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米国に関する論文

金融危機と戦略問題
――R・ハースの米下院軍事委員会における証言から

2009年4月号

リチャード・N・ハース/米外交問題評議会会長

金融危機が民衆の政府に対する不満を高め、これが、中国やロシアでの政治的抑圧の強化へとつながっていく恐れもある。途上国への投資が先細りとなるなか、先進国がさらに途上国への対外援助を削減するようになれば、破綻国家の数は増える一方になるかもしれないし、その余波は深刻なものになる。各国が、短期的な経済成長に目を向けるあまり、長期的な温暖化対策に後ろ向きになる危険もある。すでに各国では保護主義が台頭しており、「G20諸国のうちの約17カ国が、2008年11月の金融サミット以降に何らかの形で貿易障壁を引き上げている」。そして、大規模な景気刺激策の後には、インフレやドル危機が待ち受けているかもしれない。今回の危機が次なる危機を引き起こさないようにするには、何をどうすればよいか・・・

イラクを超えて
――中東への包括的な新アプローチを

2009年3月号

リチャード・N・ハース  米外交問題評議会会長
マーチン・インディク  ブルッキングス研究所セバン中東センター所長

イランは、秩序を不安定化させる危険な核開発プログラムの開発に向けて着実に歩を進めている。オバマ政権は、条件をつけることなく、テヘランに公式に交渉を申し入れるとともに、イラクのこれまでの進展を維持するために米軍撤退を慎重に進め、中東和平、特にイスラエルとシリアの和平に力を入れていく必要がある。これらを連動させ、成功へと導くには一つの領域での行動の結果が、他の領域でアメリカが実現しようとしていることにどう作用するかを想定し、避けられない混乱に直面しても路線を維持できるような統合戦略をとる必要がある。

CFRインタビュー
保護主義の台頭と地政学リスクを考える

2009年3月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会アメリカ外交担当シニア・フェロー

「中国のアメリカへのアプローチはより手堅くなり、われわれが世界における目的とみなすものの多くを共有しだしている。しかし、これは『開放的な貿易システムと国際協調は、中国が豊かさと大きな成果を手にする機会をもたらしてくれる』という中国側の認識を前提としている。危機を前にわれわれが門戸を閉ざすか、そうでなくても、『アメリカやフランスは貿易の門戸を閉ざしつつある』と中国が考えるようになれば、これは、ジョージ・ブッシュの路線よりも、はるかに大きな危険を伴う外交的大失策となる。アジアと中国を疎外し、その結果、相手の反発やライバル意識をかき立てるとすれば、その後数十年にわたって世界はその禍根から逃れられなくなる。中国に対して門戸を閉ざすことは、現状においてもっとも大きな危険を伴う選択肢だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFR インタビュー
オバマ政権の北朝鮮問題への関心は低い

2009年2月号

ドン・オーバードーファー ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール米韓研究所理事長

「すくなくとも、オバマ政権が北朝鮮の核問題を外交上の優先課題に据えそうな気配はない。新政権が取り組むべき課題は山積している。問題は、北朝鮮問題を短期間で具体的な成果に結びつけるのが非常に難しいことだ。この点からも大きな問題として取り上げられるとは思わない。 ……アメリカの政府関係者が北朝鮮に関してもっとも懸念しているのは、北朝鮮がどこかの国を核兵器で攻撃することよりも、核兵器、あるいは核関連物質が全く信頼できない国や非国家アクターの手へと流れていくことだ。・・・私の知る限り、北朝鮮が韓国やその他の国を核攻撃する可能性が高いと考えている米政府関係者は誰もいないが、核分裂物資の拡散については非常に警戒している」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

21世紀を制するのは中ロか、欧米か
――権威主義的資本主義国家の復活という虚構

2009年2月号

ダニエル・デューデニー  ジョンズ・ホプキンス大学政治学教授
G・ジョン・アイケンベリー  プリンストン大学教授

ネオコンサーバティブの理論家が提言するように、権威主義国家の復活に対して、リベラルな民主国家が団結して封じ込め、軍事競争、排他的なブロック形成という路線で対抗しても、そうした国々における非自由主義的なトレンドを強化するだけだ。対照的に、地球温暖化、エネルギー安全保障、(感染症などの)疾病などの、世界が共有するグローバルな問題に彼らと協調して取り組んでいけば、権威主義国家が現在のリベラルな秩序に見いだしている価値をさらに高めることができる。つまり、民主主義国家は、相手とのイデオロギー上の違いに注目するのではなく、現実の問題、共有する問題に実務的に協調して取り組んでいくべきなのだ。政治体制ではなく、共有する利益に基づく連帯を模索すれば、反自由主義的な権威主義国家がブロックとしてまとまっていくのを回避することもできる。何よりも、リベラルな民主主義国家は歴史の流れが依然として自らの側にあることを忘れてはならない。

Classic Selection 2009
21世紀の国家パワーはいかに ネットワークを形成するかで決まる
――新時代におけるアメリカ優位の源泉

2009年2月号

アン=マリー・スローター  プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・ 国際問題大学院学院長

問題を前にして、誰と連帯してどのような措置をとるべきか。この点を理解していることが21世紀における外交の要諦である。現在の世界では、いかに他とつながっているかでパワーが左右される。しかも21世紀のネットワーク化した世界は国家の上にも下にも存在し、また国家と国家の間にも存在する。そのような世界で中心的プレーヤーとなり、グローバルなアジェンダを設定し、イノベーションと持続可能な成長の中核を担うのは、最大のネットワークをもつ国である。どれだけネットワークを持っているかによってパワーが決まるとすれば、リーダーシップの本質は共有する問題を解決するために、いかにネットワークを形作っていくかにある。ネットワーク化された世界で重要なのは、(国家の)相対的パワーではなく、濃密なグローバルウェブのどれだけ中心に身を置けるかにある。

グローバル化に即した新ブレトンウッズ体制とは

2009年2月号

アディティヤ・マトー
世界銀行グループ・リードエコノミスト
アルビンド・スブラマニアン
ピーターソン国際経済研究所シニア・フェロー

ドーハ・ラウンドを蘇生させようと試みるのはもはや見当違いかもしれない。ドーハで俎上に載せられているアジェンダは、グローバル経済の統合が進むなかで生じている今日的アジェンダとの関連をもはや失いつつあるからだ。いまやコモディティ価格が激しく変動し、中産階級の生活を脅かしている。金融は不安定化し、環境問題も深刻になっている。これらはきわめてグローバルな問題であり、多国間交渉による対応が必要だ。状況を前へと進めて行くには、新たなブレトンウッズ体制に向けた仕切り直しを行い、ドーハよりも野心的なアジェンダを設定し、世界貿易機関(WTO)だけでなく、より多くの国際機関をアジェンダに関与させるようにする必要がある。重要度の低いアジェンダへの取り組みを復活させようとあがくよりも、本当に重要な新しいアジェンダへの対応を試みるべきだ。より多様なアクターの利益がいま危機にさらされている。国際協力への新しい取り組みと国際機関の間での責任分担の見直しが必要なのもこのためだ。新ブレトンウッズ体制構築の試みは、まさにこのための機会を提供している。

大統領に次ぐ重責を担う大統領補佐官の役割とは
 ――バンディからキッシンジャー、ブレジンスキー、ライス、ハドレーまで

2009年2月号

アイボ・ダールダー
ブルッキングス研究所シニア・フェロー
I・M・デスラー
メリーランド公共政策大学院教授

政権が対外政策を遂行していく上で、もっとも多くの時間を大統領と共有するのは国家安全保障問題担当大統領補佐官だ。大統領補佐官は大統領の執務室であるオーバル・オフィスのすぐ近くにオフィスを持ち、朝一番に大統領にブリーフィングをし、多くの場合、一日の最後にも大統領と会う。いまやますます複雑化し、相互の関連性を強める世界の問題に対処していくには、軍事、外交、金融、貿易、環境、国土安全保障、科学および社会政策など、あらゆる側面を統合して一貫した外交政策に結びつけることが、かつてなく重要になってきている。そうした統合的な分析ができるのはホワイトハウス、とくに国家安全保障会議(NSC)においてで、だからこそ、大統領補佐官は、おそらくは現在の政府構造のなかで、大統領に次いで重要なポストなのだ。輝かしい成功例があるとはいえ、歴代補佐官の多くはなぜ失敗を重ねてきたのか。今後の指針とできるようなモデルは存在するのか。

金融市場規制を考える

2009年1月号

スピーカー
ウィリアム・H・ドナルドソン 元米証券取引委員会委員長
スティーブン・フリードマン 元国家経済会議議長
アーネスト・パトリキス 元ニューヨーク連邦準備銀行第一副総裁
司会
ジョン・ガッパー フィナンシャル・タイムズ紙首席ビジネス・コメンテーター

必要とされているのは、リスク・テイキング(リスクを厭わない行動)と創造的な才能を金融システムから取り除くことなく、変動の度合いを大幅に和らげるような金融規制だろう。そのためには金融規制を根本的に見直す必要がある。(S・フリードマン)

投資活動はグローバル規模で行われており、アメリカ以外の国の規制システムに抜け穴があれば、アメリカの規制システムもうまく機能しなくなる。規制に関わってきた人々は、世界の主権国家が規制について合意するのがほとんど不可能なことをよく理解している。何が良い規制や会計基準なのかについて多様な考え方があるからだ。(W・ドナルドソン)

オバマ政権の北朝鮮政策を考える

2009年1月号

スピーカー
マイケル・グリーン 戦略国際問題研究所日本部長
ゲリー・セイモア 米外交問題評議会研究部長
司会
ドン・オーバードーファー ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツスクール米韓研究所所長

交渉か戦争かという二者択一の枠組みにとらわれ続ければ、結局は、「北朝鮮問題よりも重要で切実な問題が他にあるので、戦争は選択肢にならず、とりあえず、相手が欲しがるものを与えておこう」ということになる。これによって、北朝鮮問題を解決するわれわれの能力は大きく損なわれ、北東アジアにおけるアメリカの立場も損なわれる。(M・グリーン)

 核軍縮(解体)が実現する可能性は乏しいとしても、核開発の能力を枠にはめるための現在のプロセスを続けるほうがよいと考えている。最終的には、北朝鮮の体制は力を失い、崩壊していく可能性が高いと思う。つまり、われわれのゲームは、その時が訪れるまで、現在の(核開発能力制限・無力化する)プロセスを維持し、問題を管理していくことだと思う。(G・セイモア)

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