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アベノミクス、最後の賭
―― 消費増税の先送りと財政出動

トバイアス・ハリス / 米笹川平和財団フェロー(経済、貿易、ビジネス担当)

Abenomics' Last Shot

Tobias Harris/米笹川平和財団フェロー(経済、貿易、ビジネス担当)

web掲載論文

世論調査で市民が増税時期の先送りを支持していることに加えて、先行き不透明なグローバル経済、円高、そして最近の熊本での地震災害は、安倍首相が(増税の先送りと財政出動に向けて)財政タカ派の反対を克服する助けになるだろう。これらの環境からみれば、首相が増税を先送りし、新たに財政出動を実施することへの支持を期待できるだろう。だがそれは、実際に経済を長期的に助け、短期的にも景気を刺激する効果のある公共事業投資を増やす、正しい財政出動でなければならない。そうできなければ債務を増やすだけに終わる。専門家のなかには、すでに安倍政権の経済プログラムは失敗していると指摘する者もいる。実際、アベノミクスにさらにてこ入れして、それでも日本経済を再生できなければ、この3年にわたって比較的安定していた安倍首相への支持は次第に低下していくことになるだろう。

  • 経済対策と政治公約
  • 財政出動への道
  • アベノミクスの命運

<経済対策と政治公約>

安倍首相は大きな経済課題に直面している。賃金の上昇は思うに任せず、消費マインドは冷え込んでいる。株式市場は依然として混乱し、しかも、円の対ドルレートはこの18カ月間でもっとも高くなり、企業収益の先行きにも暗雲が立ちこめている。これらの全ては、持続的な成長のための政策プログラムとして首相が掲げたアベノミクスがいまや大きな危機にさらされていることを意味する。

安倍首相は、アベノミクスを救うためにUターンをして、増税を通じた財政健全化路線を(一時的に)棚上げにして、短期的な経済成長を刺激するための財政出動の実施を考えているようだ。具体的には、10兆円規模の景気刺激策をとり、専門家の多くが財政の持続可能性を高めるには不可欠とみなす2%の消費増税の実施を先送りするつもりのようだ。

だがこの路線をとれば、安倍政権は「2020年までに日本のプライマリーバランスを均衡させる」という約束を反故にせざるを得なくなる。だが、それでも財政出動を実施する以外に殆ど選択肢がないのも事実だ。

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