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政治・文化・社会に関する論文

パキスタン軍部とその情報機関である軍統合情報部(ISI)は、クーデター、武装勢力への支援、近隣国の内政への介入などを通じて、建国以来、一貫してこの国の政策決定の中枢を担ってきた。だが、これまでイスラム武装勢力を外交ツールとして利用してきた軍とISIも、こうした武装勢力を抑え込まない限り、地域的な混乱と不安定化をめぐって国際的にますます批判されかねない状況へと追い込まれている。こうしたなか、軍の支配構図も少しずつ変化しだしているし、ムシャラフの軍参謀長辞任によって、さらに流れが変わる可能性もある。また、チョードリ判事解任の顛末からも明らかなように、裁判所も政治からの独立性をいまや主張するようになった。だが、最大の変化はメディアが力をつけてきていることだ。「すでにニュース情報が、この国の民主化運動のバックボーンを提供している」とみる専門家もいる。また、2003年以降、パキスタン経済は年平均で6・5%の成長を遂げており、こうした経済の拡大もパキスタンにおける政治制度の移行を促すことになるかもしれない。とはいえ、軍の影響力は依然として大きいし、政党も分裂している。来年早々に予定されている議会選挙でこれらの社会変数の何がどう変わるか、パキスタンの政治体制の移行が実現するかどうかが大いに注目されている。

CFRインタビュー
ムシャラフは選挙実施に向けた
ロードマップを早急に示すべきだ

2007年11月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

ムシャラフ大統領が「不本意ながら」、今回の非常事態宣言の発令という措置をとったのは真実かもしれない。実際、文民大統領となり、軍の職を辞任し、軍参謀長に信頼できる人物を据えた上で、ベナジル・ブットのパキスタン人民党(PPP)も含めた諸政党が参加する国政選挙を行うことを視野に入れた長期的な計画をムシャラフは用意していた。「だが、これを困難にするような事態が重なって起きた」とダニエル・マーキーは指摘する。「連邦直轄部族地域(FATA)とその境界地域で紛争が起きるとともに、全国レベルで暴力事件が多発するようになった」ことに加えて、パキスタン最高裁判所がムシャラフ大統領の再選の正統性を否定する判断を下すという見通しも、今回の非常事態宣言の発令を誘発した原因となったと同氏は言う。だが、混乱のなかにあるとはいえ、選挙までのロードマップを示せば、パキスタンの政治勢力も希望を見いだすようになり、「イスラム過激派と手を組んで反政府行動に出るより、議会選挙に参加するほうを選ぶようになる」とみる同氏は、選挙の実施こそ、イスラム過激派と反政府政治勢力を分断し、パキスタンが混沌へと陥っていくのを回避する唯一の方法だと強調した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
アフガニスタンは混乱の極みにある

2007年10月号

ジョン・キリアコウ 元米中央情報局テロ対策担当官

首都カブールでは社会が崩壊しつつある。伝統的にカブールでは紛争の解決や交渉をめぐって部族が大きな役割を果たしてきたが、いまや犯罪が蔓延し、誘拐、銃撃戦、武装集団による窃盗、強盗が横行し、路上での暴力が日常化している。米中央情報局(CIA)でテロ対策を担当し、1998年から2004年までパキスタンで活動したジョン・キリアコウによれば、「タリバーンとアルカイダがアフガニスタン南部のヘルマンド州とカンダハル州で台頭しているだけでなく、カンダハル出身の東部のパシュトゥン人たちは政府を全く信頼しておらず、武器をとり、すでにタリバーンとして活動している。アフガニスタン内にタリバーンとアルカイダが聖域を確保し、米軍の戦力がイラクに奪われ、北大西洋条約機構(NATO)部隊が、再建活動にあたる国際機関や非政府組織(NGO)スタッフの安全確保だけで身動きができずにいることが、治安を乱し、タリバーンの台頭を招いていると指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

Review Essay
長期戦に備えた戦略と財政
 ――国防と予算のバランス

2007年10月号

アーロン・L・フリードバーグ 前米副大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

アメリカは対テロ戦争を戦うだけでなく、大規模な通常戦力に加えて、いずれ数発の核兵器を保有するかもしれない中規模国家の脅威にも備えなければならない。さらに将来に目をやれば、中国が、急速な経済成長と技術革新を追い風に、アメリカにとって侮れないライバルとして台頭し、アジアにおけるアメリカの軍事的優位に挑戦してくるかもしれない……。こうした長期戦に備えるには、現状批判から戦略を策定するのではなく、長期的な脅威、およびそれに対応するための軍事力整備に必要な財政基盤を包括的にとらえる必要がある。次期大統領にとって、長期と短期の目標・戦略と財政の縛りがつくりだす矛盾を解決することは、非常に大きな課題となるはずだ。

CFRインタビュー
プーチンの政治的去就と米ロ関係

2007年10月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会 ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

人気の高いプーチン大統領が、統一ロシアの選挙人名簿の一位に名を連ねることで、この政党を議会選挙で勝利に導けるとすれば、プーチンが首相になってもおかしくはない。「だが、本当にそうなのか、はっきりしない」とロシア問題の専門家、スティーブン・セスタノビッチは言う。たんに、統一ロシアの候補者名簿に名を連ねることで、議席を増やし、議会運営をしやすくしたいだけなのかもしれない。プーチンは、われわれ欧米の専門家とのゲームをまるで楽しんでいるかのようだ。これは、「彼がルールを書いた国際的な推測ゲームだ」と同氏は現状を描写する。また、中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を示唆し、欧州通常戦力(CFE)条約の履行を凍結するなど、プーチン政権が対外的強硬路線をとるのは、「自国が弱体化していたときに結ばれた合意について、再度交渉したい」という思惑があるからだとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
イラクからの撤退か、増派策の遂行か

2007年9月号

スティーブン・ビドル 米外交問題評議会シニア・フェロー

多くの議会指導者は、大統領が想定する増派路線よりも少ない戦力で活動し、完全な撤退はしないという中道路線を重視している。……その理由は、彼らが、大統領の増派路線が不評であること、そして一方で、犠牲を引き受けるのをやめて撤退するのも政治的に敗北を認めることにつながることを理解しているからだ。だが、この程度の戦力では、任務上の有意義な成果を上げることは期待できない。数万人の兵士を残留させても、米軍がテロ集団のターゲットにされるだけの話だ。つまり、何か有意義なことをするにも、犠牲者を少なくするにも規模が小さすぎる。論争されている路線の両極端に位置する二つの選択肢、つまり増派か完全撤退策のほうが、その間に位置する路線よりも合理性がある。(スティーブン・ビドル)

CFRミーティング
S・ハドレー大統領補佐官が語るイラクの行方
―― 増派策の成功を拡大し、政治的和解を進めるには

2007年9月号

スピーカー スティーブン・ハドレー 米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)
司会 トマス・R・ピカリング 元米国連大使

イラクのスンニ派部族がアルカイダに立ち向かうために、米軍やイラク政府と協調するようになったように、シーア派の部族が、イランの支援を受けたマフディ軍団に立ち向かうような環境を作る手助けができればと思う。そして、バグダッドのイラク政府が、こうした二つの流れを、脅威としてではなく、うまく生かすべき機会として捉えるようにわれわれは強く働きかける必要がある。スンニ派、シーア派の部族集団が米軍やイラク政府と協力するように働きかけ、治安の確保に向けた流れを作り出し、人々が安心して暮らせるような環境を作る必要がある。これを、われわれはボトムアップ型の政治的和解プロセスと呼んでいる。……今後政治的に必要なのは、イラクの連邦制がどのような形態のものになるか、それがいかに機能するかについて、(シーア派、クルド人、スンニ派)三つのグループが共有できるビジョンを形作ることだ。……われわれが、破綻したイラクを(アメリカの)次期政権に委ねることはない。成功を収めつつあり、継続する価値のある路線を新政権に託すことになるだろう。

CFRインタビュー
ムシャラフ大統領の内憂外患
――選挙を控えたパキスタンの混迷

2007年8月号

テレシタ・C・シャッファー 戦略国際問題研究所南アジアプログラム・ディレクター

チョードリ最高裁長官の停職処分に端を発する民衆デモ、モスク占拠事件に対する政府の対応への反発など、ムシャラフ大統領は、パキスタン国内で非常に困難な政治状況に直面している。外交面でも、パキスタンに聖域を持つタリバーンがアフガニスタンへの越境攻撃を続けているために、アフガニスタンとの関係が不安定化し、タリバーン対策を求めるアメリカの圧力にもさらされている。米軍部隊によるタリバーンの聖域に対する攻撃計画の噂も絶えない。しかも、2007年秋には大統領選挙を控えており、ムシャラフが大統領と軍参謀長を兼務していることが大きな争点の一つとされている。国務省で長く南アジアを担当したテレシタ・C・シャッファーは「ムシャラフが、大統領と参謀長を兼務し続けた場合、裁判所には憲法違反の申し立てが行われ、おそらくこのケースについては、裁判所は起訴側の言い分を認めるかもしれない。そうなれば、事態はもっと複雑になる」と予測する。しかも、解散を間近に控えた議会が大統領を選出することの政治的正統性を疑問視する声もある。「裁判所がムシャラフに対してどの程度好意的な解釈を示すかはわからないが、このまま大統領選挙を実施し、ムシャラフが再選されても、反対派による政治的抗議の焦点とされる」とシャッファーは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRディベート
中国とインド、 経済的勝利を手にするのはどっちだ

2007年7月号

マンジート・N・クリパラニ ビジネスウィーク誌インド支局長、アダム・シーガル 米外交問題評議会 中国担当シニア・フェロー

ソフトパワー戦略を巧みに展開する中国は超大国への道を着実に歩みつつあるかにみえる。だが一方では、情報技術産業、ソフトウエア産業のブームをバックに、インドが中国のライバルとして急浮上してきている。国内総生産(GDP)の成長率でもインドは中国と肩を並べつつあるし、中国同様に大規模な労働力も持っている。中国とインドの急速な台頭を前に、最終的に経済大国の地位を手にするのは「民主的なインド」なのか、それとも「権威主義の中国」なのか。民主国家インドは、政治的に大きな発言力を持つ貧困層に短期的な痛みを強いる経済改革を断行しないことには、現在の成長路線を維持できなくなるという難題を抱え、経済的発展を遂げた中国には、政治の自由化という難題が待ち受けている。

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