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トランプが寄り添うジャクソニアンの思想
―― 反コスモポリタニズムの反乱

ウォルター・ラッセル・ミード バードカレッジ教授(外交)

The Jacksonian Revolt ―― American Populism and the Liberal Order

Walter Russel Mead バードカレッジ教授(外交)。専門はアメリカ外交。外交問題評議会シニアフェローを経て現職。著書にSpecial providence: American foreign policy and how it changed the world (Alfred A. Knopf, 2001)がある。

2017年3月号掲載論文

「不満を表明する手段として(非自由主義的なイデオロギーや感情に訴えているのは)苦々しい思いを抱くルーザーたち、つまり、銃の所有や(相手の)宗教にこだわり、自分たちとは違う人々を毛嫌いする人たちだけだ」。アメリカのエリートたちはこう考えるようになっていた。(国や民族に囚われない)コスモポリタン的感情をもつアメリカ人の多くは、道義的、倫理的にみて、人類全般の生活の改善に取り組むことが重要だと考えていた。一方、ジャクソニアンはコスモポリタン・エリートのことを、「アメリカやその市民を第1に考えることを道徳的に疑問視する、国に反逆的な連中」とみている。ジャクソニアンがアメリカのグローバル関与路線を敵視しているのは特定の代替策を望んでいるからではない。むしろ、外交エリートに不信感をもっているからだ。そして彼らは、「トランプは間違いなく自分たちの側にある」と考えている。

  • 米外交の四つの系譜
  • ジャクソニアンの心理
  • アイデンティティ政治への反発
  • 銃規制と移民問題とエリート
  • 外交的意味合い

<米外交の四つの系譜>

 

この70年間で初めて、米有権者は戦後米外交の中枢に位置づけられてきた政策、理念、制度の価値を重視しない大統領を選出した。

もちろん、トランプ政権の外交政策がどのようなものになるかは現状では知りようがないし、彼の優先順位や好ましいとみなす路線が、今後、直面する事件や危機によってどのように変化していくかもわからない。しかし、(アメリカの第二次世界大戦への参戦を決めた)フランクリン・ルーズベルト大統領以降、アメリカの外交政策がかくも根本的に論争の対象とされたことはない。

第二次世界大戦以降、ワシントンの大戦略は「アメリカを中心とする安定した国際システムを実現することに焦点を合わせた」二つの大きな外交思想によって規定されてきた。

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