
2017.6.2 Fri
民主主義はいかに解体されていくか
――ポピュリズムから競争的権威主義への道
トランプのアメリカがファシズムに陥っていくと考えるのは行き過ぎだが、彼が大統領になったことで、この国が「競争的権威主義」、つまり、有意義な民主的制度は存在するが、政府が反対派の不利になるように国家権力を乱用する政治システムへ変化していく恐れがある。政府機関を政治化すれば、大統領は調査、告訴、刑事責任の対象から逃れられるようになる。(ミッキー他)
仮に反政府勢力が組織されても、ポピュリストたちは、彼らを「第五列」、「エスタブリッシュメントのエージェント」、あるいは、「システムの不安定化を狙う工作員」と呼ぶことで、封じ込める。司法や治安サービスなどの権力の中枢を握るポジションに忠誠を尽くす人材を配し、メディアを買い上げることでその影響力を中和し、メディアを縛る法律を成立させ、検閲システムを導入する。(テイラー、フランツ)
ファシストが台頭した環境は現在のそれと酷似している。19世紀末から20世紀初頭のグローバル化の時代に、資本主義は西洋社会を劇的に変貌させた。伝統的なコミュニティ、職業、そして文化規範が破壊され、大規模な移住と移民の流れが生じた。現在同様に当時も、こうした変化を前に人々は不安と怒りを感じていた。(バーマン)
-
アメリカ政治の分裂と民主体制の危機
―― ドナルド・トランプと競争的権威主義2017年6月号 ロバート・ミッキーミシガン大学准教授、スティーブン・レヴィツキー ハーバード大学教授、ルキャン・アハマド・ウェイ トロント大学教授
-
民主主義はいかに解体されていくか
―― ポピュリズムから独裁政治への道2017年1月号 アンドレア・ケンドール・テイラー 国家情報会議・副国家情報官 エリカ・フランツ ミシガン州立大学准教授
-
民主主義の危機にどう対処するか
―― ポピュリズムからファシズムへの道2016年12月号 シェリ・バーマン
2016年12月号
-
見捨てられた白人貧困層とポピュリズム
南部と中西部の経済が衰退して市民生活の空洞化が進んでいるのに、政治的関心がこの問題に向けられなかったために、これらの地域の「成長から取り残された」多くの人々がドラッグで憂さを晴らすようになり、なかには白人ナショナリズムに傾倒する者もいた。トランプはまさにこの空白に切り込み、支持を集めた。
-
エリートを拒絶した英米の有権者たち
―― ブレグジットからトランプの勝利まで「エリートが自分たちの懸念に耳を傾けることはない」と考えられている環境で、緊急ボタンを押すのは正当な行動だし、おそらくは有権者として唯一の責任ある行動だったかもしれない。イギリスの大衆にとってのエリート主義のシンボルは欧州委員会だったが、アメリカの大衆が選挙でターゲットにしたエリートはヒラリー・クリントンだった。
-
トランプ主義のグローバルなルーツ
―― ネオリベラリズムからネオナショナリズムへ低金利の融資が提供された結果、危機を経たアメリカの家計債務は12兆2500億ドルにも達した。反インフレの秩序を設計した伝統的な中道左派と右派の政党は政治的に糾弾され、反債権者・親債務者連合が組織された。これを反乱的な左派・右派の政党が取り込んだ。これが現実に起きたことだ。・・・