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ウクライナ危機に関する論文

中国を枢軸から切り離すには
―― 食い違う、中国と他の枢軸メンバーの利益

2024年12月号

スティーブン・ハドリー 元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

中国と他の枢軸メンバーの利益は必ずしも一致していない。ワシントンは、それぞれの地域でロシア、イラン、北朝鮮に効果的に対抗することで、「敗者の枢軸」に中国を縛り付けることが、世界的影響力を得るための道ではないことを北京に示す必要がある。ロシアに兵器を提供すれば、中国に制裁が広く適用され、かなりの経済的コストに直面する。イランとその代理人たちの活動は、重要な石油資源を含む中国と中東の貿易を混乱させる。枢軸パートナーの冒険主義を厳格に抑え込めば、ワシントンは習近平に軌道修正を促せるし、そうすることは彼の利益にもなる。

トランプの政策ビジョンを考える
―― 衝動性と現実主義の間

2024年12月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 外交・国防政策研究ディレクター

「予測不能で衝動的」と言われるトランプの政策ビジョンは、実際には、はっきりとしている。経済グローバル化と移民を否定的に捉えている。高関税を盛り込んだ二国間協定を結び、アメリカ市場へのアクセスを制限し、貿易収支のバランスをとることを重視している。アメリカにつけ込んでいると彼がみなす同盟国への要求を高め、要求を満たすことが、同盟支援の条件とされる。だが、現実を前に考えを見直す可能性もある。反欧米勢力の一体化に立ち向かうには、健全な同盟関係が必要であることを理解するかもしれない。さらに、ロシアが取引に応じなければ、「ウクライナがこれまで手にした以上の支援を与える」可能性もある。トランプ2期目に危険はあるが、抑止力強化と国防予算の増大という側面では、米安全保障基盤を強化するチャンスでもある。

ウクライナ支援を続けるべき理由
―― 何が問われているのか

2024年12月号

ロイド・J・オースティン 米国防長官

プーチンの攻撃を(われわれは)警告として受け止めなければならない。これは、暴君と悪漢が主導する世界、つまり、勢力圏に切り分けられた混沌とした暴力的な世界、いじめっ子が小さな隣人を踏みつける世界、そして侵略者が自由な人々に恐怖の生活を強いる世界の予告なのだ。つまり、私たちは歴史の分岐点にある。プーチンの侵略に今後も断固として立ち向かうのか、それともプーチンの思いのままにさせ、私たちの子や孫たちに、はるかに血なまぐさい危険な世界を生きることを宣告するのか。ウクライナが踏みにじられれば、ヨーロッパ全土がプーチンの影に脅かされることになる。

※このテキストは、キーウのウクライナ外交アカデミーで行われたスピーチからの抜粋。邦訳分はFAJによる翻訳・要約で、米政府の公式テキストではない。

同盟諸国とのトラブル
―― 気難しいパートナーといかに付き合うか

2024年10月号

リチャード・ハース 外交問題評議会 名誉会長

「友好国や同盟国との立場の違いをいかに管理するか」。この問題へのワシントンの考えはあまり整理されていない。例えば、イスラエルやウクライナのように、ワシントンに依存しながらも、その助言に抵抗することも多い相手に、どのように対処するのが最善なのか。説得、インセンティブ供与、制裁、見て見ぬふり、そして単独行動と、そこにはさまざまなアプローチがある。これらをどう使い分けるか、体系的なアプローチをとる必要があるし、「自国の利益を守りつつ、貴重な同盟関係の断絶を避ける」ために、ときには、相手を批判し、単独行動をとる覚悟をもつ必要がある。

同盟諸国との連携強化を
―― 相互運用性を強化するには

2024年7月号

トーマス・G・マンケン 戦略予算評価センター 所長

アメリカは現在、ヨーロッパでウクライナ戦争、中東でイスラエルの戦争に関わっており、今後、東アジアで台湾や韓国をめぐって三つ目の戦争に直面する可能性もある。たとえ世界最強の国であっても、主要な戦争を単独で戦うことはできない。ワシントンは、より多くの軍事物資、兵器を生産して、基地を確保し、それらを同盟諸国と共有していく必要がある。パートナーとともに戦うためのより良い軍事戦略を策定する必要もある。そうしない限り、ますます能力を高め、連携を深める敵に圧倒される危険がある。

プーチンと一体化したロシア社会
―― 反欧米路線が促したロシアの統合

2024年7月号

タチアナ・スタノバヤ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター シニアフェロー

プーチンは、ウクライナ戦争へのコミットメントと反欧米の敵対路線については驚くほど均質な政治環境をロシアで作り上げることに成功している。エリートたちも、戦争を支持し、プーチン信奉者の仲間入りを果たすしかない環境にある。「欧米に対抗し、米主導の国際秩序を突き崩す必要がある」というモスクワの主張はロシア社会で広く受け入れられている。財政基盤、ウクライナでの軍事的優位、そして完全な国内統制が維持される限り、ロシア社会が揺らぐことはないだろう。欧米は、「より自信を高め、大胆で過激になったロシア」にどのように関わっていくかという厄介な課題に直面している。

ロシアの未来と米中露関係
―― 五つのシナリオに備えよ

2024年6月号

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 シニアフェロー

ロシアと中国は、米主導の国際システムにおける責任ある利害関係者に変貌させられるような相手ではない。彼らの「人格」を作り変えようと努力しても、反感を買い、幻滅するだけだ。むしろ、どのような展開が待ち受けているかに備えるべきだろう。特に、ロシアについてはいくつかのシナリオが考えられる。ロシアは中国に隷属するか、このまま衰退の道を辿るかもしれない。一方、共通点の多いフランスに似た存在になっていくかもしれない。逆に中国を操るようになる可能性も、カオスに陥っていく危険もある。少なくとも、「反ロシアにこり固まった欧米」というプーチンの主張を裏付けるような言動をみせてロシア人をさらにプーチンの下に結集させるのではなく、欧米は「プーチンとロシアを分離したい」と望むロシア人を助けるべきだろう。

プーチンとロシアの未来
―― 浪費される資源と帝国の野望

2024年4月号

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー・ロシア・ユーラシア・センター シニアフェロー

プーチンは「特別軍事作戦」を開始するにあたって、ポスト・ソビエトの民主的遺産も否定した。民主的制度の確立に始まり、検閲の廃止、ロシア文化とヨーロッパ文化の再統合にいたるまで、プーチンは、1985年以降にロシアが成し遂げた成果のすべてを、一気にテーブルから振り落とした。その後、短期間で、残された民主的制度を粉砕し、ソビエト期に匹敵する抑圧・監視体制を再確立した。それは1945年以降に出現し、1989年以降に支配的となった世界秩序との決別を意味した。ここからロシアはどこへ向かうのか。侵略というウクライナでの彼の高価なプロジェクトは、実際には、ロシアの経済的、人口的未来に地雷をしかけたようなものだ。

世界戦争の足音
―― 歴史は繰り返すのか

2024年3月号

ハル・ブランズ アメリカン・エンタープライズ研究所 シニアフェロー

世界は、1940年代のように、複数の紛争が一つの戦争へ統合されていく局面にあるのかもしれない。東ヨーロッパと中東ではすでに戦争が勃発し、現状を否定するリビジョニズム国家の結びつきがますます強くなっている。この環境で、アジアの係争海域で軍事衝突が起きれば、別の恐ろしいシナリオが浮上する。東アジアでの戦争が他の地域ですでに進行している紛争と重なり合い、ユーラシアの三つの主要地域が一度に大規模な紛争で燃え上がれば、1940年代以来の状況が出現する危険がある。しかも、アメリカはこの課題への準備ができていない。すでにプーチンは、ウクライナと中東における紛争は「ロシアと全世界の運命を決める」一つの大きな闘争の一部だと宣言している。

欧州の戦争疲れ
―― ウクライナへの支持低下をいかに覆すか

2024年2月号

スージー・デニソン 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー
パヴェル・ゼルカ 欧州外交問題評議会 シニア・ポリシーフェロー

欧州市民の多く、特にウクライナから遠く離れた国の人々は、戦争を、もはや緊急事態とはみなしていない。ヨーロッパ人の多くは、ウクライナ戦争を遠くの地域の戦争、アルメニアやガザでの紛争と同じくらい遠く、抽象的なものとみなしている。欧州の全般的なウクライナ支持は、依然として揺らいでいないが、近いうちに状況は変わるかもしれない。そのような事態を避けるには、欧州の指導者たちは、どうすればウクライナは戦争に勝てるか、なぜウクライナの勝利が欧州の将来にとって不可欠なのかについて、説得力のある理論を有権者に示す必要がある。だが、そうできなければ、キーウは今後数週間、数カ月で重要な支持を失うことになるかもしれない。・・・

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