中国は平和的台頭構想の下、東南アジア諸国連合と友好協力条約を結び、南米やアフリカとの外交関係を強化し、ベトナム、マレーシア、フィリピンとの領有権問題も解決した。さらに、パキスタンとの強固な関係を維持し、インドやロシアとも積極的に交渉している。平和的台頭構想は大きな成功を収めつつある。だが、中国の農村部では社会不満が高まり、政府も2005年だけで87000件のデモが起きていることを認めている。土地の接収、所得格差、地方役人の腐敗などがこうしたデモの背景にある。一方で北京は、日本や台湾に対しては、一転、強硬な外交路線で臨んでいる。特に中国が対日強硬路線をとる理由の一つとして、インドを別とすれば、アジア諸国のなかで中国の台頭を抑え込む力を持っているのが日本だけであることを指摘する専門家もいる。「アメリカが今後もアジアに関心を寄せなければ、いずれ中国か日本がその空白をうめることになる」と日中の覇権競争を示唆する専門家もいる。
