1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

― 迫り来る台湾危機に関する論文

南シナ海に迫る危機
―― 中国との危機を機会に変えるには

2024年3月号

マイケル・J・マザー ランド研究所 上席政治学者

習近平国家主席は、停滞する中国経済の再生と国内での政治的管理体制の強化に躍起になっているし、アメリカとの緊張緩和への期待も示している。しかし、南シナ海での衝突や挑発行為がより頻繁に発生するようになれば、それが危機につながっていくのは避けられないし、そのような事態に直面すれば、アメリカの対中戦略は大きな転換点を迎える。北京の能力と影響力を抑える障壁を積み上げることであれ、抑止力の強化であれ、中国の力と野心に対抗するだけでは、今後10年にわたって存続できる戦略関係を形作ることはできない。むしろアメリカは中国に対抗しつつも、一方で、北京との安定した関係を築き、いつかは相互に尊重できる共存へと移行できるような基盤を築いていくべきだろう。

米中戦争と台湾・第一列島線
―― 戦争の長期化・広域化と多領域化に備えよ

2024年2月号

アンドリュー・F・クレピネビッチ ハドソン研究所 シニアフェロー

アメリカとその同盟国は、核兵器によるエスカレーションの可能性は小さいとしても、何カ月も何年も続き、経済、インフラ、市民生活に莫大なコストを強いる中国との大国間戦争が何を意味するかを考え始めるべき段階にある。中国と米主導の連合軍との通常戦争は長期化し、地理的に広域化するだけでなく、その対立は、世界経済、宇宙、サイバースペース等の多くの領域に飛び火する危険がある。しかも、中国が第一列島線に沿った主要な島嶼を占領した場合、アメリカとその同盟国が許容範囲に近いコストでそれらの島々を奪還するのは非常に難しい。どちらの側にとっても決定的な軍事的勝利の見込みがない以上、この戦争は数年以上にわたって続く危険がある。・・・

本当の対中抑止力とは
―― 米台が中国を安心させるべき理由

2024年1月号

ボニー・S・グレーザー 米ジャーマン・マーシャル財団 マネージングディレクター
ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学 教授(中国・アジア太平洋研究)
トーマス・J・クリステンセン コロンビア大学教授(国際関係論)

「あと一歩踏み込んだら撃つぞ」という警告が抑止のための威嚇になるのは、「踏み込まなければ、撃つことはない」という暗黙の了解が一方に存在するからだ。潜在的な敵を思いとどまらせるには、「保証」を示して、相手を安心させる必要もある。ワシントンと台北は抑止力の強化に努めながらも、武力行使を控えれば、懲罰の対象にはされないと北京を安心させなければならない。一部の米政府高官たちが主張するように、台湾を主権国家として承認し、台湾防衛のための明確な同盟コミットメントを示せば、北京の安心感は損なわれ、抑止力も低下する。この場合、ワシントンが地域的な軍事力強化にいくら力を注いでも、戦争を防ぐことはできなくなるかもしれない。

台湾海峡で中国を抑止するには
―― アメリカの能力と決意を示せ

2023年11月号

デビッド・サックス 米外交問題評議会フェロー
イヴァン・カナパシー 元国家安全保障会議 ディレクター

いまや、外交は綻びをみせ、抑止力は形骸化している。しかも、中国のリスク許容レベルは高まり、台湾海峡における不安定化要因は増える一方だ。ワシントンは、対中抑止力が低下していることを認識した上で、武力行使が破滅的な結果を招くことを習近平に理解させるために、さらなる措置を講じなければならない。そのためには、北京との摩擦が大きくなることを受け入れ、台湾の戦闘能力を高め、台湾軍の訓練や米軍アドバイザーの派遣を含めて、台湾のために軍事介入するアメリカの能力と決意を示さなければならない。アメリカとパートナーは、武力行使が解決策にはならないことを中国に認識させる必要がある。

台湾がとるべき道
―― 対話による戦争回避を

2023年11月号

侯友宜 台湾国民党 総統候補

国民党の北京へのアプローチは、中国による武力行使への反対に留まるものではない。非対称戦争能力を慎重に強化し、完成させる一方で、中国との誤解をなくして、いかなる危機も両岸の対話を通じて解決していくことにある。平和には対話も必要であり、私は中華民国の憲法と法律に則したやり方で、北京との建設的な交流を試みるつもりだ。台湾海峡とインド太平洋地域の安定を維持するために、抑止(Deterrence)、対話(Dialogue)、ディエスカレーション(De-escalation)という「三つのD」戦略を私は提案する。

半導体と米中台トライアングル
―― TSMCとサプライチェーン

2023年9月号

ラリー・ダイアモンド フーバー研究所シニアフェロー
ジム・エリス フーバー研究所特別客員フェロー
オーヴィル・シェル アジア・ソサエティ  米中関係センター ディレクター

デジタル経済がますます拡大するなかで、半導体のサプライチェーンを、長期的な混乱や敵対国による意図的な供給遮断リスクに対して無防備なままにしておくのは、どうみても危険だ。北京が台湾攻略に成功すれば、紛争のなかで台湾の半導体生産能力の多くが機能不全に陥るか、破壊されない限り、習近平政権は、世界でもっとも重要な製品の支配権を突然手に入れることになるかもしれない。グローバル・サプライチェーンから中国を完全に締め出すのは現実的ではなく、望ましくもない。むしろ、中国やその他の潜在的な敵対国が半導体サプライチェーンにおける地位を兵器化しないようにすることを目標にする必要があるだろう。・・・

新時代の米台関係
―― 中国にどう対処するか

2023年9月号

スーザン・ゴードン 共同議長
マイケル・マレン 共同議長
デビッド・サックス プロジェクト・ディレクター

アメリカの台湾政策を、「現状に不満を募らせ、能力を高め、強硬になり、リスクを許容する中国」に対処できるように進化させなければならない。世界で経済的にもっとも重要な地域の未来は、アメリカが中国を抑止し、台湾海峡の平和を維持することに成功できるかにかかっている。中国が台湾を併合し、水中監視装置、潜水艦、対空防衛部隊などの軍事資産を現地に配備すれば、この地域における米軍の活動は制限されるし、アジアの同盟国を防衛する能力も制約される。つまり、アメリカの政策立案者は、中国が台湾を攻略すれば、台湾だけでなく、第一列島線の未来や、西太平洋全域へのアメリカのアクセスと影響力を維持する能力が危機にさらされることを理解する必要がある。

中国のグローバル軍事インフラ
―― 軍事的影響力を支える港湾ネットワーク

2023年7月号

アイザック・カードン カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(中国研究)
ウェンディ・ロイタート インディアナ大学 アシスタント・プロフェッサー(国際関係論)

北京は、中国企業が管理・所有するグローバルな港湾ネットワークを、中国海軍のために利用している。2017年にジブチに初の外国基地を得たが、中国は次の外国基地を確保できずにいる。それでも、北京がワシントンと「ほぼ同格のライバル」になれたのは、中国企業が保有する、海洋港湾インフラのグローバルネットワークを軍民の目的で利用し、中国海軍のリーチを強化しているからだ。中国海軍がグローバルに投射する軍事パワーは、すでに国際安全保障の見取り図を変化させている。この意味でも、中国の外国における港湾活動の性格と範囲、それがどのように北京の利益に貢献しているかを理解することは極めて重要だろう。

中国とウクライナ戦争
―― 対ロシア支援の論理と結末

2023年6月号

リアナ・フィクス 米外交問題評議会 フェロー(ヨーロッパ担当)
マイケル・キマージ カトリック大学 教授(歴史学)

ウクライナ戦争の傍観者として振る舞うことで、これまで中国は恩恵を確保してきたが、今後はそうはいかないだろう。ロシアの敗北は中国の利益にならないからだ。ロシアが敗北すれば、アメリカは中国とのライバル競争にエネルギーと資源を集中できる環境を手にする。このような事態を防ぐために、中国はロシアに対して、経済的、精神的支援だけでなく、殺傷能力のある兵器を提供することもできる。戦争を長引かせ、ロシアの敗北を食い止めるため、あるいは何らかのロシアの勝利を早めるために、これらの支援を提供できる。中国の参戦は国際関係の新たなページを開くことになる。ウクライナ紛争を世界規模の紛争に変え、中国と欧米間の敵対関係はさらに深刻になるだろう。・・・

戦争発言の真意
―― 習近平発言をどう受け止めるべきか

2023年5月号

ジョン・ポンフレット ワシントンポスト紙 前北京支局長
マット・ポッティンジャー 元米大統領副補佐官

2022年12月以降、中国政府は、北京、福建、湖北、湖南を含む各地で有事動員センターを相次いで開設している。国営メディアによると、台湾と海峡を隔てた福建省の各都市では、防空壕と少なくとも一つの「戦時救急病院」の建設や整備が始められている。しかも、習近平は、中華民族の偉大なる復興の「本質」は「祖国の統一」だと明言している。台湾の編入と「中国民族の偉大なる復興」の相関性を示唆しつつも、彼が、かくも明確にその関連を示したことはなかった。欧米は習近平の発言を真剣に受け止めるべきだろう。彼は、台湾を統合するためなら、武力行使も辞さないつもりだ。

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