安倍政権のエネルギーアジェンダ
2013年9月号

現在の日本の電力市場構造は、第二次世界大戦後の占領期に形作られている。GHQの指令によって電力事業体は地域ごとに独占市場を作り上げ、電力価格は通産省(現経済産業省)によって厳格に規制されてきた。だが安倍内閣の規制改革方針では、半世紀前につくられた古い電力システムを3段階の改革によって変化させていくことが想定されている。まず、独立機関「広域系統運用機関」が新しく創設され、この機関が電力の需給バランスを調整し、地域間の電力供給を担当する。次に、小売市場と卸売市場の両方において、新たな電力供給者の自由参入を認め、電力の取引市場も設けられる。そして、電力の生産、輸送、分配は法的に分離され、小売料金が全面自由化される。・・・だが、今後を大きく左右するのは、原発の再稼働申請が認められるかどうかだ。現状では、停止中の原発48基分のエネルギーを埋め合わせるために(火力発電燃料である)天然ガスの輸入量が急増している。特に、MOX燃料の使用とプルトニウム燃料の再処理プログラムがどう判断されるかが、今後の日本のエネルギー政策を大きく左右する。