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2023年7月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2023年7月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2023年7月号 目次

終わりなき戦争

  • 勝利なき戦争と外交
    いかにウクライナでの戦闘を終わらせるか

    サミュエル・チャラップ

    雑誌掲載論文

    いまこそ、ウクライナ戦争をどのように終わらせるかについてのビジョンを描くべきだろう。15カ月に及ぶ戦闘で明らかになったのは、たとえ外部からの支援があったとしても、双方には相手に決定的な軍事的勝利を収める能力がないということだ。このままでは、はっきりとした結果を得られぬまま、数年にわたって壊滅的な紛争が続く恐れがある。

  • プーチンの戦争からロシアの戦争へ
    プーチンと一体化するエリートと民衆の心理

    ユージン・ルーマー

    雑誌掲載論文

    ウクライナに戦争を仕掛け、モスクワが敵視する個人を神経ガスで攻撃する。イランや北朝鮮などのならず者国家に先端技術を売り込み、サイバー兵器を無差別に利用する。しかも、核兵器と国連安保理常任理事国の地位に守られているため、国際的な非難や制裁を受けることもない。プーチンの後継者が抜本的な軌道修正を行い、罪を償い始めるとも考えにくい。結局、プーチンは、ロシアのエリートと社会を戦争の共犯に仕立て上げることで、この国が彼の体制から劇的に離れていく可能性をすでに抑え込んでいる。・・・

  • プーチンの心理と世界観
    ロシアの核使用リスクを考える

    ローズ・マクダーモット、リード・ポーリー、ポール・スロビック

    雑誌掲載論文

    戦場での大敗も経済制裁も、プーチンに迷いを生じさせることはない。ウクライナの降伏を手に入れない限り、彼が和平に応じることはないだろう。「流れは自分の側にあり、現在の消耗戦が長引けば、ウクライナ軍とウクライナ支援国が疲弊してくる」という読みに賭けているのかもしれない。だが、権力を維持することを重視する彼のナルシズムゆえに、時間枠が限られてくるかもしれない。

  • 新しいウクライナ戦略を
    戦場から交渉テーブルへの道筋

    リチャード・ハース、チャールズ・クプチャン

    Subscribers Only 公開論文

    欧米は、まずウクライナの軍事力を強化し、その後、戦闘が下火になったタイミングで、モスクワとキーウを戦場から交渉テーブルへと向かわせる必要がある。次の戦略は、今年後半に停戦を仲介し、それを、戦争を終結させることを目的とする和平プロセスでフォローアップすることでなければならない。この外交的駆け引きは失敗する危険が高いものの、戦費がかさみ、軍事的に膠着状態に陥るリスクがある以上、戦闘の再発を防ぎ、永続的和平を実現するための、安定した停戦を迫る価値はあるだろう。すでに、ウクライナの目標は欧米の利益と食い違いをみせはじめている。これまでのスタイルを続けるのは賢明でも持続可能でもない。

  • 蘇るロシアの歴史的行動パターン
    プライドと大きな野望、そして脆弱なパワーという現実

    スティーブン・コトキン

    Subscribers Only 公開論文

    自らの弱さを理解しつつも、特別の任務を課された国家であるという特異な意識が、ロシアの指導者と民衆に誇りを持たせ、一方でその特異性と重要性を理解しない欧米にモスクワは反発している。欧米との緊密なつながりを求める一方で、「自国が軽く見られている」と反発し、協調路線から遠ざかろうとする。ロシアはこの二つの局面の間を揺れ動いている。さらにロシアの安全保障概念は、外から攻撃される不安から、対外的に拡大することを前提としている。この意味でモスクワは「ロシアが旧ソビエト地域で勢力圏を確立するのを欧米が認めること」を望んでいる。だが現実には、ロシアは、(経済、文化など)他の領域でのパワーをもっていなければ、ハードパワー(軍事力)だけでは大国の地位を手に入れられないことを具現する存在だ。現在のロシアは「新封じ込め」には値しない。新封じ込め政策をとれば、ロシアをライバルの超大国として認めることになり、欧米は相手の術中にはまることになる。・・・

  • 戦争をいかに終結させるか
    成功の定義、キーウが求める条件とは

    リチャード・ハース

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナでの戦争を可能な限り早く、キーウの民主的政府が受け入れる条件で終わらせること、これが欧米にとっての成功の定義だろう。しかし、その条件とは何だろうか。この2カ月で失った領土のすべてを回復することだろうか。ドンバスとクリミアからのロシア軍の完全撤退を求めるのか。それとも、ヨーロッパ連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟することなのか。これらのすべてをロシアが署名する文書に記載するよう主張するのか。プーチンが選択し、始めた戦争だとしても、もはやプーチンだけでは戦争を終結させることはできない。プーチンとゼレンスキーはともに、敵対行動を停止させるために必要な領土と条件が何であるかを検討し、戦闘の終結を命令するだけでなく、和平協定を締結し、それを尊重できるかどうかも考える必要がある。

  • プーチンとロシア帝国
    なぜ帝国的独裁者を目指すのか

    スーザン・B・グラッサー

    Subscribers Only 公開論文

    青年期のプーチンが信じたのは、学校で強制されるマルクス・レーニンのイデオロギーではなかった。それは、英雄的な超大国のイメージ、廃れてはいても依然として野心を捨てていないホームタウン、サンクトペテルブルクの帝国的な壮大さだった。力こそが彼の信じるドグマであり、幼少期に暗記させられた「労働者の英雄主義」よりも、皇帝たちのモットーだったロシアの「正統性、独裁制、民族性」の方が、プーチンにはなじみがよかった。若手のKGBエージェントだった当時から、そうした帝国思考をもっていたとすれば、その多くが「永続的な不安」によって規定されている長期支配のパラドックスに直面しているいまや、彼の帝国への思いと志向はますます大きくなっているはずだ。

貿易と国際政治

  • 現在と1930年代は似ているか
    反グローバル化、経済保護主義、ポピュリズム

    マーク・マゾワー

    雑誌掲載論文

    第一次世界大戦後、自由貿易と国際主義的政治が批判され、関税障壁と移民規制が強化されるなか、ヨーロッパは独裁政治へ転落していった。当時の状況と現状の間には重なり合う部分も多い。グローバル化に対する怒りが、米欧で反民主的政治を台頭させた。当時の権威主義の台頭と現在の流れの類似性を指摘する専門家もいる。グローバル化支持派は、自由貿易と経済の自由化が民主主義拡散の基盤を提供すると主張する。だが歴史が示す因果関係はもっと曖昧だ。戦間期の混乱から当時導き出された真の教訓は、レッセフェール型経済が命取りになりかねないということだろう。

  • 新産業政策の恩恵とリスク
    建設的な国際協調か補助金競争か

    デビッド・カミン、レベッカ・カイザー

    雑誌掲載論文

    グローバルミニマム課税の成功は、大企業が利益を最大化しようと、国を競い合わせることに対して、各国が協力して「法人税引き下げによる底辺への競争」を回避できることを示した。問われているのは、国家安全保障や気候変動との闘いに不可欠な産業の拠点をどこに移すかをめぐっても、ワシントンが友好国や同盟諸国と協力して、解決策を見出すことができるかだ。気候変動問題への対応、新サプライチェーンの確保、中国の脅威への対応といったわれわれと友好国が共有する目標を達成するための措置をめぐって協力できなければ、ワシントンは、同盟諸国や信頼できる貿易相手国との間で激しい競争を新たに引き起こすことになる。

  • サプライチェーンの混乱と再編は続く
    産業政策と保護主義の長期的弊害

    シャノン・K・オニール

    Subscribers Only 公開論文

    各国で産業政策が復活するにつれて、世界でいかにモノが作られ、提供されるかをめぐって構造的な変化が起きるかもしれない。グローバルな生産と流通を永久に変える可能性があるのは、パンデミックの一時的な余波ではなく、むしろこのような国の政策だ。市場や産業そして企業の活動に各国政府は直接的に影響を与えようと試みるようになった。理由は、グリーン経済への移行、公衆衛生対策、人権保護、国家安全保障など多岐にわたる。もちろん、保護主義や地政学的思惑もある。実際、経済・技術・国家安全保障上の思惑を基盤とする政策上のアメとムチの世界的な拡散とエスカレーションは、世界の半導体産業の再編にとってパンデミックによる供給不足以上に重要な意味合いを持っている。半導体だけではない。電気自動車などに使われる大容量バッテリー、重要鉱物(クリティカル・ミネラル)、重要な医薬品などへの政府の関与も高まりつつある。

  • エネルギーの新地政学
    エネルギー転換プロセスが引き起こす混乱

    ジェイソン・ボルドフ、メーガン・L・オサリバン

    Subscribers Only 公開論文

    クリーンエネルギーへの転換がスムーズなものになると考えるのは幻想に過ぎない。グローバル経済と地政学秩序を支えるエネルギーシステム全体を再構築するプロセスが世界的に大きな混乱を伴うものになるのは避けられないからだ。予想外の展開も起きる。例えば、産油国は、転換プロセスの初期段階ではかなりのブームを経験するはずで、クリーンエネルギーの新しい地政学が石油やガスの古い地政学と絡み合いをみせるようになる。クリーンエネルギーは国力の新たな源泉となるが、それ自体が新たなリスクと不確実性をもたらす。途上国と先進国だけでなく、ロシアと欧米の対立も先鋭化する。クリーンエネルギーへの移行が引き起こす地政学リスクを軽減する措置を講じないかぎり、世界は今後数年のうちに、グローバル政治を再編へ向かわせるような新たな経済・安全保障上の脅威を含む、衝撃的な一連のショック(非継続性)に直面するだろう。

  • 重要鉱物とサプライチェーン
    クリーンエネルギーと大国間競争

    モーガン・D・バジリアン、グレゴリー・ブリュー

    Subscribers Only 公開論文

    再生可能エネルギーへのシフトには、リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物を確保することが不可欠だ。しかし、重要鉱物の生産はほんの一握りの国に集中している。インドネシアが世界のニッケルの30パーセントを、コンゴ民主共和国が世界のコバルトの70パーセントを生産している。しかも、重要鉱物の加工と最終製品の製造は中国に集中している。世界のリチウムの59%、その他の重要鉱物の80%近くを精製し、電気自動車用電池の先端製造能力の4分の3以上を中国が独占している。これら重要鉱物の調達がうまくいかなくなればエネルギー転換は立ちゆかなくなる。多様かつ強靭で安全なサプライチェーンを構築し、国内外の重要鉱物へのアクセスを高めるには何が必要なのか。

  • 危機とグローバル化の歴史
    グローバル化が復活する理由

    ハロルド・ジェームズ

    Subscribers Only 公開論文

    「大恐慌後、世界はブロック経済化し、ナショナリズム、権威主義、ゼロサム思考が台頭し、最終的には世界大戦が引き起こされた」。この流れはグローバル化からの逆コースの結末、憂鬱なエピソードとして示されることが多い。だが歴史は、多くの危機が、グローバル化を損なうのではなく、最終的には強化してきたことを教えている。近代における最初のグローバル化は、1840年代の社会的、金融的な大惨事への対応として始まっている。20世紀のグローバル化潮流も、1970年代のオイルショックに派生する経済的混乱を経て起きている。歴史的な断裂が生じても、それは、新たにグローバルなリンクを作り出し、それを増幅していく。COVID19も例外ではない。パンデミック後にグローバル化は勢いよく復活するだろう。

次なる成長センターはアフリカかインドか

  • アフリカ経済に注目せよ
    アフリカが左右するグローバル経済の未来

    ジャック・A・ゴールドストーン、ジョン・F・メイ

    雑誌掲載論文

    今後20年間で、世界の大半の諸国は、若年人口や労働力の減少に直面するだけでなく、爆発的に増加する高齢者の介護を余儀なくされる。この近未来において、中国経済がこの40年にわたって世界経済で果たしてきた役割を今後担っていくのはどの国や地域なるのか。意外にも、それがインドになる可能性は低い。世界が目を向けるべきはアフリカ大陸だ。

  • インドの台頭は必然なのか
    何がこの国を機能不全に追い込んでいるのか

    ミラン・バイシュナフ

    雑誌掲載論文

    歴史的に、インドの分裂した政治がこの国の改革能力を抑え込んできたが、それも変わりつつあるのかもしれない。ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)は議会の過半数を獲得している。議会を掌握することで、BJPは長年の懸案であった経済改革を推進するために必要な政治基盤を手にすることになる。だが、この国はあまりに多くの問題を抱えている。多数派が影響力を高め、権力分立が形骸化し、メディアは口を封じられている。インドの都市のイスラム教徒地区はますますゲットー化し、女性が労働力に占める割合はごくわずかだ。

  • インド経済の復活はあるか
    成長を抑え込む政策的矛盾

    アルビン・サブラマニアン、ジョシュ・フェルマン

    Subscribers Only 公開論文

    かつてはその経済的台頭が世界に注目されたインドも、パンデミックが広がるまでには、まるで、世界の経済地図から消え去ったかのように忘れ去られていた。だが2021年に流れは変わる。デジタルテクノロジー系スタートアップがブームに沸き返り、ユニコーンが毎月のように誕生した。こうして「インドは復活した」と考える人も出てきた。だが、そのポテンシャルを開花するには、政府はインドのビジネス・投資環境(ソフトウエア)を改革しなければならない。貿易障壁を引き下げ、世界のサプライチェーンへの統合拡大も目指すべきだ。安定した経済環境を構築・維持するために、政策立案過程そのものも改善する必要があるだろう。問題は、そのいずれも現実になる気配がないことだ。・・・

  • アフリカのユースバルジは何を引き起こす
    不安定化か民主化か

    ザカリア・マンピリー

    Subscribers Only 公開論文

    アフリカの統治者たちの年齢の中央値が63歳であるのに対し、アフリカ大陸の人口の中央値は世界でもっとも若く、20歳前後だ。この43歳という(中央値でみた)アフリカ大陸の指導者と民衆の間の極端な年齢差はすでに分析の対象として取り上げられている。分析者の多くは、こうしたギャップが行き場のない緊張を高め、不安定化と社会的暴力を引き起こすのではないかと懸念している。その多くが厳しく弾圧されている最近の抗議デモは、この不吉な予測を裏付けているかにみえる。しかし、反乱を起こしているアフリカの若者については、政治的安定に対する脅威としてではなく、この大陸の民主的な未来の先駆者とみなすべきだろう。若者による抗議デモは、水面下で民主主義の支持基盤を作るための長く骨の折れるタスクに挑んでいるわけで、最終的な政治システム移行への布石を打ちつつある。

  • 依存人口比率と経済成長
    流れは中国からインド、アフリカへ

    サミ・J・カラム

    Subscribers Only 公開論文

    「人口の配当」として知られる現象は経済に大きな影響を与える。この現象は合計特殊出生率が低下し、その後、女性が労働力に参加して人口に占める労働力の規模が拡大し(依存人口比率が低下することで)、経済成長が刺激されることを言う。本質的に、人口の配当が生じるのは、生産年齢人口が増大する一方で、依存人口比率が減少したときだ。実際、出生率の低下と労働力規模の拡大、そして依存人口比率の減少というトレンドが重なり合ったことで、1983年から2007年までのアメリカの経済ブーム、そして中国の経済ブームの多くを説明できる。問題は、先進国だけでなく、これまでグローバル経済を牽引してきた中国における人口動態上の追い風が、逆風へと変わりつつあることだ。人口動態トレンドからみれば、今後におけるグローバル経済のエンジンの役目を果たすのはインド、そしてサハラ砂漠以南のアフリカになるだろう。

  • 欧米世界とグローバルサウス
    失った信頼を回復するには

    デービッド・ミリバンド

    雑誌掲載論文

    欧米と「その他の世界」のビジョンの間には大きな溝が存在する。非欧米世界で、「ウクライナの自由と民主主義のための闘いは、自分たちの闘いでもある」という欧米の主張を受け入れる国はあまりない。これは冷戦後の欧米によるグローバル化の管理ミスに対する途上国の深いいらだち、実際には怒りの産物に他ならない。グローバルサウスは、欧米のダブルスタンダードに怒りを感じ、国際システムの改革が停滞していることに苛立っている。欧米とその他の世界のビジョンとの間にこうした溝が存在することは、気候変動、パンデミックという巨大なグローバルリスクに直面する今後の世界にとってきわめて危険であり、その根本原因に対処しなければ、溝は広がる一方だろう。

  • 中国のグローバル軍事インフラ
    軍事的影響力を支える港湾ネットワーク

    アイザック・カードン、ウェンディ・ロイタート

    雑誌掲載論文

    北京は、中国企業が管理・所有するグローバルな港湾ネットワークを、中国海軍のために利用している。2017年にジブチに初の外国基地を得たが、中国は次の外国基地を確保できずにいる。それでも、北京がワシントンと「ほぼ同格のライバル」になれたのは、中国企業が保有する、海洋港湾インフラのグローバルネットワークを軍民の目的で利用し、中国海軍のリーチを強化しているからだ。中国海軍がグローバルに投射する軍事パワーは、すでに国際安全保障の見取り図を変化させている。この意味でも、中国の外国における港湾活動の性格と範囲、それがどのように北京の利益に貢献しているかを理解することは極めて重要だろう。

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