Focal Points

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2021.2.15. Mon

さようなら、国際主義のアメリカ
―― なぜリベラルな国際主義は破綻したのか

現代の世界政治でもっとも重要な事実とは、ウィルソン主義の崇高な試みが失敗に終わったことだろう。法に基づく普遍的な秩序が国家間の平和と国内における民主主義を保証するという夢はもはや重視されなくなり、今後、現実味を失っていくだろう。もっとも、ウィルソン主義とはヨーロッパ特有の問題に対するヨーロッパ特有の解決策だったわけで、それがグローバルな規範だったわけではない。いずれにせよ、米大統領が自由主義的な国際主義の理念に基づいて外交政策を策定できる時代が近い将来に再現されることはおそらくないだろう。(ミード)

トランプの「アメリカ第1主義」は、外交の初心者が犯した間違いではなく、アメリカのリーダーたちが戦後外交の主流概念から距離を置きつつあるという重要な潮流の変化を映し出している。先の大戦期及びその直後に成人した世代は、アメリカが世界をリードしなければ、いかに忌まわしい世界が出現するかを本能的に理解していた。しかし、この世代の多くが亡くなり、具体的に秩序を形作った子どもの世代も少なくなってきている。これが、今後の米外交政策にもっとも重要な帰結を与えることは間違いない。トランプが大統領の座を退いても、「アメリカのリーダーシップなき世界」がどのような末路を辿るかを知る人々が支えたかつてのコンセンサスへアメリカが回帰していくことはない。(コーエン)

専門家は、自分たちが民主社会に仕える身であることを常に忘れてはならない。しかし、民主社会の主人である市民も国の運営に関与し続けるのに必要な美徳・良識を身に付ける必要がある。専門知識をもたない市民は専門家なしでは事をなし得ないのだから、エリートへの憎しみを捨ててこの現実を受け入れる必要がある。同様に専門家も市民の声を相手にしないのではなく、それに耳を傾け、自分たちのアドバイスが常に取り入れられるとは限らないことを受け入れなければならない。現状では、システムを一つに束ねてきた専門家と市民の絆が危険なまでに揺るがされている。そのような環境では、民主主義の終わりを含む、あらゆるものが現実となっても不思議はない。(ニコルス)

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