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ドナルド・トランプに関する論文

トランプが思うままに行動できる理由
―― 形骸化した抑制と均衡

2018年11月号

ジェームズ・ゴールドガイアー アメリカン大学教授(国際関係論)
エリザベス・N・サンダース ジョージタウン大学外交大学院准教授

なぜドナルド・トランプ米大統領は好き勝手に振る舞えるのか。実際には、これは、トランプ個人に留まる問題ではなく、アメリカ政治を支えてきた抑制と均衡のシステムが形骸化していることで引き起こされている。米議会の外交専門家が少なくなり、国務省は虐げられ、国家安全保障会議が肥大化している。同盟国の立場も公然と無視されるようになった。トランプは、かねて進行してきたこのシステムの劣化を前に、暴走しているに過ぎない。大統領権限の拡大を阻止したいのなら、トランプが引き起こしたダメージだけでなく、そのダメージが明らかにしたより根深い問題、つまり、大統領権限の抑制を担うべき組織が、その意欲と能力の双方を着実に失っているという現実に対処していかなければならない。

トランプ・ドクトリン
―― 対イラン経済制裁への参加がなぜ必要か

2018年11月号

マイク・R・ポンペオ 米国務長官

トランプ大統領が引き継いだのは、第一次世界大戦や第二次世界大戦前夜、あるいは冷戦のピーク時に匹敵する危険な世界だ。しかし、先ず北朝鮮に、そして現在はイランに対して大統領がみせている破壊的なまでの大胆さは、明確で強い信念と、核不拡散と強力な同盟関係を重視する姿勢を組み合わせれば、いかに多くのことを成し遂げられるかを示している。・・・率直な態度は交渉を妨げるという、古臭い思い込みにとらわれている人々も、ターゲットを絞り込んだレトリック、現実的な圧力行使策が、アウトロー国家を変化させ、現在も変化させつつあることを認めるべきだ。・・・われわれは、(イランとの)戦争は望んでない。しかし事態をエスカレートさせれば、イランの敗北に終わることを、われわれは明白にしておく必要がある。

トランプ流外交の悪夢
―― 外交と「取引」の間

2018年10月号

フィリップ・ゴードン 米外交問題評議会 シニアフェロー(アメリカ外交担当)

貿易問題、関税、イラン核合意、北朝鮮問題やパレスチナ和平へのアプローチ、そして中国やヨーロッパとの関係など、トランプ政権のこれまでの外交記録は、彼のアプローチが根本的に間違っていることを示している。同時にすべての人を批判しようとする彼の本能とは逆に、外交交渉を成功させるには、どの問題を交渉するかを選び、同盟関係を維持し、慎重に決定した優先課題の実現に向けて連帯を組織しなければならない。貿易問題をめぐって容赦なく攻撃している中国やヨーロッパから、イラン問題をめぐって支持を引き出すのは難しい。どうみてもトランプは、うまく交渉ができるタイプではない。基本的事実に習熟しておらず、何を重視するかについての一貫性がない。しかも、彼は合意形成を根本的に誤解している。

政治的秘密とリークと内部告発
―― 正当な告発と不当な告発

2018年5月号

マイケル・ウォルツァー プリンストン高等研究所 名誉教授

政府の嘘や秘密には、正当化できるものでもあれば、そうでないものもある。従って、誰かが「政府の」秘密を暴露して嘘を暴く行為が正当なものであるかどうかを判断する前に、正当な秘密と不当な秘密の違い、正当なごまかしとそうでないごまかしの違いを知る必要がある。そうでなければ、機密情報や文書を公開し、政府の不正行為を内部告発する行為が公益に資するものか、さらには民主的政府の利益になるかを判断できない。秘密が存在する限り、内部告発という行動が必要になる。そして、内部告発に対して最終的な評決を下すのは市民社会だ。たしかに、民主的政治空間における内部告発には応分の役割がある。だが、それが非公式の役割であること、潜在的価値をもつとともに潜在的リスクを伴うことを認識しなければならない。

トランプの台湾カードと台北
―― 急旋回する米中台関係

2018年5月号

ダニエル・リンチ 香港城市大学教授(アジア・国際研究)

中台関係と米中関係の緊張が同時に高まっている。中国は台湾海峡に空母を、この島の上空近くに頻繁に戦闘機を送り込んでいるだけでなく、中国の外交官は「米海軍の艦船が高雄港に寄港すれば、中国軍は直ちに台湾を武力統合する」とさえ警告している。一方ワシントンでは、台湾カードを切ることを求めるジョン・ボルトンが大統領補佐官に就任した。いずれトランプ政権が、中国との軍事衝突を引き起こしかねないやり方で台湾カードを切る可能性は現に存在する。トランプがアメリカと台湾の関係を大幅に格上げすれば、この動きは台湾では大いに歓迎されるだろう。しかし、蔡英文はそのような変化を受け入れる誘惑に耐えた方がよい。誘惑に負ければ、台湾は「ワシントンの中国対抗策における人質」にされてしまう。

同盟関係と国際機関の価値に目を向けよ
―― 大国間競争で勝利を収めるには

2018年4月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

冷戦初期同様に現在のアメリカは大国間競争の時代に足を踏み入れている。しかし、アメリカファーストを掲げるトランプ政権は、冷戦における勝利を西側にもたらした同盟関係や国際機関を基盤とする秩序に背を向けてしまっている。戦後戦略の中枢は「ヨーロッパとアジアで、権威主義の誘惑と脅威に対抗する力をもつ強固な民主的な同盟関係を築くことだった」。当時のアメリカは、そうすることで、軍事力に過度に依存せずに、自国の経済・安全保障利益を守れるようになると考えた。トランプ政権が大国間競争の時代の幕開けを宣言したタイミングで、アメリカが冷戦という大国間競争に勝利を収めるのを助けたツールを大統領が放棄し、その価値を否定しようとしているのは大きな皮肉としか言いようがない。

何が米戦略の立案を阻んでいるのか
―― ホワイトハウスとペンタゴンの対立

2018年4月号

ジュリアン・スミス 前米副大統領副補佐官 (国家安全保障問題担当)
ローレン・デヨング・シュルマン 前米国家安全保障会議ディレクター (国防政策担当)

北朝鮮軍事戦略の策定を阻んでいるのはホワイトハウスや米国家安全保障会議(NSC)とペンタゴンの確執なのか。おそらくそうではない。ホワイトハウスが戦略をもっていないこと、数日毎に新たな戦略の条件を示し続けていることが問題だ。さらに、機能する省庁間調整プロセス、政府の方針を維持する閣僚、高官ポストが空席でない国務省、駐韓アメリカ大使、さらにはアメリカの政策や大統領のツイートを解読するのに次第に苛立ちを感じているかにみえる同盟諸国との開放的なコミュニケーションチャンネルも必要とされている。国務省、ソウル、あるいは平壌、どこにいようと、ホワイトハウスが本当に望んでいるものが何なのかを理解できない状態にある。

CFR Blog
ティラーソンからポンペオへ
―― 米国務省を救うには

2018年4月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ティラーソンは、スティーブ・バノン(首席戦略官)やスティーブン・ミラー(政策担当上級顧問)のような、トランプ大統領を取り巻く保守・ナショナリスト系のイデオローグたちによる攻撃から国務省を守ることができなかった。こうした自称「反グローバリスト」たちは、国務省のことを、勤勉なアメリカの愛国者ではなく、アメリカの主権を価値のない合意と引き換えに売り渡す国際主義者たちが埋め尽くす、敵に乗っ取られた組織とみなした。・・・後任のポンペオは、その忠誠ゆえにトランプに好ましく思われているが、大統領が外交的カオスを作り出そうとしたり、無謀にもアメリカを脅かす脅威を無視しようとしたりしたときに、大統領の前に立ちはだかれるだろうか。ポンペオのCIAでの記録をみれば、楽観は許されない。・・・

同盟諸国のリスクヘッジ策
―― トランプリスクと同盟諸国の対応

2018年3月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ナショナリスト的外交政策を展開しようと、トランプ政権が、戦後アメリカが構築してきたシステムに背を向けたために、リベラルな国際秩序はきしみ音をたてている。予想された通り、新政権の路線を前に同盟国やパートナー国はリスクヘッジ策をとっている。現状がアメリカ外交の一時的な逸脱であることを願いつつも、同盟諸国はすでに事態の変化に対応できる計画をまとめつつあるし、アジア諸国のなかには、中国にすり寄ってバランスをとろうとする国もある。経済、軍事領域で各国は自立性を高め、貿易政策や温暖化対策をめぐっても、アメリカ抜きで対策を進めつつある。トランプの大統領就任からたった1年でアメリカのリーダーシップへの国際社会の信頼は劇的に低下している。

ポストアメリカの世界経済
―― リーダーなき秩序の混乱は何を引き起こすか

2018年3月号

アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所 所長

ドナルド・トランプは、アメリカが築き上げたグローバルな経済秩序に背を向け、経済と国家安全保障の垣根を取り払い、国際的ルールの順守と履行ではなく、二国間で相手を締め付ける路線への明確なコミットメントを示している。世界貿易機関(WTO)の権威を貶め、いまや、主要同盟諸国でさえ、アメリカ抜きの自由貿易合意や投資協定を模索している。すでに各国は貿易やサプライチェーンの流れ、ビジネス関係を変化させつつある。経済政策の政治化が進み、経済領域の対立が軍事対立にエスカレートする危険も高まっている。アメリカが経済秩序から今後も遠ざかったままであれば、世界経済の成長は鈍化し、その先行きは不透明化する。その結果生じる混乱によって、世界の人々の経済的繁栄は、これまでと比べ、政治略奪や紛争に翻弄されることになるだろう。

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