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Vol.34 フクシマ後の日本経済とエネルギーを考えるに関する論文

3.11は日本の何を変え、何を変えなかったのか。高齢社会と社会保障の財源不足、債務、財政赤字という大きな問題はいまもそこに存在する。変化したのは、原発危機によってエネルギー供給の先行きが不透明化し、産業の空洞化が進み、観光産業の促進も専門職の外国人の招致も難しくなっていることだ。過去のやり方ではもはや未来は切り開けない。だからこそ、復興プロジェクトを新しい日本の将来に向けた土台を築くための触媒にしなければならない。電力不足を将来のクリーンエネルギー大国の布石にし、債務と赤字を削減するような経済成長路線へと向かわせるには、現状を的確に把握した上での大胆な戦略が必要になる。

クリーンエネルギーの不都合な真実
―― 補助金を脱した真のクリーンエネルギー革命に向けて

2011年7月号

デビッド・ビクター カリフォルニア大学教授
カッシア・ヤノセック タナ・エナジーキャピタルLLC プリンシパル

世界のクリーンエネルギー・プロジェクトへの投資の8分の7は、政府の補助金がなければ、在来エネルギーとは競合できない既存技術を対象としており、真の技術革新への投資は、全体からみれば、ほんの一部でしかない。問題は、政府によるクリーンエネルギー促進策が景気刺激策の一環として実施されてきたことだ。その結果、投資家は、在来型のエネルギー資源と競合できるようになるポテンシャルを秘めた技術革新レベルの高い技術ではなく、(補助金が期待でき)早く簡単に実施できる既存のプロジェクトへと資金をつぎ込んでしまった。クリーンエネルギー産業の先行きは憂うつと言わざるを得ない。地球温暖化を引き起こさずに大規模な電力を生産できるのは現状では原子力だけだ。貴重な公的資金を、バイオ燃料、あるいは、ソーラーエネルギーや風力エネルギーにつきまとう断続問題を克服できるエネルギー貯蔵技術を含む、電力生産領域における画期的な技術革新の実証実験と配備へとシフトさせる必要がある。

CFRアップデート
復興を越えた日本経済の再設計を

2011年5月号

ブライアン・P・クレイン 元米外交問題評議会国際関係フェロー
デビッド・S・アブラハム 米外交問題評議会国際関係フェロー

かなりの大きな余震が依然として続いているし、被災した数十万の人々が落ち着いた生活を取り戻すには数年の時間がかかるだろう。原発危機もまだ管理できるようになったとはいえない。だが、再建・復興も進められている。経済予測も、ゆっくりとだが地震前の数字へと戻りつつある。だが、必要なのは「復興・再建を越えた取り組み」であることを認識しなければならない。今回の危機を前に、政府は一刻も早く再建・復興を遂げ、かつてのような状態に被災地を戻すことを考えているかもしれない。だが、単に再建・復興を目指すのではなく、今回の危機を、日本経済を再設計する機会とすれば、今後の日本はより大きな繁栄を手にできるようになる。

フクシマ原発に壊滅的ダメージを与えた地震とツナミは、世界における原子力エネルギーへの関心の高まりに一気に冷水を浴びせかけた。相対的に生産コストは高いが、二酸化炭素をほとんど排出しない点が評価されてきた原子力による電力生産も、フクシマでの原発危機をきっかけに、安全基準や危機管理対策への再検証が進められ、原発推進計画そのものが見直されつつある。ドイツは、7基の(旧式)原子炉を閉鎖しただけでなく、2020年まで他の原子炉の使用期間を延長する計画のすべてを凍結した。イタリアも原子力開発のモラトリアムを延長し、他のEU諸国も原子力発電計画の見直しを行っている。専門家のなかには、「原子力が危険なテクノロジーであることが再認識された以上、いくらその安全性をエネルギー政策の会議で説いたところで、人々は納得しない」と明確に指摘する者もいる。たしかに、よりすぐれた安全機能や冷却装置を備えている新型の原子炉なら、大気への放射能拡散を引き起こした問題の一部を回避できるかもしれないが、どの程度の耐震機能を持っているかという点では疑問が残る。しかも、原子力は放射能の拡散リスクに加えて、核廃棄物、核兵器拡散のリスクも伴う。だが、地球温暖化に配慮する必要もあるし、新興国の電力需要の増大も考慮しなければならない。今後当面は、ジョン・ダッチが指摘するように化石燃料から再生可能エネルギーへのつなぎエネルギーとして、天然ガス、とくに液化天然ガスが注目されるようになるのかもしれない。

ワールド・エコノミック・アップデート
不透明感漂う日米欧経済

2011年5月号

●スピーカー
ピーター・R・フィッシャー
ブラックロック債券部門シニア・マネージング・ディレクター
デスモンド・ラックマン
アメリカンエンタープライズ研究所公共政策研究フェロー
ピーター・R・オルザック
外交問題評議会非常勤シニア・フェロー
●司会
セバスチャン・マラビー
米外交問題評議会・地政経済学研究センター所長

日米欧は非常に対応の困難な長期的財政問題を抱えている。政治状況ゆえにさらに厳しい状況になるまで対応策を決められずにいるのは、基本的にすべての先進諸国に共通する現象だ。(P・オルザック)

欧州で危機に直面している国々はいずれユーロから離脱し、債務不履行を宣言せざるを得なくなる。これには疑問を差し挟む余地がない。そうなるかどうかではなく、問題はいつそうなるかだ。緊急融資を利用して問題を先送りできるかもしれないが、問題を解決することにはならない。(D・ラックマン)

日本経済が脆弱であることをすでに認識している中央銀行が量的緩和を実施するのは適切な処置だが、経済再建は期待できない。経済成長を軌道にのせることにはならない。(P・フィッシャー)

9カ月後、日本経済は復活する
―― 再建コストで債券市場がパニックに陥ることはない

2011年4月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会地勢経済学センター所長

日本政府は復興・再建コストを負担しなければならず、これが、すでに先進国のなかでは最大の対GDP比債務を抱える日本経済に重くのしかかると懸念する専門家もいる。だが、冷静に考えるべきだ。復興・再建にどのくらいのコストがかかるだろうか。ざっくりとしたところで言えば、1000億ドル程度だろう。・・・たしかに、1000億ドルと言えば、かなりの金額だが、ほぼ10兆ドル規模の日本の債務総額からみれば、たいした数字ではない。債務総額が1%増えるだけだ。・・・・金融市場に流動性を提供する必要があるし、必要以上の円高には対抗策をとるべきだ。被災地域の再建のために、財政赤字をさらに大きくすることを躊躇すべきではない。いまは、慎重で保守的な路線ではなく、大胆な対策をとるべきタイミングだ。私は、日本政府は間違いなく大胆な措置をとると信じている。

第3の石油ショックか
―― 中東の政治的混乱と原油価格高騰

2011年4月号

エドワード・モース 元国務副次官補(国際エネルギー担当)

「石油の呪縛」として知られる社会・政治構造が引き起こす産油国の絶望的な経済・社会的な停滞が、現在中東各地で起きている政治的混乱の背景にある。人々は、高い失業率、極端な所得格差、(食糧価格など)高い生活コスト、そして老人支配政治と泥棒政治などに対して怒りを表明している。つまり、産油国が「石油の呪縛」を断ち切るために、経済を多角化していかない限り、政治的争乱の原因である社会不満は解消しない。さらに、産油国国内における石油の消費も増大している。その結果、中東石油に依存する消費国は厄介な先行き見込みに直面している。現在の政治的混乱による供給の乱れだけでなく、産油国の国内消費の増大による供給の乱れを織り込まざるを得なくなっている。2011年は1971年同様に、石油をめぐる地政学の分水嶺の年になるかもしれない。

「天然ガス革命」の到来
――天然ガス・グローバル市場の誕生は近い

2011年2月号

ジョン・ダッチ 元米エネルギー省次官

水平抗井や水圧破砕という二つの技術進化によって、これまで開発が難しかった世界のシェールガス資源の開発・生産効率が劇的に改善し、その生産コストも大きく低下している。シェールガスという安価な非在来型天然ガス資源の開発が急ピッチで進められているのは、こうした理由からだ。しかも、シェールガス資源のような非在来型天然ガスの生産が強化される一方で、地域間を結ぶパイプラインが整備され、天然ガスの液化施設の建設も進められている。必然的に、天然ガス価格を石油価格に連動させた、供給側に有利なこれまでの契約は次第に姿を消していくだろう。いずれ、より透明性の高い天然ガスの世界市場が誕生し、最初に電力生産部門で、次に、産業・交通部門で天然ガスが石油に取って代わっていくことになるだろう。この流れを「天然ガス革命」と呼んでも、過度に事実を誇張することにはならないはずだ。

CFRミーティング
世界エネルギー・アウトルック ――
ゲームチェンジャーとしての電気自動車と二酸化炭素回収・貯蔵技術

2011年1月号

スピーカー
ファティ・ビロル 国際エネルギー機関・経済分析部 チーフエコノミスト
司会
ピーター・ゴールドマーク 環境防衛ファンド ディレクター

原油価格は今後も高いレベルを維持し、一方、天然ガスの価格は供給過剰で今後も安値が続く。天然ガスは環境面でも悪い選択肢ではなく、逆に再生可能エネルギーの開発にはマイナスに作用している部分がある。・・・既存のエネルギーに比べてコストが高いために、クリーンテクノロジーは市場に浸透しないという問題を抱えている。鍵を握るのは中国だ。中国が、クリーンテクノロジーを大々的に市場に導入すれば、コストは引き下げられ、これは世界のすべてにとっての利益になる。だがもう一つの側面もある。電気自動車を例にとると、中国は自動車メーカー、部品メーカーその他すべてをひとまとめにして、資金と補助金を与えるという戦略をとっている。つまり、今後20~25年もすれば、中国が電気自動車産業の覇者になっていてもおかしくはない。・・・いずれにしても、エネルギー問題、地球環境、石油市場についてわれわれが持続不可能な未来へと向かっているという基本的な流れに変化はみられない。(F・ビロル)

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