Issue in this month

2012年8月号(1)強大化する中国と過去に呪縛される日韓、困惑するアメリカ

2012-08-13

強大化する中国と過去に呪縛される日韓、困惑するアメリカ
―FAJアップデート
2012.8.13公開

 

<紛糾する日韓関係>

北朝鮮の脅威を別にしても、米韓日の3国間安全保障関係の強化が模索されているのは、一つには中国が対外強硬路線をとっているからだ。しかし、日韓の歴史問題ゆえに、日本との安全保障合意を結ぶことに国内での猛反発に直面した韓国政府は、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の調印を先送りし、物品役務相互提供協定(ACSA)の締結の検討も棚上げすると表明した。

ある専門家は、「安全保障課題を共有する民主国家の関係強化に向けた前向きで現実的な試み」が、またしても「政治と歴史の複雑な遺産の犠牲にされてしまった」と状況を描写した。(注1)

その後、韓国の李明博大統領は8月10日に竹島(韓国名・独島)を訪問し、いまや両国の関係には大きな緊張がはしっている。

竹島の領有権問題にせよ、従軍慰安婦問題にせよ、日韓の問題は結局は歴史問題に根ざしている。事実、竹島を訪問した後、李明博韓国大統領は、日本の歴史問題への対応はこれまであまりに誠意がなかったと語ったと報道されている。

ある専門家は「少なくとも日本人は過去を忘れたいと考えているようにみえる。一方、韓国人は過去を超えて未来を見通すことができずにいるようにみえる」と現状を描写している。(注2)

<中国の強硬路線>

ワシントンは状況をどうみているだろうか。中国の軍事的強大化を前に、いまは、アジアにおける二つのアメリカの同盟国がよりよい未来を切り開いていくために協力していくべきタイミングだとみている。

だが結局は、12月に大統領選挙を控えた韓国国内政治への思惑、そして経済減速への懸念もあってか、韓国の反日感情、ナショナズムは明らかに高まり、現状では、日韓の協調が進む情勢にはない。

一方、南シナ海の島嶼群の領有権を主張する中国と東南アジア諸国の対立も先鋭化し、南シナ海で紛争が起こりかねない状況にあるとみる専門家もいる。(注3)さらに中国にとって、日本との間で抱える尖閣諸島をめぐる領有権問題が、南シナ海の領有権論争と同じ範疇の問題であるのはあきらかだ。

現在中国は政治指導層の交代という政治的に微妙な時期にあり、この時期には中国の指導者たちはより攻撃的で強硬な国内政策をとり、反体制派を弾圧し、強硬な外交路線をとる傾向があると指摘する専門家もおり、事実、その通りの流れになっている。(注4)中国の経済成長率の鈍化もこの政治的流れを加速しているかもしれない。

<日本は謝罪するのをやめるべきか>

日本と近隣諸国の歴史問題の構図は比較的はっきりしている。日本政府が過去の行動をめぐる謝罪を表明すると、それを否定する保守派の発言が飛び出し、外からは、謝罪をしたのかどうか判然としなくなる。中国政府は不安定な政治基盤をときに反日ナショナリズムで支えようとし、日韓は、歴史問題だけでなく、政治的にいかようにも発火させられる領土問題を抱えている。こうして、日本の歴史認識問題は、日本を含む各国において政治化され、その結果、東アジア外交の安定化がなかなか実現しない。

歴史家のジェニファー・リンドは歴史問題について日本は「もう謝罪するのをやめたほうがいい」と提言する。
日本、あるいは日本と同様の立場にある国は、「謝罪」と「謝罪を否定する反動」の間の中道路線、つまり、「過去の間違いを認める一方で、未来志向のビジョンを示し、これらを自国の戦後の成果に対する誇りへと結びつける路線をとるべきだ」と。

日本が過去の行動の「過ちを認める」一方で、未来志向のビジョンを表明する路線をとれば、韓国との関係を修復できるだろうし、中国が歴史問題を棚上げにする可能性もあると彼女は言う。(注5)

だが現状からみれば、日本だけでなく韓国も、中国も未来志向のビジョンを示すべきタイミングだろう。

さらに困ったことに、このような不安定な状況にあるにもかかわらず、日米同盟も安定しているとは言い難い。普天間問題に加えて、オスプレイの普天間への配備と、岩国への一時駐機が最近も大きな問題になった。

今後の日米同盟に懐疑的な見方をするアメリカの専門家もいるし、韓国や中国同様に日本も政治のシーズンに入りつつある。(注6)このまま、事態が安定化していくとは考えにくい。●

Koki Takeshita@foreign affairs, japan

※脚註
1. ラルフ・A・コッサ 「東アジア安全保障の進化を阻む日韓の歴史問題――日韓関係を考える」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年8月号)
2. Ibid.
3. ジョシュア・クランジック 「南シナ海対立の新構図と紛争の危機――中国の影響力拡大とASEANの内部対立」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年8月号)
4. ジョン・ポムフレット 「中国における新指導層への移行と対外強硬路線―― 中国の外交強硬路線と国内での人権弾圧」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年8月号)
5. ジェニファー・リンド 「日本の歴史認識と東アジアの和解を考える―― 反動を誘発する謝罪路線の危うさ」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2009年5月号)
6. エリック・ヘジンボサム、エレイ・ラトナー、リチャード・サミュエルズ 「漂流する日本の政治と日米同盟」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年9月号)

一覧に戻る

論文データベース

カスタマーサービス

平日10:00〜17:00

  • FAX03-5815-7153
  • general@foreignaffairsj.co.jp

Page Top