社会科学を覆した2人のイスラエル人学者
―― トベルスキーとカーネマン
2017年6月号

カーネマンとトベルスキーという2人の偉大な心理学者は、人間の思考プロセスに欠陥があることを発見した。その一つが、自分の先入観に適合するかどうかによって物事を判断する「認識の近道」だ。2人の研究にノーベル賞の価値があるのは、合理的なアクターという経済学の大前提に疑問を投げかけ、人間の思考プロセスについてもっと現実的な説明をしたことにある。2人は、人間が確率を考えるときに抱く体系的なバイアスを発見し、経済学、医学、法学、公共政策の研究と実践に革命を起こした。政治家の外交的判断も例外ではない。なぜジョンソン大統領はベトナムへの介入強化の決定をしたのか。朝鮮戦争やミュンヘンの宥和のような、間違った先例に介入の根拠を見出したのは、人間が出来事や人を、自分の先入観に適合するかどうかによって評価する「認識の近道」が引き起こした弊害だった。・・・