戦争とストーリーの力
―― ホメロスとヘロドトス
2025年12月号
ストーリーはいまや社会的、政治的、歴史的な真実を広める最大の手段となり、合理的な議論をしのぐようになった。文学理論家のピーター・ブルックスが指摘するように、最高のストーリーは、神話的な地位を獲得し、その時点で、「それがフィクションであることは忘れられ、それが本当に世界を説明しているとみなされる」。特に戦争のストーリーがもてはやされるのは、人間にとって、自らの内面に目を向けるよりも敵と対比して自らを定義するほうがずっと簡単だからだ。競合するストーリーが、人間や国家を戦争に導くこともある。ひとたび大きな紛争が起きると、参加者も傍観者も、暴力のうねりと自分の関係を理解しようと、ますます多くのストーリーを受け入れるようになる。
