Focal Points

2021.11.24. Wed

<12月号プレビュー>
膨大な中国の債務問題、世界は石炭使用量を削減できるか、イラン新政権と核合意

本来、住宅価格と企業への貸し出しは連動している。景気が良ければ、銀行は企業への融資を増やし、所得が増えた消費者は不動産を購入し、このサイクルのなかで不動産価格は上昇していく。景気が冷え込むと、所得も減り、デフォルト(債務不履行)が増大し、これらのトレンドは逆転する。しかし、中国では事情がまったく違う。2012年に習近平が権力を掌握して以降、中国の住宅価格と銀行の企業向け融資は連動していない。一方が上がればもう一方は下がり、逆もまた真だ。これは習近平期の中国における融資総額が、結局、政府のGDP成長率目標(今年は6%)に左右されるためだ。成長率が目標を下回りそうになると、貸し出しと融資を増やして数字が底上げされる。現状で2022年10月に3期目の政権を担うことを習近平がもっとも重視している以上、このやり方が続けられるだろう。(ステイル、ロッカ)

G20のすべての国が、2021年末までに外国での新規石炭火力発電所建設への融資を停止すると約束した。しかし、専門家によれば、今世紀半ばまでにネットゼロを達成するには、各国は石炭のエネルギー使用を廃止し、再生可能エネルギーに置き換えるためにもっと努力する必要がある。・・・外国における石炭火力発電所に最大の公的資金を提供している中国は、そうした発電所が生産する電力の10倍近くを国内で石炭を燃焼させることで生産している。融資にしてもダブルスタンダードがある。・・・外国の石炭プロジェクトの大部分に資金を提供しているのは公的部門ではなく、民間セクターだ。研究者たちは、公的融資という側面では中国を最大の融資国としつつも、日本や欧米諸国の民間投資家や商業銀行も多額の資金を拠出していることを明らかにしている。(メイズランド)

エブラヒム・ライシ大統領率いるイランの新政権は、今後の核合意への復帰に向けた交渉でも強硬姿勢を崩すつもりはない。すでに、アジア経済に焦点を合わせ、自立的経済を模索することで、イラン経済の命運を核合意から切り離すことを決定している。イランの前大統領は、巨大国内市場を欧米企業に開放する手段として核合意を利用しようと試みたが、ライシ政権は、むしろ中国、ロシア、近隣諸国との経済関係を強化することで、イランを制裁の余波から切り離したいと考えている。テヘランの戦略は、アメリカの影響力に抵抗し、強制力には強制力をもって対抗することだ。核交渉の再開に向けて準備をしている間にも、テヘランはあらゆる事態に備えようと試みている。(タバァー)

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