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に関する論文

国際法と南シナ海の騒乱
―― ワシントンが北京の穏健派を支えるには

2016年8月号

アリ・ウェイン  アトランティックカウンシル  非常勤フェロー

「中国の(南シナ海における)歴史的主張には法的根拠がない」とした国際仲裁裁判所の判断に北京が配慮する気配はなく、それが伴う国際的立場の失墜さえ気にしていないようだ。これは、一つには「中国はルールを踏み外している」という批判の法的根拠である国連海洋法条約(UNCLOS)にアメリカが参加していないことを北京が理解しているからだ。しかも、「これまで国連海洋法をめぐる仲裁裁判所の判断に従った国連安保理の常任理事国が存在しない」のも事実だ。但し、北京の穏健派は、九段線を今後も「境界線」とみなし続ければ、「アメリカ、そして殆どの東南アジア諸国を敵に回すことになる」と事態を懸念している。

トルコで何が起きているのか
―― 宗教化する政治と過激化する社会

2016年8月号

ソーナー・カギャプタイ ワシントン近東政策研究所  シニアフェロー

トルコ共和国の初代大統領、ムスタファ・ケマル・アタチュルクは「宗教が政治に入り込むのを阻止する堅固な防波堤を築き、トルコを西洋の国として定義した」。これに対してエルドアンは保守的イスラム主義をトルコの政治と教育システム、そして外交政策に反映させようとしている。市民が信仰を個人の生活レベルに留めることを求めたアタチュルクは、過度に保守的な宗教指導者を社会から排除したが、いまや流れは覆され、エルドアンは宗教保守の立場を共有しない人物を二流市民とみなしている。ジハーディストがシリアでの活動のためにトルコを拠点として利用し、イスラム国が台頭するなかで、このような政策がとられたために、いまやトルコ社会は過激化している。イスラム国の脅威が高まるなか、国家と社会にとって痛手なのは、クーデター未遂事件によって、かつてはトルコでもっとも信頼され、結束を誇った軍に対する政府と社会の信頼が今後失墜していくと考えられることだ。

逆風にさらされる民主主義
―― 内向きのアメリカと衰退する世界の民主主義

2016年8月号

ラリー・ダイアモンド  スタンフォード大学 フーバー研究所 シニアフェロー

「人権を重視する民主国家が自国の市民に暴力的な行動をとるリスクは低く、しかも、民主国家同士は戦争をしない」。当然、アメリカが世界で民主化促進策をとる価値は十分にあるが、「国際問題よりも、むしろ国内問題に専念すべきだ」と考える内向きの社会圧力という逆風にワシントンはさらされている。しかも、アメリカの民主主義が世界であこがれや模倣の対象とされることもなくなった。米大統領選挙からも明らかなように、アメリカ市民は大きな疎外感を抱き、現状に怒りを募らせ、一方ワシントンは現状にうまく対処できずにいる。法案はなかなか成立せず、超党派外交など望みようもなく、議会で予算案が紛糾し、定期的に政府機関が閉鎖の危機に追い込まれている。だがこの環境でもアメリカの民主主義への信頼を回復し、民主化促進策をとる余地は残されている。・・・

人工知能と「雇用なき経済」の時代
―― 人間が働くことの価値を守るには

2016年8月号

アンドリュー・マカフィー マサチューセッツ工科大学 首席リサーチサイエンティスト
エリック・ブリュニョルフソン マサチューセッツ工科大学 教授

さまざまな事例を検証し、相関パターンを突き止め、それを新しい事例に適用することで、コンピュータはさまざまな領域で人間と同じか、人間を超えたパフォーマンスを示すようになった。道路標識を認識し、人間の演説を理解し、クレジット詐欺を見破ることもできる。すでにカスタマーサービスから、医療診断までの「パターンをマッチさせるタスク」は次第に機械が行うようになりつつあり、人工知能の誕生で世界は雇用なき経済へと向かいつつある。今後時給20ドル未満の雇用の83%がオートメーション化されるとみる予測もある。労働市場は大きく変化していく。新しい技術時代の恩恵をうまく摘み取るだけでなく、取り残される人々を保護するための救済策が必要になる。間違った政策をとれば、世界の多くの人を経済的に路頭に迷わせ、機械との闘いに敗れた人を放置することになる。

資本主義と民主主義の緊張と妥協が相互に作用することで、これまで政治と経済のバランスが形作られてきた。民主体制のなかで、労働保護法や金融規制の導入、社会保障制度の拡大が実現することで、市場の猛威は緩和されてきた。こうして労働者は労働搾取を試みる資本家を抑え込み、企業は労働者の生産性を高めるための投資を重視するようになった。これが戦後における成長のストーリーだった。しかし「いまや政府は戦後の税金を前提とする国家から、債務を前提とする国家へと変貌している」。この変化は非常に大きな政治的帰結を伴った。政府債務の増大によって、国際資本が、各国の市民の望みを潰してでも、自分たちの意向を各国政府に強要する影響力をもつようになったからだ。格差が拡大し、賃金が停滞する一方で、政府は、資金力豊かな金融機関が問題の兆候を示しただけで救済の対象にするようになった。こうして市民たちは、いわゆる調整コストを運命として受け入れるのを次第に嫌がるようになった。・・・

エルドアンの予言
―― 軍事クーデターの政治的意味合い

2016年8月号

マイケル・J・コプロー イスラエル政策フォーラム 政策ディレクター

エルドアンが軍の影響力から逃れられると考えたことはなく、軍事クーデターが起きる危険を常に意識してきた。こうして彼はトルコ軍、ギュレン運動、ゲジパークにおける市民の抗議行動と、それが何であれ、あらゆる政府に対する挑戦を策略・陰謀とみなすようになった。もちろん、軍のクーデターが成功していても、この国の民主主義を支えたはずはない。最善のシナリオをたどったとしても、現在とは違う、権威主義体制を出現させていただけだろうし、悪くすると、内戦に陥っていた危険もある。だからといって、クーデターの失敗を民主主義の勝利とみなすのも無理がある。エルドアンは今回のクーデター未遂事件を根拠に自分の見方の正しさを強調し、大統領権限の強化と反エルドアン派の弾圧を含む、望むものを手に入れるために最大限利用していくだろう。

EUの存続を左右するイギリスの今後
―― EU離脱の余波を考える

2016年8月号

ジョン・マコーミック インディアナ大学教授(政治学)

キャメロンが国民投票の実施を求めた意図は、保守党内部での政治抗争を終わらせ、ナショナリスト政党であるイギリス独立党の台頭を抑え込むことにあった。国民投票を通じてイギリスとEUの関係をどのように改革していくかを有権者に描かせることもその狙いだった。しかしその結果は、キャメロンだけでなく、イギリスのEU懐疑論者たちが想定した以上のものになった。だが国民投票は政治的助言であり、イギリス議会が離脱を法制化しない限り、離脱は現実には起こりえない。たしかに、今回の国民投票がヨーロッパプロジェクトを解体へ向かわせる一連の動きを誘発する恐れもある。だが一方で、ブレグジットの政治・経済・社会コストがイギリスにとって非常に大きなものになり、他のメンバー国がEUからの離脱を問う国民投票の実施を躊躇うようになる可能性もある。

アメリカはグローバルな軍事関与を控えよ
―― オフショアバランシングで米軍の撤退を

2016年7月号

ジョン・ミアシャイマー/シカゴ大学教授(政治学)
スティーブン・ウォルト/ハーバード大学ケネディスクール教授(国際政治)

イラク、アフガニスタン戦争など、冷戦後のグローバルエンゲージメント戦略が米外交を破綻させたことが誰の目にも明らかである以上、いまやアメリカは「リベラルな覇権」戦略から、オフショアバランシング戦略へのシフトを試みるべきだろう。オフショアバランシング戦略では、アメリカの血と財産を投入しても守る価値のある地域はヨーロッパ、北東アジア、そしてペルシャ湾岸地域に限定され、その戦略目的はこれらの地域で地域覇権国が出現するのを阻止することにある。さらに、その試みの矢面にアメリカが立つのではなく、覇権国の出現を阻止することに大きなインセンティブをもつ地域諸国に防衛上の重責を担わせることを特徴とする。ヨーロッパにも、ペルシャ湾岸地域にも潜在的覇権国が登場するとは考えにくく、米軍を駐留させ続ける合理性はない。一方、北東アジアについては、地域諸国の試みをうまく調整し、背後から支える必要がある。・・・・

人がモノを買い、消費する前提は何か
―― 消費者の富と国家の富

2016年7月号

ビクトリア・デ・グラツィア コロンビア大学教授(歴史学)

20世紀初頭のアメリカの物質的豊かさと個人消費が『消費社会』という概念と結び付けて考えられがちだが、実際には「物質的生活」が初めて世界に登場したのは、15世紀ルネッサンス期のイタリアにおいてだった。人間の正常な活動の一部として、消費文化は世界各地で広がりをみせた。これまで、消費活動は欧米的なものと言われ、最近の中国の新興富裕層と中間層による派手な消費は、中国社会になじみのない新しい現象だと言われてきた。だがこれは間違っている。「万が一に備えて貯蓄する必要性が減り、消費傾向が高まる」ことで促される消費活動は公共政策に影響される経済的な現象であり、政治的現象でもある。実際、大恐慌後、国の繁栄を取り戻すには消費を喚起する必要があることが認識されるようになると、消費者は公共政策と法的保護の対象にされるようになった。要するに、国家の富は消費者の富によって支えられている。・・・

スリランカがはまった中国の罠
―― 中国による融資トラップとは

2016年7月号

ジェフ・M・スミス 米外交政策評議会 アジア安全保障プログラム ディレクター

中国の対スリランカ投資プロジェクトは、アジア全域へ中国の貿易ルートを拡大・確保しようとする北京の一帯一路戦略の一環として進められている。北京にとって、スリランカの最大の魅力はやはりその港だ。スリランカの港は中国と中東・アフリカ地域のエネルギー供給国を結ぶ貿易シーレーンに位置している。だが一連の投資プロジェクトには中国の戦略的思惑が見え隠れしている。実際、スリランカの対中債務が増えていけば、中国は債務の一部を株式に転換して重要プロジェクトを部分的に所有することもでき、この場合、中国はインド洋における新たな戦略拠点を確保できる。中国から距離をとろうとする現在のスリランカ政府も、対中債務トラップにはまり、身動きができない状況に陥っている。

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