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ゾンビ化したアベノミクス

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミック・レポート エディター

Zombie Abenomics

Richard Katz アメリカの経済ジャーナリストで、日米関係、日本経済に関する多くの著作をもつ。オリエンタル・エコノミスト・レポート誌代表。東洋経済誌に定期的にコラムを執筆している。

2015年1月号掲載論文

安倍政権は、輸出促進策の一環として(意図的かどうかはともかく)円安を誘導し、円の価値は30%低下した。だが競争力を強化するための構造改革を先送りしているために、円安効果はほとんどなく、国内経済の成長は停滞したままだ。むしろ、円安による物価の上昇で、勤労者世帯の実質可処分所得は1年前と比べて6%低下した。消費支出が停滞し、経済がリセッションに陥ったのはこのためだ。安倍政権が3本の矢を本当に利用するつもりなら、景気刺激策と金融緩和を、構造改革という困難で時間のかかる手術をするための麻酔薬として利用したはずだ。だが、日本政府は長期にわたって景気刺激策と金融政策を、痛みを感じないようにする麻薬として用いただけで、手術(構造改革)をしなかった。・・・

  • なぜリセッションに陥ったか
  • 一本の矢しかないアベノミクス
  • なぜ特殊利益を守り、改革を先送りするのか

<なぜリセッションに陥ったか>

安倍晋三首相の日本経済再生計画は思うように進んでいない。2014年4月に消費税を引き上げて以降、日本経済は六カ月にわたってリセッションに陥り、首相は2015年10月に予定されていた二度目の引き上げを2017年4月に先送りすると表明した。11月18日の記者会見で、増税時期のさらなる先送りはしないと表明した安倍首相は、国会を解散し、アベノミクスへの信任を問う総選挙を行うと表明した。

消費増税のタイミングを先送りする必要があったのは明らかだろう。4月に消費税を引き上げる前、財務省と日銀は安倍首相に消費税引き上げのマイナスの作用は穏やかで短期間で終わると約束した。だが、これは完全な見込み違いだった。同様に、2015年10月の消費税引き上げを先送りすれば、株式市場はクラッシュし、国債金利が上昇し始めるとした財務省と日銀の警告も間違っていた。実際には、二度目の消費増税のタイミングが先送りされる観測が流れると、株価は7%上昇したし、10年満期だけでなく、30年、40年満期国債についても最低の金利レベルを推移している。

むしろ、考えるべきは次のようなポイントだろう。・・・

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