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テーマに関する論文

米中衝突と世界経済戦争
―― その経済・貿易リスクを低下させるには

2025年3月号

アイク・フレイマン スタンフォード大学フーバーフェロー
ヒューゴ・ブロムリー ケンブリッジ大学地政学センター リサーチフェロー(応用歴史学)

中国が東アジアの米軍基地を攻撃するという深刻な危機シナリオが現実になっても、中国経済との全面的なデカップリングを直ちに試みるのは、世界経済戦争を誘発しかねない危険なギャンブルだ。むしろ、重要な製品や物資のサプライチェーンを中国から国内や友好国へリショアリング(移転)しつつも、それほど重要でないサプライチェーンは危機に直面しても(短期的には維持し)長期的に切り離していく措置をとるべきだ。国際経済システムを危機から守るには、デカップリングプロセスを国際ルールに即したものにし、命令や統制ではなく市場の力を重視し、各国の国益と経済安全保障上の利益を守る一方で、ほとんどの国が米中の両方と貿易を続けられるようにする必要がある。

先進国と労働力
―― 新しい移民の流れを形作る

2025年3月号

エイミー・ポープ 国際移住機関 事務局長

難民制度や亡命制度が乱用されていることもあって、移民への反発が世界的に高まっている。だが、問題をゼロサムでとらえる必要はない。適切な制度があれば、移民、移民の出身国と受入国のすべてが恩恵を確保できるようになる。問題は、老朽化し、時代遅れのシステムが、現在の人道的ニーズ、人口動態トレンド、労働市場需要に対応できていないことだ。移住を希望する人々が母国で(開発援助による)職業訓練を受け、受入国で必要とされる仕事にアクセスできるようにし、本国に送金をし、最終的にはそのスキルを本国に持ち帰って開発を促進できるようにする。このやり方なら、受入国の労働力不足を緩和し、非正規移民になる以外に道のない人々に希望を与えられる。

ドナルド・トランプと権力政治の時代
―― 同盟諸国はどう動くべきか

2025年3月号

アイボ・H・ダールダー シカゴグローバル評議会 会長
ジェームズ・M・リンゼー 米外交問題評議会 特別シニアフェロー

トランプは19世紀のパワーポリティックが規定する国際関係への回帰を明らかに思い描いている。同盟関係のことを、アメリカから雇用を奪う国々を保護するコストをアメリカに負わせる悪い投資だと考えている。関税引き上げなどの、経済的威嚇をパワーツールとして利用する彼のやり方は、強圧的秩序の幕開けを意味する。アメリカに譲歩しても、トランプがそれを評価することはない。アメリカの同盟国は強さを示さなければならない。トランプが理解するのは力であり、米同盟諸国が協力すれば、十分な力で立ち向かい、トランプ外交の最悪の衝動をけん制できるかもしれない。

量子が導く未来
―― 次なる革命の恩恵とリスク

2025年3月号

カリナ・チョウ グーグル・クォンタムAI ディレクター兼最高執行責任者
ジェームズ・マニュイカ グーグル シニア・バイスプレジデント
ハルトムート・ネブン  グーグル・クォンタムAIヘッド

量子コンピューティングは、ビットの代わりに、0と1の状態を同時に保持する量子ビットを使用することで、これまで解決できないと考えられていた計算を実行できる可能性がある。そうなれば、医療、化学産業、素材産業などでの画期的な進展が期待できる。多くの国が量子情報科学技術の主導権争いへの関心を高めているのは、この理由からだ。だが、巨大なリスクも生み出す。暗号の解読、大規模なデータの盗難、経済的混乱、情報漏洩に加え、量子コンピュータが、化学兵器のシミュレーションを含む悪意目的に使用される危険もある。量子技術が開かれた社会で開発され、善意の目的に使用されるような明確な枠組みを設定することも重要になる。

ポピュリストと軍部
―― トランプが米軍を支配すれば

2025年3月号

ロナルド・R・クレブス ミネソタ大学教授

二期目のトランプが、米軍の自立性とプロフェッショナリズムを傷つけて、より政治化された組織に変貌させれば、民主主義と米軍の能力はともに打撃を受ける。職業軍人からなる米軍を、憲法や国への忠誠心ではなく、大統領への忠誠やイデオロギー的なリトマス試験紙に縛られた政治的任命中心の軍隊に変貌させて、アメリカがより安全になることはない。ポピュリストのリーダーの歴史が手がかりになるとすれば、トランプが米軍のプロフェッショナリズムや自立性を守ることはないだろう。それは民主主義における政軍関係、さらにはアメリカの国家安全保障にも大きなダメージを与えることになる。

韓国民主主義の未来
―― 改革に必要とされる市民の政治参加

2025年3月号

ジョン・デルーリ ジョン・キャボット大学 政治学部客員教授

韓国市民は、尹錫悦大統領のクーデター未遂から立ち直ろうとしているが、その道のりは長い。保守政党の「国民の力」はいまもユン大統領を支持し、党内の過激な保守勢力の立場に迎合している。一方、リベラル派の「共に民主党」は、党代表が複数の裁判を抱えるなど、政治的流れをつかめずにいる。結局、韓国を立て直すのは、最終的には政治指導者よりも、むしろ市民の役割になるだろう。そのためにも、韓国は、若者と高齢者、男性と女性間の社会政治的な隔たりを埋めることにもっと力を入れなければならない。そしてこの国の政治を揺るがしている偽情報の洪水を克服する必要がある。

戦争とテクノロジー企業
―― ウクライナと台湾の違い

2025年3月号

マット・カプラン シールドキャピタル アナリスト
マイケル・ブラウン シールドキャピタル パートナー

スターリンク、マイクロソフト、アマゾンなどの米テクノロジー企業が、国防に不可欠なデジタル・インフラを提供する戦争の新時代がすでに始まっている。ウクライナはその具体例だ。問題は、こうした巨大ハイテク企業が「国家安全保障よりも企業利益」に合致する方向へ国益を向かわせようと試みるかもしれないことだ。米テクノロジー企業は、台湾を防衛するために、重要な市場であり、顧客である中国を敵に回すだろうか。実際、ウクライナでうまく実現したことが、台湾で再現されるとは限らない。必要なのは、紛争が発生する前にこうした新しいデジタル能力をもつ企業と契約し、彼らを同盟勢力として扱うことだ。ワシントンが同盟国やパートナーを今後もうまく防衛できるかは、米ハイテク企業の力をいかにうまく引き出すかに左右される。

アメリカ・ファーストを恐れるな
―― アジアとトランプ

2025年3月号

ビラハリ・カウシカン 元シンガポール国連大使

グローバルな関与の条件を再定義し、国際問題にいつ、どのように関与するかについてより慎重になることで、トランプ政権は、リチャード・ニクソン大統領が冷戦期に東アジアで初めて導入した(介入を控え、同盟国の役割分担を求め、地域バランスを重視する)アプローチを地理的に拡大して適用している。ほぼ半世紀にわたって、そのようなアメリカの政策に対処してきたアジアが、第二次トランプ政権の誕生に必要以上に動揺していないのは、このためだ。アジアは、長く、アメリカのことを、安全保障を提供することに前向きな超大国としてではなく、自国の国益を第1に考え、軍事力を選択的に行使する、オフショアバランサーとみなしてきた。

AI開発レースの地政学リスク
―― 米中、ビッグテック、ミドルパワー

2025年2月号

レバ・グージョン ロジウム・グループ ディレクター

ワシントンにとって、AIはグローバルな技術優位を維持しなければならない新たなフロンティアだ。アメリカは輸出規制を通じて中国の技術開発を抑えようとし、一方の中国は国の力を動員してアメリカに追いつこうとしている。米中が技術覇権を模索する一方で、いずれの影響下にも入ることを避けたいミドルパワー、そして、開放的市場を通じた技術の世界的普及を重視するテクノロジー企業は、AI開発を通じた多極世界への道を思い描いている。問題は、AI規制によって追い詰められた北京が、アメリカを中国の存続を脅かす脅威とみなし、テクノロジー競争を安全保障領域へ向かわせる恐れがあることだ。

中国の報復社会
―― 何が問題を引き起こしているのか

2025年2月号

ペイドン・サン コーネル大学 准教授(中国・アジア太平洋研究)

中国では2024年に、無差別に民衆を襲撃する暴力事件が少なくとも20件発生し、その犠牲者は90人を超えた。ある研究によると、2004―17年に世界で報告された大量刺殺事件の45%が中国に集中している。政府関係者は、こうした「社会への報復」攻撃を「孤立した事件だ」と説明している。だが、事件の背景には経済の停滞、格差、社会的流動性の欠落や社会的疎外などが引き起こす中国社会の亀裂があるし、根底には、社会不満を増幅させる政府の抑圧が存在する。共産党が経済的機会を拡大し、構造的な不平等や不公正を減らしていかなければ、やがて「社会への報復」攻撃以上の大きな問題に直面するかもしれない。

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