1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ー 地球温暖化と異常気象に関する論文

Classic Selection 2009
地球温暖化対策の切り札としての地球工学オプション

2009年4月号

デビッド・ビクター スタンフォード大学教授
M・グランジャー・モーガン カーネギーメロン大学 工学・公共政策学部・学部長
ジャイ・アプト カーネギーメロン大学工学・公共政策学部教授
ジョン・ステインブルーナー メリーランド大学教授
キャサリン・リック カーネギーメロン大学博士課程在籍

世界各国の二酸化炭素排出量削減が思うに任せず、地球環境が急激に悪化する「ティッピング・ポイント」を超えてしまう危険が迫りつつある以上、政策決定者は、地球温暖化の余波を少しでも和らげるための緊急対応戦略として(太陽光の一部を遮断するために)反射性の粒子を大気中にちりばめたり、あるいは、地球を冷やすためのサンシェード(日よけ)を設けたりするなど、地球規模のスケールで工学システムを配備することの恩恵とリスクの分析を開始すべきだ。ただし、地球工学的なやり方で地球を冷やすことはできるが、大気中に蓄積される二酸化炭素の排出量を減らすことはできないし、その余波がどのようなものになるかもはっきりしない。その時に備えた地球工学の実証的研究を今から進めておく必要がある。

北極の海氷後退と資源争奪競争
――地球温暖化の経済・安全保障的意味合い

2008年3月号

スコット・G・ボルガーソン 外交問題評議会国際関係フェロー

地球温暖化が進むなか、北極の海氷の後退が速いペースで進んでおり、いまや北極海の航行ルートが開けるかどうかではなく、いつそのルートが定期的な海洋運輸のためのシーレーンとして確立されるか、石油や天然ガスなどの魅力的な北極の天然資源の開発がどの段階で正式に可能になるかが注目されている。これほど権利関係が曖昧で、劇的に変化し、限りなき経済的ポテンシャルを秘めている海域はかつて存在しなかった。手つかずの資源と大きな経済的ポテンシャルを持つ北極地方が、大西洋と太平洋を結び、これまでよりも距離の短い航路で結ばれるとなれば、今後、この地域が国際政治の大きな争点とされることは間違いない。

CFRディベート
原子力エネルギーは地球温暖化対策の切り札になるか

2007年11月号

マイケル・マリオット 原子力情報資源サービス所長
スティーブ・ケレケス 原子力エネルギー研究所広報部シニア・ディレクター

環境保護派の多くにとって、原子力発電という言葉はいまも呪いの言葉に等しい。彼らの多くは、原子力発電所が環境に与えるダメージをいまも心配している。だがここにきて、地球温暖化対策という新しい基準が政策領域に持ち込まれたことで、環境保護の観点からも二酸化炭素を排出しない原子力発電が見直されつつある。だが、温室効果ガスを排出しないとはいえ、原子力発電には原子炉の安全性、放射性廃棄物、核拡散リスク、コストの問題がともなうと考える専門家もいる。環境をこれ以上汚染せずに、電力の必要性をいかにして満たしていくのか。それは、原子力発電なのか、それとも、同様に温室効果ガスを排出しない風力やソーラー(太陽光)エネルギーなどの再生可能エネルギーなのか。あるいは、原子力と再生可能エネルギーの組み合わせなのか。二人の専門家が議論する、エネルギーと地球環境の将来とは。

地球温暖化、異常気象と今後のエネルギー資源
―― 二酸化炭素固定技術を推進せよ

2005年11月号

ジュリオ・フリードマン ローレンス・リバモア研究所二酸化炭素管理プログラム責任者
トーマス・ホーマー・ディクソン トロント大学平和・紛争研究センター所長

増大するエネルギー需要と不安定な原油価格を前に、一部の先進国は石炭や石油に代わる代替エネルギーの開発を試みている。だがコストのかかる代替エネルギーへの転換では問題の一部しか解決できない。地球温暖化問題を抱えつつも、人類社会は依然として二酸化炭素を放出する化石燃料にエネルギー源を頼らざるを得ない状況にある。幸い、大規模な気候変動を引き起こさずに化石燃料を利用できる技術がある。それが、「二酸化炭素固定技術」と「二酸化炭素の地中貯留技術」を組み合わせたゼロエミッションの石炭ガス化複合発電施設だ。

京都合意を超えて
――現実的な地球温暖化対策とは何か

2002年6月号

トマス・C・シェリング メリーランド大学経済学名誉教授

どのように温室効果ガスの排出を削減できるかもわかっていないのに、特定の目標期日までの排出の量的削減という「結果」にコミットしても意味はない。排出権取引という概念も、排出量の少ない国に賄賂を払って条約を批准させ、自分たちは金で量的削減の帳尻を合わせる、ごまかしにすぎない。主要な先進諸国は、今後数十年にわたって温室効果ガス排出削減のために自ら犠牲を払い、その後、発展途上国を関与させる必要がある。膨大な資源がかかわる地球環境問題を解決する鍵は、削減に向けた各国の「自発的」な取り組みのプロセスと、合意を尊重するメカニズムをどうつくるかにある。

アメリカだけでなく、ヨーロッパも、京都議定書に盛り込まれた削減目標を全うできないだろう。各国が京都議定書を順守できるはずはなく、当然、議定書はすでに死滅しているも同然というのが揺るぎない事実だ。京都合意に代わる多国間対応枠組みを再構築する必要があるが、アメリカはその前に、排出規制に向けた本格的な政策を国内で導入すべきである。

米中関係の試金石としての環境問題

1999年4月号

エリザベス・エコノミー  外交問題評議会研究員

開発かそれとも環境保護かというつば競り合いのなか、中国の指導者は開発のペースが環境悪化のペースを上回ることを期待し、環境問題を世界の他の地域に押しつけ、もっぱら開発を優先させるという行動に出た。国内的に、現政権が正統性を維持できるかどうかが、ひとえに急速な経済成長を持続できるかにかかっていたからだ。だが、昨今の経済ブームが残した環境問題は、脆弱な社会・政治・経済上のインフラを脅かしており、中国の経済成長、つまりは共産党政府の正統性の基盤が持続可能かどうかも危うくなっている。米中関係の厳しい現実からみて、環境問題を新たな対立の火種ではなく協調の手がかりとするには、政治色の弱い「米中環境・開発フォーラム」に中核的役割を与え、フォーラムへの両国の企業、非政府組織(NGO)、研究財団の参加を積極的に働きかけていくべきだろう。

山積する温暖化防止の課題

1998年9月号

ヘンリー・D・ジャコビー マサチューセッツ工科大学(MIT)教授  ロナルド・G・プリン  MIT教授 リチャード・シュマレンシー MIT教授

京都合意は失敗でも成功でもなく、「気候変動枠組み条約第一回締約国会議で提示された問題に、政治的な応急処置を施したにすぎない」。京都以後の道のりを成功へと導くには、政策決定者たちは長期的考えにより多くの時間を費やすべきで、とくに途上諸国の参加、温室効果ガスの排出削減を可能にし、なおかつ経済成長にも貢献できるような新技術の研究・開発の強化、排出権取引をめぐる柔軟な措置の導入が不可欠である。実際、今後これらの課題を満たせないのであれば、「京都合意をすべて解体し、意見が変わった時に新たに交渉を始めるほうが、まだましだろう」。気候変動という問題については、世界はまだ取り組み始めたばかりで、京都以後の道のりには、さまざまな具体的課題とともに、排出権取引を管理する長期的に持続可能な国際システムの構築の準備という難題が待ち受けている。

京都合意は間違っていない

1998年8月号

スチュアート・アイゼンシュタット 米国務省次官

「国際的に一律な炭素税の導入に向けた合意形成のほうが、排出削減目標を設定するよりも簡単だろう」とみなすクーパーの考えは、政治的に現実離れした見方と言わざるを得ない。

Page Top