025年8月号

レベッカ・リスナー 米外交問題評議会 シニアフェロー
ミラ・ラップ・フーパー アジア・グループ パートナー

トランプ政権の2期目が終わる頃には、古い秩序は修復不可能なまでに崩壊しているだろう。トランプ後を担う大統領は、多極化した、複雑な国際秩序を理解し、そこでアメリカがどのような役割を果たすかを決めなければならない。すべてを見直す必要がある。民主的価値へのコミットメントにはじまり、同盟関係、貿易、国防戦略までのすべてを再検証しなければならない。そうしない限り、ポスト・トランプの遺産という視点だけで米外交の将来を考え、これに過剰反応する危険がある。いまや、新しいテクノロジー、台頭する新興国が出現し、これに、長年の緊張が組み合わさることで、カオスが作り出されている。「ポスト・プライマシー」ビジョンの形成が急務だ。

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