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権威主義体制の台頭に関する論文

「捕獲された国家」の経済的末路
―― 経済を蝕む壮大な政治腐敗

2025年5月号

エリザベス・デイビッド=バレット サセックス大学政治学教授

実業家の大統領が富豪と組んで連邦政府の管理権を乗っ取るという事態は、アメリカ近代史ではかつてない展開だ。だが、世界的にみれば、バングラデシュ、ハンガリー、南アフリカなど、政治家、ビジネスエリートの小集団が自己利益のために国と経済をねじ曲げてきたケースは数多くある。このプロセスを描写する「国家の捕獲(state capture)」という言葉もある。政治腐敗によって、そうした国は成長率の低下、雇用の減少、格差の拡大、高インフレに直面する。トランプとマスクが米経済の捕獲に成功すれば、市場をゆがめるだけでは済まない。世界経済にもダメージを与えることになる。アメリカは、世界をクリーンな統治へ向かわせる警察官としての歴史的役割を放棄しただけでなく、豹変してマフィアのボスになりつつある。

ルワンダの目的は何か
―― コンゴ侵略とアフリカ秩序の崩壊

2025年5月号

ミケラ・ロング ジャーナリスト、作家

ルワンダとその支援を受けた反政府勢力M23が、コンゴ民主共和国(DRC)東部を短期間で制圧したことで、東アフリカの地域秩序は根底から揺るがされている。ルワンダ政府は、コンゴ東部はルワンダの「歴史的領土」の一部と公然と主張している。実際、この動きは、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻に似ている。だが、国際社会の対応は鈍く、国連も欧米諸国も、アフリカの主要な国際機関も有効な対策をとっていない。いまやルワンダは、アフリカ大湖地域の地図をどこまで塗り替えるのかを決めようとしている。コンゴ東部の「バルカン化」、「保護国化」、あるいは、「コンゴの政権転覆」など、さまざまシナリオが取り沙汰されている。

ナショナリズムと強権者の時代
―― 覆された国際システムとトランプの世界

2025年5月号

マイケル・キマージュ ウィルソン・センター ケナン・インスティチュート 所長

いまや世界のアジェンダを設定しているのは、自国の偉大さを強調するナショナリストの指導者たちだ。トランプは、プーチン、習近平、モディ、エルドアンと同じタイプの指導者だ。強権的なナショナリストを自任する彼らは、ルールに基づく国際システムや同盟関係、多国籍フォーラムなどほとんど気にしていない。当然、グローバル秩序に関するいつもの描写はもう役に立たない。国際システムは一極支配でも二極体制でも多極体制でもない。現在のような地政学的環境では、すでに曖昧化している「欧米」という概念はさらに後退していく。

中国とヨーロッパの地政学
―― 米欧対立を中国は生かせるか

2025年5月号

ジュード・ブランシェット ランド研究所 中国研究センター長

「トランプはプーチンとの関係改善に熱心で、アメリカの伝統的な同盟国に反感を抱き、貿易戦争が国内政治に及ぼす影響を軽視している」。北京は現状をこのようにみている。事実、米欧関係が大きな圧力にさらされているために、習近平は、ヨーロッパ各地に外交官を派遣して、中国を信頼できる代替パートナーとして売り込み、安定した経済協力の機会を提供できると強調している。実際、ウクライナの戦後開発を支援する上で、中国ほど有利な立場にある国はないだろう。各国がアメリカの後退の可能性に備えてリスクヘッジを試みるなか、北京は頼れるパートナーとして自らを位置づけたいと考えている。

トランプと競争的権威主義の台頭
―― 米民主主義は崩壊するのか

2025年4月号

スティーブン・レヴィツキー ハーバード大学 政治学教授
ルーカン・A・ウェイ トロント大学 政治学部特別教授

アメリカの司法省、連邦捜査局、内国歳入庁(IRS)などの主要政府機関や規制当局をトランプの忠誠派が率いるようになれば、政府はこれらの政府組織を政治的な兵器として利用できるようになる。ライバルを捜査と起訴の対象にし、市民社会を取り込み、同盟勢力を訴追から守れるからだ。こうして競争的権威主義が台頭する。政党は選挙で競い合うが、政府の権力乱用によって野党に不利なシステムが形作られていく。政治家、ビジネス、メディア、大学、市民団体も権威主義政権の大きな権限と圧力を恐れて、立場を見直して声を潜める。競争的権威主義の台頭は、アメリカだけでなく、世界の民主主義にとって重大で永続的な帰結をもたらすことになるだろう。

反欧米枢軸と中国の立場
―― 北京はロシア、北朝鮮をどうみているか

2025年4月号

セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 特別教授

中国は、ロシア、北朝鮮、イランとある種の「枢軸」を形成しているという考えに激しく抵抗している。平壌の金正恩政権は、北京のいら立ちの大きな原因だし、中ロは協力しているとしても、その関係は同盟ではなく、「無制限」のパートナーシップからもかけ離れている。要するに、中国は、信頼できないメンバーで構成される反欧米枢軸を率いてアメリカと対立することが正しいのか、確信が持てずにいる。これは、ワシントンが、封じ込めの準備をしつつも、新たな外交努力を通じて中国の意図を試すチャンスを手にしていることを意味する。ワシントンは中国に、ウクライナでの戦争を終わらせるためにロシアを交渉テーブルに着かせる直接的な役割を与えるべきではないか。

歴史のなかのトランプ
―― 繰り返される秩序との闘い

2025年2月号

マーガレット・マクミラン オックスフォード大学 名誉教授(国際史)

ある種の指導者は歴史の流れを変えられるという見方を受け入れるとしても、政治や社会が大きく変化するのは、制度が権威を失いつつあるときだ。事実、民主国家への信頼は失われつつある。そして、国際ルールを破って何の責任も問われない指導者がいれば、それに続く者がでてくる。1914年のように、過ちや誤解が対決へつながっていく危険は常に存在するが、いまやその危険はますます大きくなっているようだ。トランプ政権が孤立主義的政策をとり、NATOから脱退し、中国と対立し、世界の多くの国々と関税戦争に突入すれば、世界はどうなるだろうか。それによって、世界がより安全な環境を手にするとは思えない。

ロシアの軌道に組み込まれるジョージア
―― ハンガリー化するジョージア

2025年2月号

クリスチャン・カリル ジャーナリスト

12年前に政権党になって以降、「ジョージアの夢」は巧みに国を掌握してきた。かつて首相を務め、同党に大きな影響力をもつビジナ・イヴァニシヴィリは、官僚、司法、法執行部門の事実上すべての主要な役人を、段階的に党に忠実な支持者に置き換えていった。こうして、「ジョージアの夢」は、自分たちの条件で思うままに権力基盤を固め、ついには、欧米の影響力を遮断することを目的とする「外国の代理人」法を成立させ、不正な選挙を実施した。「ジョージアの夢」は、すでにビクトル・オルバン流の国家乗っ取りへ向けた重要な一歩を踏み出し、いまや欧米からロシアへと決定的に軸足を移そうとしている。

反欧米ブロックへの強硬策を
―― 中露分断策の不毛

2025年1月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学国際問題研究所 センターフェロー

中国、ロシア、イラン、北朝鮮という枢軸メンバー間の相互関係の深さを推定したり、彼らを引き離そうと努力したりするのではなく、ワシントンは、これらを独裁国家のブロックとして扱い、同盟諸国にも同様の対応をとるように働きかけるべきだ。中国を枢軸のリーダーとして扱い、ある枢軸メンバーが好ましくない行動をすれば、(中国を含む)他の枢軸メンバーにもペナルティを課すようにすべきだ。ロシアの戦争努力を支援する中国企業だけに制裁を科すのではなく、アメリカは中国という国を対象に経済制裁を実施する必要がある。そして、ロシアが交渉テーブルに着くまで、制裁は継続すると北京に伝える。もはや代替策は存在しない。

トランプはいかに世界を変化させるか
―― 高官人事と外交政策

2024年12月号

ピーター・D・フィーバー デューク大学 教授

トランプと側近チームは、高官任命では何よりも大統領への忠誠を重視することを明らかにしている。トランプへの忠誠を調べるもっとも簡単なテストは、「2020年大統領選の結果は盗まれたのか、あるいは、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件は反乱行為だったのか」を問うことかもしれない。次期副大統領となったJ・D・バンスが言うように、これらの問いに対してトランプが認める答えは一つしかない。このリトマス試験紙があれば、トランプは「チームの一員」だと考える人物だけを登用して、軍や情報機関の上層部を政治化できる。問題は、トランプのキャンペーンレトリックが、アメリカが直面する脅威を何ら理解していない、非現実的な大言壮語と薄っぺらな万能薬の類いで構成されていることだ。

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