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米国に関する論文

ジョン・マケイン上院議員(共和党、アリゾナ州選出)は、これまでの選挙キャンペーンで「自分は外交領域での多種多彩な経験を持っている」と強くアピールしてきた。彼は、イラク増派策を強く支持し、議会共和党の指導者、ブッシュ政権の高官同様に、イラクでの戦争を、アメリカの安全を脅かすイスラム過激派との対テロ戦争の一環とみなしている。
 一方でマケインは、地球温暖化対策、核軍縮、移民対策、拷問と描写されることもある(テロ容疑者への)尋問スタイルなどをめぐっては、共和党の主流派とははっきりと異なる立場を示している。
 マケインの外交アドバイザーには多様な考えの持ち主が多く、大枠でとらえても、そこには「リアリスト」対「ネオコンサーバティブ、強硬派」という図式がみてとれる。すでにこうした構図のなかでアドバイザー集団間の影響力をめぐる派閥抗争が起きていると伝える報道もある。だが、「そのようなとらえ方では彼の顧問たちの多様な思想の詳細を把握できないし、マケイン自身の外交知識を過小評価することになる」と考える専門家もいる。
 現在のところ、共和党の指導者トレント・ロット、ボブ・ドールにも仕えた経験を持つ元議会スタッフ、ランディ・シューヌマンが外交政策を、元議会予算局長のダグラス・ホルツイーキンが経済政策を取り仕切っている。
 マケインがアドバイスを得ている専門家には、いわゆるリアリストとして知られるヘンリー・キッシンジャー、リチャード・アーミテージ、一方では、ネオコンサーバティブの論客であるウィリアム・クリストル、ロバート・ケーガンなども含まれている。
 選挙キャンペーンにおいては、ケーガンを始め、元国務省のリチャード・S・ウィリアムソン、国防・安全保障問題の専門家ピーター・W・ロドマン、そして、国家安全保障とエネルギー問題のアドバイスをしている元中央情報局(CIA)長官のR・ジェームズ・ウールジーが主要な外交顧問とみなされている。
 メディアは顧問集団同士が影響力を競い合っていると報道している。ニューヨーク・タイムズ紙は2008年4月に、マケインの顧問を務めるリアリスト集団は、共和党保守派、あるいは、ネオコンサーバティブの影響力が高まりをみせていることに懸念を強めていると伝えたが、そうした対立は誇張されているとみる専門家もいる。

石油の富と呪縛
 ――なぜ資源保有国は貧困から抜け出せないのか

2008年5月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学政治学部准教授

途上世界の資源保有国のほとんどは貧しく、非民主的だし、まともな統治体制を持っていない。そこに石油資源からの富が流れ込めば、往々にして紛争が誘発されるか、すでに起きている紛争を長期化させ、資源がもたらす富が建設的投資にまわされることはなく、結果的に貧困が続く。
 史上例のない原油価格の高騰は、棚ぼたの経済利益を資源保有国にもたらし、これが逆に紛争を助長してしまう危険がある。必要なのは、こうした資源国に輸出の対価として政治腐敗と紛争を助長するキャッシュを与えるのではなく、インフラ整備や社会サービスなどを提供し、成長の基盤を整えることではないか。

CFRミーティング
ワールド・エコノミック・アップデート
――「サブプライム後」のアメリカ経済、世界経済を分析する

2008年5月号

スピーカー
ジョイス・チャン  JPモルガン・チェース クライアントビジネス担当マネージング・ディレクター
イーサン・ハリス   リーマン・ブラザーズ アメリカ経済担当エコノミスト兼マネージング・ディレクター
ヌリエル・ルービニ  ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール教授
司会
ダニエル・K・タルーロ

まず金融部門が実体経済に影響を及ぼし、今度は実体経済の収縮が金融部門に悪影響を及ぼすという悪循環が今後始まることになる。(ヌリエル・ルービニ)

 ポイントは、さらに深刻な事態になれば、政府が大胆に動くと考えられることだ。この点が過小評価されている。(イーサン・ハリス)

 私はデカップリング論を支持しない。むしろ、「グローバル経済は一つのエンジンで刺激されているが、新興市場が世界経済に占めるシェアと役割も拡大している」と考えるべきだ。……大きな特徴は、新興市場経済が成長した結果、さまざまな形で経済的クッションが誕生していることだ。(ジョイス・チャン)

アメリカの相対的衰退と無極秩序の到来
――アメリカ後の時代を考える

2008年5月号

リチャード・N・ハース 米外交問題評議会会長

現在の国際システムの基本的特徴は、国がパワーを独占する時代が終わり、特定の領域における優位を失いつつあることだ。国家は、上からは地域機構、グローバル機構のルールによって縛られ、下からは武装集団の挑戦を受け、さらには、非政府組織(NGO)や企業の活動によって脇を脅かされている。こうしてアメリカの一極支配体制は終わり、無極秩序の時代に世界は足を踏み入れつつある。そこでは、相手が同盟国なのか、敵なのかを見分けるのも難しくなる。特定の問題については協力しても、他の問題については反発し合う。協調で無極化という現象を覆せるわけではないが、それでも、是々非々の協調は状況を管理する助けになるし、国際システムがこれ以上悪化したり、解体したりしていくリスクを抑え込むことができる。

CFRインタビュー
アジア太平洋諸国は次期米大統領に
何を期待しているか

2008年4月号

アラン・ギンジェル  ローウィー国際政策研究所所長

「アジア・太平洋地域は、世界的にみても、グローバル化、自由貿易の価値と意志をもっとも切実に感じている地域であり、アメリカがしだいに保護主義へと傾斜しつつあるかに見えることをわれわれは懸念している。健全で開放的なグローバル貿易システムは、アメリカの支持がなければ、その存在が危うくなる」。豪ローウィー国際政策研究所所長のアラン・ギンジェルは、民主党の大統領候補たちの保護主義的な貿易レトリックにこう懸念を表明した。
 少年期をインドネシアで過ごしたオバマであれ、ベトナム戦争期に捕虜として北ベトナムに抑留されていたマケインであれ、東南アジアを理解する人物が、米大統領になるとすれば画期的なことだ、と東南アジアが米大統領選挙に大きな関心を寄せていると指摘した同氏は、それでも、21世紀の秩序を形作る非常に重要な関係はもっと北の中国とアメリカの関係になるとコメントしている。
  聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
ロシアは欧米との関係改善を模索する

2008年4月号

アンドレイ・A・ピオントコフスキー (モスクワ)戦略研究センター所長

「メドベージェフとプーチンが対立していくかどうかはともかく、いずれ、メドベージェフとプーチンに仕える官僚たちが対立しだすのは避けられない」
 「二つのパワーセンターを抱え、ロシアはかつて経験したことのない海域へと入りつつある」と指摘するモスクワの戦略研究センター所長、アンドレイ・ピオントコフスキーは、一方で、欧米との関係は改善していくだろうと今後を予測する。そう考えるのは、メドベージェフが権力者になったからではなく、政治的必要性としての欧米との敵対路線、戦略的必要性としての欧米との協調路線が作り出すサイクルのなかで、対立局面が終わりつつあるからだと同氏は語った。
  聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティニグ・エディター)。

CFRインタビュー
分裂する中国社会と
ナショナリズムの行方
――チベット問題は氷山の一角にすぎない

2008年4月号

エドワード・フリードマン  ウィスコンシン大学政治学教授

経済開放政策が中国社会を揺るがしている。現状の開放策を維持するか、それとも中国らしさを支える伝統的な価値へと回帰するかをめぐって、地域も軍もナショナリストたちさえも内に分裂を抱えている。
 改革開放路線を導入した鄧小平は、当初から「反帝国主義スローガン」に代わる国の統合と連帯を図るツールが必要なことを理解していた。経済開放策を導入しようとしているのに、「反帝国主義スローガンではなじみが悪い。そこで、(国を束ねるツールとして)誕生したのがナショナリズム路線だった」。だが、あまりにナショナリズムを多用すれば、近隣諸国の多くをアメリカ側へと追いやってしまうことに気づいた胡錦涛は、一転、近隣諸国への柔軟外交に転じた。
 そしていまやナショナリストたちは、アメリカとの良好な関係を可能な限り維持するか、それとも、ヨーロッパや東南アジアとの貿易と投資の流れをもっと強化し、アメリカへの依存状況を軽くするかで割れている。
 邦訳文は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)のエドワード・

CFRインタビュー
サイバースペースと
未来形戦争を考える

2008年4月号

ウィリアム・T・ロード 米空軍サイバーコマンド司令官

米軍は、軍が使用するサイバースペース、つまり、軍のデジタルリソース、コンンピューターインフラの防衛構想を強化している。
 米軍のサイバーコマンドの司令官に任命されたウィリアム・T・ロードは、サイバー空間の攻撃にはコストがほとんどかかからないために、攻撃してくる相手は数多くいると指摘し、「大規模な軍隊を持たない国も、現実世界では考えようもなかった攻撃を国その他のターゲットに挑めるようになった」と指摘し、「戦争のスタイルそのものが変わってくると思う」と今後を予測した。
  聞き手は、グレッグ・ブルーノ(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRブリーフィング
地球温暖化対策の
「経済的課題」を考える 

2008年4月号

トニ・ジョンソン スタッフライター

世界各国の指導者は、地球温暖化が世界経済を脅かすという認識を共有しだしている。ブッシュ政権は温室効果ガス排出量の上限枠を導入することには依然として消極的だが、次期大統領有力候補者と民主党が過半数を占める米議会は、温室効果ガス排出削減措置の法制化をすでに公約に掲げている。流れが変化するとともに、議論も熱を帯びてきている。
 最大の懸案の一つは、「経済にダメージを与えずに温室効果ガスを削減させる最適のアプローチ」が何であるかを決めることだ。炭素税なのか、排出権取引なのか。環境規制によって損なわれるであろう米国内企業の競争力維持を目的とするグリーン関税の導入は、世界貿易機関(WTO)のルールを踏みにじり、世界貿易を混乱させることにはならないか。
 地球温暖化対策は雇用の創出や新たな環境技術の開発と導入を促し、経済にプラスの波及効果を与えるのか、それとも、環境への配慮が経済を抑え込んでしまうのか論争は続いている。

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