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2018.1.26 Fri
トランプの貿易政策はどう変化する
―― 貿易叩きという歴史的な間違い
ドナルド・トランプは、他国がアメリカを貿易面で追い込んでいると訴えているが、現実には、貿易はアメリカに大きな利益をもたらしている。雇用喪失の85%以上はオートメーション化による生産性の向上が原因で、貿易が原因による雇用喪失は13%にすぎない。・・・(アーウィン)
「アメリカファースト」の貿易政策が、製造業に新たな雇用をもたらすことも、貿易赤字を縮小することもあり得ない。トランプの貿易政策の最大のリスクは、WTO(世界貿易機関)を含む、アメリカが第二次大戦以降推進してきたオープンな国際貿易体制に、取り返しのつかないダメージを与えてしまう恐れがあることだ。・・・(アーウィン)
アメリカは歴史的に自由貿易と平和を結びつけ、貿易障壁と戦争を結びつけてきた。中国を中心とする貿易枠組みが、欧米の貿易枠組みに取って代わっていくとみなされている現在、経済安全保障と国家安全保障が不可分の形で結びついているというコンセンサスを再構築する必要がある。・・・(ハールバート)
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貿易叩きという歴史的な間違い
―― なぜ真実が見えなくなってしまったか2016年9月号 ダグラス・アーウィン ダートマス大学経済学部教授
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トランプの貿易政策は何を引きおこす
―― 保護主義の連鎖と自由貿易の危機2017年6月号 ダグラス・アーウィン ダートマス大学経済学部教授
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自由貿易は安全保障と平和を強化する
―― TPPを捉え直し、実現するには2016年12月号 ヘザー・ハールバート ニューアメリカ プロジェクトディレクター
2018年1月号
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経済戦争時代と制裁
―― 抑止力としての経済制裁に目を向けよ一部の諸国は、大国間戦争を引き起こさないように配慮しつつも、リベラルな世界秩序への挑戦を試みるようになり、もはや経済領域での抗争は避けられなくなっている。制裁措置は、「すでに存在する問題行動」を見直させる上で一定の成功を収めてはいるが、いまや制裁を通じて「未来の問題行動」を抑止するシステムを確立する必要がある。
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中国型シェアリングエコノミーの落とし穴
―― バブルの崩壊は近い中国には、企業価値が10億ドルを超える未上場のユニコーン企業が、シェアリングエコノミー部門だけで12社も存在する。伝統的なシェアリングエコノミーの最大の特徴は、既存資産の利用効率を向上させることにある。しかし、何百万もの新型の自転車や傘を大量に貸し出す中国企業は、過剰供給を作り出しているだけだ。今後、持続不可能なモデルを採用したスタートアップ企業の破綻と統廃合が進むだろう。
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人工知能と中国の軍事パワー
―― 戦場の「技術的特異点」とは今後数十年もすれば、人工知能(AI)が戦争の概念を変化させるかもしれない。AIとロボティクスが戦争で広く応用されるようになれば、AIの急激な技術成長が刺激され、人間の文明に計り知れない変化をもたらす「シンギュラリティ」が現実になると予測する専門家もいる。軍は人間を戦場から引き揚げ始め、むしろ監視役に据え、無人システムに戦闘の大半を遂行させるようになるかもしれない。