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権威主義体制の台頭に関する論文

マドゥロ追放策のリスク
―― アメリカとベネズエラの未来

web exclusive

フィル・ガンソン 国際危機グループ(ICG) アンデス地域上級アナリスト

マドゥロ大統領の追放をめぐり、アメリカやベネズエラの反体制強硬派は軍事的圧力を強めている。だが、武力による体制変革はさらなる混乱や暴力を招き入れるリスクが高い。ベネズエラ人の圧倒的多数がマドゥロの退陣を望んでいるとしても、アメリカと反体制派は、国際的な支援を受けた包括的な交渉をマドゥロ政権と進めるべきだろう。ベネズエラ国内には政権崩壊に抵抗する武装集団が多数存在するし、軍の一部がさらに抑圧的な指導者を権力に据える危険もある。実際、暴力的な手段はさらなる混乱や市民への抑圧を招くリスクが高い。

新たなユーラシア秩序
―― 進化する中ロ連携と米同盟関係の再編

2025年12月号

ジュリアン・スミス 元NATO米大使
リンジー・フォード 前米国家安全保障会議 上級部長

中ロが秩序形成で連携し、ユーラシアでより統一された競争空間を作り出している。これに対し、アジア・ヨーロッパ諸国は連帯し、急速に相互関係を変化させている。こうした新しいネットワークは、ワシントンがそれにどう関わるかで、アメリカの利益にプラスにもマイナスにも作用する。だが、ワシントンは、アジアとヨーロッパの同盟諸国に(歩み寄って連携するのではなく)自分の地域に留まるようにと促している。現実には、アジアとヨーロッパの境界線は曖昧になりつつある。アメリカは同盟諸国が構築する新たなネットワークに抵抗するのではなく、それへの影響力を適切に行使すべきだろう。

停滞する秩序下の現実
―― 中国の衰退と覇権競争の終わり

2025年12月号

マイケル・ベックリー タフツ大学 准教授(政治学)

流れは成長から停滞へと変化している。脆弱な国家は債務と若年人口の急増に押し潰されつつある。困難な状況に直面する国は衰退を食い止めようと、軍事化と領土回復主義に血道をあげている。経済不安が過激主義を煽り、民主主義を蝕み、アメリカは単独行動主義をとっている。多国間機関は麻痺し、軍備管理レジームは崩壊しつつあり、経済ナショナリズムが台頭している。民主主義は内部から朽ち果て、秩序の擁護者であるべきアクターは狭い自己利益に埋没している。但し、この停滞する秩序では、台頭する国家、新興大国がいなくなる。これによって、覇権争いという破滅的なサイクルが阻止されるかもしれない。歴史は終わらないが、そのもっとも破滅的な章は幕を閉じるのかもしれない。

アメリカ後の自由主義秩序を守る
―― 民主諸国の協調と連帯

2025年10月号

フィリップス・P・オブライエン セント・アンドリューズ大学 教授(戦略研究)

多くの国は、トランプ政権に媚びへつらい、米大統領を過度に称賛する努力を重ねてきたが、トランプを懐柔する戦略は失敗する可能性が高い。そうであれば、民主主義と旧来のルールに基づく秩序にいまもコミットする諸国は、国際関係を再構築し、アメリカの気まぐれから自らを隔離し、この極めて不安定な時代にあっても自分たちの自由を広く守る努力をするのが理にかなっている。実際、トランプの勢力圏構想が実現すれば、アジア、ヨーロッパ、北米におけるワシントンの民主的同盟国がアメリカによって守られることはなくなるだろうし、民主諸国は、世界の他の国々を合わせたよりもはるかに多くの核兵器を保有する米中ロという三つの大国と対峙することになる。

大陸国家と海洋国家
―― アメリカの混乱と世界秩序

2025年10月号

S・C・M・ペイン 米海軍大学校 名誉教授(歴史、大戦略)

中国やロシアのような大陸覇権国は、国際システムを巨大な勢力圏に分割すべきだと考える。一方、海洋で守られ、侵略される危険が小さい海洋国家は、争うのではなく、富を蓄積することに専念する。領土ではなく富にパワーは根ざすとみているからだ。だが、現在のアメリカは、まるで大陸国家のように振る舞っている。あまりにも多くのアメリカ人が、海洋国家秩序の恩恵を当然視し、その欠点ばかりを指摘し、その過程で、地理的・歴史的な優位を無駄に浪費している。貿易障壁を築き、近隣諸国を脅し、国際機関を弱体化させるといった大陸国家のパラダイムに回帰すれば、アメリカは再起不能に陥るかもしれない。

トランプは皇帝なのか
―― 独裁を阻む抑制と均衡の再確立を

2025年8月号

エリザベス・N・サンダース コロンビア大学 政治学教授

米大統領は、これまでもまるで帝国の指導者のようだったが、本当に皇帝のように振る舞おうとした大統領は、少なくとも、2期目のドナルド・トランプまではいなかった。米同時多発テロ以降、米議会は外交領域における大統領権限の拡大を認め、それを取り戻そうとしなかった。最高裁も、有意義な抑制を大統領に課すことに乗り気ではなかった。こうして、トランプは、外交政策や国家安全保障にわずかにでも関連する案件なら、ほぼ思うままにできるようになった。世界各国に追加関税を課し、議会が定めた対外援助を骨抜きにし、同盟国をいじめ、独裁者に言い寄っている。あらゆる制約がなくなれば、個人独裁体制下の指導者は間違った軍事的冒険主義をとり、衝動的な決定を下し、自滅的な政策をとりやすくなる。

形骸化するアメリカの拡大抑止?
―― 中ロによる切り崩し策

2025年7月号

デイヴィッド・サントロ パシフィック・フォーラム会長

中国の指導者たちにとって、アメリカの核の傘による拡大抑止は防衛戦略ではない。北京は「中国の台頭を封じ込め、後退させようと、ワシントンは、オーストラリア、日本、韓国など、北京からみれば、中国の勢力圏にある国に拡大抑止を押しつけている」とみている。概念面から拡大抑止を批判するだけではない。北京は、アメリカの軍事的役割を低下させ、米同盟国に対して軍事的・経済的威嚇策をとり、対米抑止力を強化し、ロシアとの協調を模索している。アメリカと地域同盟諸国が安全保障協力を強化しない限り、米拡大抑止戦略は今後、致命的に損なわれていくだろう。

中国の未来を考える
―― 「権威主義的繁栄」の影響力

2025年7月号

ラナ・ミッター ハーバード大学ケネディスクール 米アジア関係チェア

習近平体制は、欧米と対立する一方で、ロシアを助け、国内では監視体制を強化し、少数民族を抑圧してきた。だが、現状から直線的にとらえて中国の将来を考えるのは、今も昔も間違っている。20年後に中国を担うのは、今よりも開放的な時代を青春期に経験している、現在40代の若いエリートたちだ。民主的でも、リベラルでもないかもしれないが、未来の中国はそれでも世界に「権威主義的繁栄」という政治・経済モデルを提供できる国に進化しているかもしれない。地政学的・経済的大国を目指し、その過程で、「中国の本質」を見失わないという、清朝期の二つの願いを実現することに北京は成功するのかもしれない。もちろん、それには条件がある。

新勢力圏の形成へ
―― 大国間競争から大国間共謀へ

2025年6月号

ステイシー・E・ゴダード ウェルズリー・カレッジ 政治学教授

中国やロシアと競争するのではなく、トランプ政権は中ロと協力することを望んでいる。トランプの世界観が大国間競争ではなく、「大国間共謀(great power collusion) 」、つまり、19世紀の「ヨーロッパ協調」に似ていることは、いまや明らかだろう。こうして、アメリカの外交路線は、ライバルとの競争から、温厚な同盟諸国をいたぶる路線へ変化した。他の大国から有利な譲歩を引き出すために、トランプがビスマルクのような外交の名手になる可能性もある。しかし、ナポレオン3世のように、よりしたたかなライバルに出し抜かれてしまうかもしれない。

ミャンマーを操る中国の二重戦略
―― 地域覇権を狙う北京の分断戦略

2025年6月号

イェ・ミョー・ヘイン 東南アジア平和研究所 上級フェロー

ミャンマーの安定回復と中国との友好関係の促進を強調しつつも、北京は、崩壊寸前の軍事政権を支えつつ、少数民族武装勢力を自国の影響下に取り込む一方で、欧米との結びつきが強いとみている民主派勢力を排除している。現実には、中国はミャンマーのカオスのなかにチャンスを見いだしている。崩れかけた軍事政権を支えることで影響力を強化し、武装抵抗勢力の連帯を切り崩して、その一部への影響力を拡大して欧米の影響力を抑え込んでいる。軍事政権による統治が続き、国内が分断されたままであれば、中国にとって、ミャンマーをより管理しやすい状態に保てるからだ。実際、ミャンマーを弱体化した状態にとどめることが、中国が絶対的な地域覇権を確立する前提条件なのだ。

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