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政治・文化・社会に関する論文

Review Essay
長期戦に備えた戦略と財政
 ――国防と予算のバランス

2007年10月号

アーロン・L・フリードバーグ 前米副大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

アメリカは対テロ戦争を戦うだけでなく、大規模な通常戦力に加えて、いずれ数発の核兵器を保有するかもしれない中規模国家の脅威にも備えなければならない。さらに将来に目をやれば、中国が、急速な経済成長と技術革新を追い風に、アメリカにとって侮れないライバルとして台頭し、アジアにおけるアメリカの軍事的優位に挑戦してくるかもしれない……。こうした長期戦に備えるには、現状批判から戦略を策定するのではなく、長期的な脅威、およびそれに対応するための軍事力整備に必要な財政基盤を包括的にとらえる必要がある。次期大統領にとって、長期と短期の目標・戦略と財政の縛りがつくりだす矛盾を解決することは、非常に大きな課題となるはずだ。

CFRインタビュー
プーチンの政治的去就と米ロ関係

2007年10月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会 ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

人気の高いプーチン大統領が、統一ロシアの選挙人名簿の一位に名を連ねることで、この政党を議会選挙で勝利に導けるとすれば、プーチンが首相になってもおかしくはない。「だが、本当にそうなのか、はっきりしない」とロシア問題の専門家、スティーブン・セスタノビッチは言う。たんに、統一ロシアの候補者名簿に名を連ねることで、議席を増やし、議会運営をしやすくしたいだけなのかもしれない。プーチンは、われわれ欧米の専門家とのゲームをまるで楽しんでいるかのようだ。これは、「彼がルールを書いた国際的な推測ゲームだ」と同氏は現状を描写する。また、中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を示唆し、欧州通常戦力(CFE)条約の履行を凍結するなど、プーチン政権が対外的強硬路線をとるのは、「自国が弱体化していたときに結ばれた合意について、再度交渉したい」という思惑があるからだとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
イラクからの撤退か、増派策の遂行か

2007年9月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会シニア・フェロー

多くの議会指導者は、大統領が想定する増派路線よりも少ない戦力で活動し、完全な撤退はしないという中道路線を重視している。……その理由は、彼らが、大統領の増派路線が不評であること、そして一方で、犠牲を引き受けるのをやめて撤退するのも政治的に敗北を認めることにつながることを理解しているからだ。だが、この程度の戦力では、任務上の有意義な成果を上げることは期待できない。数万人の兵士を残留させても、米軍がテロ集団のターゲットにされるだけの話だ。つまり、何か有意義なことをするにも、犠牲者を少なくするにも規模が小さすぎる。論争されている路線の両極端に位置する二つの選択肢、つまり増派か完全撤退策のほうが、その間に位置する路線よりも合理性がある。(スティーブン・ビドル)

CFRミーティング
S・ハドレー大統領補佐官が語るイラクの行方
―― 増派策の成功を拡大し、政治的和解を進めるには

2007年9月号

スピーカー スティーブン・ハドレー 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)
司会 トマス・R・ピカリング 元米国連大使

イラクのスンニ派部族がアルカイダに立ち向かうために、米軍やイラク政府と協調するようになったように、シーア派の部族が、イランの支援を受けたマフディ軍団に立ち向かうような環境を作る手助けができればと思う。そして、バグダッドのイラク政府が、こうした二つの流れを、脅威としてではなく、うまく生かすべき機会として捉えるようにわれわれは強く働きかける必要がある。スンニ派、シーア派の部族集団が米軍やイラク政府と協力するように働きかけ、治安の確保に向けた流れを作り出し、人々が安心して暮らせるような環境を作る必要がある。これを、われわれはボトムアップ型の政治的和解プロセスと呼んでいる。……今後政治的に必要なのは、イラクの連邦制がどのような形態のものになるか、それがいかに機能するかについて、(シーア派、クルド人、スンニ派)三つのグループが共有できるビジョンを形作ることだ。……われわれが、破綻したイラクを(アメリカの)次期政権に委ねることはない。成功を収めつつあり、継続する価値のある路線を新政権に託すことになるだろう。

CFRインタビュー
ムシャラフ大統領の内憂外患
――選挙を控えたパキスタンの混迷

2007年8月号

テレシタ・C・シャッファー 戦略国際問題研究所南アジアプログラム・ディレクター

チョードリ最高裁長官の停職処分に端を発する民衆デモ、モスク占拠事件に対する政府の対応への反発など、ムシャラフ大統領は、パキスタン国内で非常に困難な政治状況に直面している。外交面でも、パキスタンに聖域を持つタリバーンがアフガニスタンへの越境攻撃を続けているために、アフガニスタンとの関係が不安定化し、タリバーン対策を求めるアメリカの圧力にもさらされている。米軍部隊によるタリバーンの聖域に対する攻撃計画の噂も絶えない。しかも、2007年秋には大統領選挙を控えており、ムシャラフが大統領と軍参謀長を兼務していることが大きな争点の一つとされている。国務省で長く南アジアを担当したテレシタ・C・シャッファーは「ムシャラフが、大統領と参謀長を兼務し続けた場合、裁判所には憲法違反の申し立てが行われ、おそらくこのケースについては、裁判所は起訴側の言い分を認めるかもしれない。そうなれば、事態はもっと複雑になる」と予測する。しかも、解散を間近に控えた議会が大統領を選出することの政治的正統性を疑問視する声もある。「裁判所がムシャラフに対してどの程度好意的な解釈を示すかはわからないが、このまま大統領選挙を実施し、ムシャラフが再選されても、反対派による政治的抗議の焦点とされる」とシャッファーは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRディベート
中国とインド、 経済的勝利を手にするのはどっちだ

2007年7月号

マンジート・N・クリパラニ ビジネスウィーク誌インド支局長、アダム・シーガル 米外交問題評議会 中国担当シニア・フェロー

ソフトパワー戦略を巧みに展開する中国は超大国への道を着実に歩みつつあるかにみえる。だが一方では、情報技術産業、ソフトウエア産業のブームをバックに、インドが中国のライバルとして急浮上してきている。国内総生産(GDP)の成長率でもインドは中国と肩を並べつつあるし、中国同様に大規模な労働力も持っている。中国とインドの急速な台頭を前に、最終的に経済大国の地位を手にするのは「民主的なインド」なのか、それとも「権威主義の中国」なのか。民主国家インドは、政治的に大きな発言力を持つ貧困層に短期的な痛みを強いる経済改革を断行しないことには、現在の成長路線を維持できなくなるという難題を抱え、経済的発展を遂げた中国には、政治の自由化という難題が待ち受けている。

イランがここにきて、ウラン濃縮のための遠心分離器の設置ペースをスローダウンし、国際原子力機関(IAEA)との協議にも前向きな姿勢をとっていることについて、「遠心分離器を設置することはともかく、それを高速で稼働させることをめぐって技術的問題に遭遇しているようだ」と核不拡散問題の専門家、ゲリー・サモアは指摘する。ただし、この動きは「新たな制裁決議を採択しないように安保理を牽制するための政治的試みの一環とみなすこともできる」と指摘した同氏は、制裁が効果を上 げ、国際社会への対応をめぐってテヘランの強硬派と現実主義者の間に亀裂が生じている可能性を示唆する。一方、イラクのシーア派勢力への武器援助については、米軍によるイランの核施設への軍事攻撃を牽制するための手段だとみる同氏は、(イラクに米軍が釘づけにされていれば)アメリカがイランの核施設を軍事攻撃した場合に、イランは、アメリカ軍を標的にした反撃を行うことができる(その結果、アメリカはイランへの軍事攻撃を行いにくい、ある種の抑止状況に置かれることになる)とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
トルコでのイスラム政党の躍進は何を意味するか

2007年7月号

スティーブン・A・クック 米外交問題評議会フェロー

これまでトルコで近代主義、世俗主義の擁護者としての役割を果たしてきた軍隊、そして世俗主義の敵とみなされてきたイスラム政党の位置づけが、いまや大きく変化しつつあるようだ。「2002~03年にトルコの政府与党となった公正発展党(AKP)は、他のいかなるトルコの政党よりも、トルコの民主主義に貢献してきた。AKP政権下での民主制度への移行は、イスラム教徒が多数派の国でも民主主義が実践可能であること、イスラム政党が民主的な政党になり得ることを示している」。AKPの民主的体質をこう評価する中東問題の専門家スティーブン・クックは、今回のAKPの総選挙での躍進を、トルコ経済が好調であることと、アブドラ・ギュル外相を大統領候補として出馬させようとしたAKPの試みを、軍と世俗派政党が結託して阻止したことに対する民衆の反発がその背景にあるとみる。軍は「ギュルのような(イスラムの)バックグランドを持つ人物、その妻がヒジャブをかぶっているような人物がトルコの大統領宮殿の主になることは認められない」と明言しており、AKPが再度ギュルを大統領候補に立て、彼が選挙で勝利を収める可能性が高い情勢になれば、軍と政府が衝突することになる可能性もあると今後を展望した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
中東和平交渉を成功させるための条件とは

2007年7月号

デニス・B・ロス 近東政策ワシントン研究所フェロー

ブッシュ大統領が提案した「中東和平に関する国際会議」を成功させるにはパレスチナ自治政府の内部改革と国際交渉をセットにする必要がある。しかし、パレスチナはガザと西岸に分裂し、それぞれの地域をハマスとファタハが管理しており、こうした対立状況をデニス・ロスは「パレスチナの民族主義運動をイスラム主義運動に置き換えようとする勢力=ハマス」と「民族主義運動としての路線を貫こうとする勢力=ファタハ」間のアイデンティティー抗争とみる。いまやファタハはハマスへの反発一色に染まっており、両勢力が交渉で問題解決を図るのは難しい情勢にある。イスラエルとの対立がイスラムとの宗教紛争という構図に持ち込まれれば、解決の見込みはなくなる。したがって、パレスチナ民衆のファタハ指導者や自治政府への信頼を回復するのに不可欠な内的改革を実行させ、ブッシュ大統領が表明した国際会議の開催とこうした自治政府の改革をセットにして、パレスチナの和解、そして中東和平への環境をまとめていく必要がある、とロスは分析する。また、サウジ抜きでの会議では意味がなく、結果を手にするにはアラブ諸国との入念な事前交渉が必要になると強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
パレスチナの分裂は当面続く

2007年7月号

ネーサン・ブラウン カーネギー国際平和財団シニア・アソシエート

ガザ地区のハマスはいまも政権を担っていると主張し、一方西岸のアッバス議長も「ハマスがクーデターを起こした」ため、「ハマスの閣僚は解任した」と主張し、すでに新政権を立ち上げている。自治政府の議長は首相や閣僚を解任する権限は持っているが、新たな人物を閣僚に任命する権限はない。「つまり、政治的ではなく、法的観点からみれば、統治組織としてのハマスのプレゼンスの方が強く、アッバスの主張の根拠は弱いということになる」。パレスチナの現状をこう分析するアラブ政治の専門家、ネーサン・ブラウンは、双方とも、自らの政府こそ「パレスチナのすべてを代弁する正統政府である」と主張しており、世論の支持をめぐって、ハマスとファタハは競い合っている状態にある、と状況を分析する。短期的には、「一方が他方を制圧する可能性はほとんどないし、両勢力を和解させようとする試みが、成功するとも思えない。だが、時間が経てば、ファタハは、必然的にサウジがまとめた統一政権樹立のためのメッカ合意へと再び目を向けざるを得なくなる」と同氏は今後を見通した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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