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米国に関する論文

アメリカは神の国か?
―― キリスト教福音派台頭の政治・
外交的意味合い

2006年10月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー

アメリカのプロテスタンティズム内の保守派の信徒が増え、20世紀半ば当時は、アメリカの主流派だったリベラル派プロテスタントの信徒が減少している。この宗教勢力地図の変化は、すでにアメリカの外交政策を大きく変化させている。第二次世界大戦、そして冷戦期におけるアメリカの政治を支配していたのは、教義よりも道徳律を重視するリベラルなプロテスタンティズムの思想だった。だが、いまやキリスト教リベラル派は、かつての影響力を失い、リベラル派よりも教義を重視し、例えば、イスラエルを擁護することで、自分たちが神によって支えられると感じ、そうすることで世界を敵に回してもかまわないと考える福音派が台頭している。福音派の台頭で、アメリカの政治・外交路線はどのように変わるのか。それは政策の幅を広げることになるのか、それとも……。

米印関係は反中同盟の布石なのか
――台頭するインドとバランス・オブ・パワー

2006年9月号

C・ラジャ・モハン/インド国家安全保障諮問委員会メンバー

インドは、米中間の中立を維持しようとするだろうか、それとも現在のインドの大戦略に即してアメリカの側につくだろうか。米印原子力合意は、この設問への最終的な答えを左右しようとするアメリカの試みだった。インドはアジアやインド洋地域で、中国の2番手に甘んじることだけは避けたいと考えているし、むしろ遠く離れた超大国との協調に安定的な利益を見いだしている。ワシントンとの安全保障関係の強化を望むのは、こうした構造的な理由がある。だが、利益を共有しているからといって、それだけで同盟関係が成立するわけではない。両国間のパワーに格差があり、政治的協調の歴史がなく、より踏み込んだ米印の協調に抵抗する官僚が両国に存在する以上、米印の戦略的な協調関係の進化のペースと、規模の広がりは段階的なものになる。

インドはアメリカの戦略的パートナーだ
――米印核合意の本当の目的

2006年8月号

アシュトン・B・カーター/ハーバード大学ケネディ・スクール教授(科学、国際関係)

ワシントンが核の平和利用をめぐってインドに譲歩したのは、別の領域でもっと多くのものを勝ち取るためだった。イランの脅威、政情不安定なパキスタン、そしてとかく行動が読めない中国などの国々が将来引き起こすであろう課題に対処していくうえで、戦略的な要地に位置し、めざましい経済成長を遂げる民主国家インドの支援と協力を確保することをワシントンは重視した。核保有国としての地位を認めることと引き換えに、インドを戦略的パートナーとして取り込むという取引は、アメリカにとって妥当な決断だった。この合意が成功するかどうかは、ひとえにインドの将来の行動にかかっている。

ブッシュ外交革命の終わり
――単独行動主義への回帰はあり得ないのか

2006年7月号

フィリップ・H・ゴードン/ブルッキングス研究所外交政策担当シニア・フェロー

当初、現実主義路線を重視していたブッシュ政権が、イラク侵攻、そして、世界での圧政を終わらせると外交革命路線へと踏み出していったのは、9・11を前に「世界を変えるために何か手を打たなくては」という危機感を募らせるとともに、「世界を変えることができるかつてないパワーを手にしている」と確信したからだった。そこでは、同盟国を説得するのではなく、勝利を通じて支持を勝ち取ることこそリーダーシップの本質と考えられた。だがその後、アメリカの経済資源は枯渇し、外国、国内での政治的支持が低下するなか、すでにブッシュ政権は現実主義路線へと回帰している。だが、ブッシュ政権が再度路線を変える危険は十分ある。民主党や外交専門家が何を言おうとも、「アメリカの決意、楽観主義、そしてパワーが最終的には勝利を収める」とするレーガン政権時代以来の外交理念をいまもブッシュ政権の高官は捨ててはいないからだ。

核の優位を確立したアメリカ
―― 核抑止時代の終わりか

2006年6月号

ケイル・A・リーバー ノー トルダム大学政治学助教授、 ダリル・G・プレス ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーショ ンでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

核の優位を確立したアメリカ
――核抑止時代の終わりか

2006年6月号

ケイル・A・リーバー/ノートルダム大学政治学助教授
ダリル・G・プレス/ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーションでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

対ロシア路線を見直し始めたブッシュ政権

2006年6月

アンドリュー・クーチンス/カーネギー国際平和財団・ロシア・ユーラシア研究ディレクター

現在のクレムリンは、1970年代初頭にソビエトがアメリカとの核パリティーを達成して核の超大国となって以降、最も自信を深めている。「石油高騰がロシア経済に大きくプラスに作用しているのは間違いなく、これが米ロ関係のダイナミクスを変化させている」とみるアンドリュー・クーチンスは、ロシアの権威主義路線、対外干渉路線を前に、ブッシュ政権は対ロシア関係の見直しに入っており、最近「チェイニー副大統領が、ロシアは民主主義から後退しており、エネルギー供給を外交戦略の道具としていると批判したことは、ブッシュ政権の対ロシア路線見直しの一環とみてよい」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

アメリカの家計貯蓄増大とグローバル経済
――ドル価値は低下し、各国の対米輸出は低下する

2006年6月号

マーチン・フェルドシュタイン ハーバード大学経済学教授

これまで世界各国の生産増大と雇用を支えてきたアメリカの旺盛な消費にもついに陰りが見え始めてきた。今後アメリカの消費は衰え、家計貯蓄が増えていく。アメリカにとって貯蓄増大は、長期的には外資への依存率を引き下げ、米企業の設備投資、生産性を向上させ、将来の生活レベルを引き上げるような構造的投資が進むことを意味する。しかし一方で、世界経済は大きな課題を抱え込むことになる。高い貯蓄率は実質金利を引き下げ、ドル価値は低下して、アメリカの輸出競争力は高くなる。この現象は、アメリカの輸出が増大し、輸入が減って経常赤字の対GDP比バランスが回復され、完全雇用が実現するまで続く。他の諸国にしてみれば、それは輸出の低下とアメリカからの輸入増大を招くことになる。重要なのは、諸外国が、生産と雇用を維持できるように内需拡大策を準備しておくことだ。

主要国の指導者はG8サミットに参加するために、7月にサンクトペテルブルクに集う。G8の閣僚レベル会合はすでに今年に入って数回実施されているが、主要国の指導者が集う年次サミットはこのフォーラムのハイライトだ。今年は議長国としてロシアがはじめてG8のホスト国になる。しかし、民主化からの後退をみせ、権威主義路線を強めるロシアのメンバーシップを疑問視する声が各方面から挙がっている。米議会ではサミットのボイコットを求める動きもある。また、中国とインドを除外したG8では、もはや現在の世界の現実をうまく反映できないし、すでにG8は時代遅れの存在で陳腐化しているという見方もある。エネルギー、教育、感染症などが今回のアジェンダとしてすでに特定されているが、真のアジェンダは、ロシアの政治路線とG8の存在理由そのものにあるとみる専門家もいる。

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