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米国に関する論文

CFRインタビュー
アメリカの財政赤字とドルの運命

2010年3月号

ライアン・アベント Economist.com エディター

アメリカの経常赤字がかつてない規模に達しつつあるといっても、経済が回復すれば、税収基盤も拡大し、失業保険などの支出も低下し、対GDP比経常赤字は5%規模へと圧縮されていくと思う。しかし、より大きな問題は、2015年以降に、社会保障、医療保険(メディケアー、メディケイド)の負担増でアメリカの経常赤字が再び増大していくと考えられることだ。問題は、「医療と社会保障コストの問題に取り組まなければ、米国債の格付けが引き下げられ、高金利によって経済成長が抑え込まれてしまう」というぎりぎりの状況に直面しなければ、政治的決断をするのが難しいかもしれないことだ。この段階まで状況を放置すれば、外国の投資家は、ドルを保有し続けるのをそれほどいい選択肢だとは思わなくなるだろう。

CFRミーティング
ジョセフ・スティグリッツが語る
金融危機と規制、経済の不均衡、中国、ドルの将来

2010年3月号

スピーカー ジョセフ・E・スティグリッツ  コロンビア大学教授 司会  スティーブン・R・ウェイズマン  ピーター・ピーターソン国際経済研究所公共政策フェロー

私の考えでは、今回の経済危機は金融システムが社会的な機能を果たしていなかったことを示す何よりの証拠だ。大きすぎて潰(つぶ)せない銀行が何をするか。リスクをとって成功すれば利益を独占し、リスクをとって失敗すれば納税者がその損失を埋め合わせる。これが現実に起きたことだ。貧困に苦しむ世界の人々を助けるためにも、地球温暖化の問題に取り組んでいくためにも巨大な投資が必要となる。重要なポイントは、資金を生産的な投資へと向かわせる方法を模索することだ。今回の経済危機は、金融システムがそのような機能を果たせなかったことを意味する。金融システムが果たすべき機能は、貯蓄をもっとも高いリターンをもたらす領域への投資へと向かわせることだ。世界でもっとも豊かな国の住宅部門に返済能力を超える水準になるまで資金を注ぎ込むのは、どうみても効率的ではなかった。(J・スティグリッツ)

核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか

2010年3月号

チャールズ・ファーガソン 米科学者連盟会長

非核保有国が原子力発電用の原子炉を調達すれば、その分、核不拡散のリスクは高まっていく。原子力発電に切り替えるだけでは、有効な地球温暖化対策とはなり得ないが、原子力発電を新たに試みるに適した国が、厳格な安全基準、管理体制、核不拡散のガイドラインを受け入れるのであれば、核拡散のリスクを伴うとしても、原子力の平和利用を認めざるを得ない。また、核拡散を防ぐには、核能力を獲得することが自国の安全保障問題への解決策だと考えている国の安全保障上の不安を取り除き、核兵器を保有すれば国際関係において大国と同等の立場を手に入れられるとする間違った認識を正していく必要もある。この観点から、国連安保理の常任理事国に日本のような核を保有していない地域大国を迎え入れることも考えるべきだ。国際コミュニティは地域大国が抱く不安を取り除き、核を保有することで得られる過大な名声を剥ぎ取り、原子力エネルギーに非核保有国が抱く不合理な期待を引き下げていくように努力すべきだろう。そうすることで、核廃絶のビジョンを支えていくことができる。

このままでは核拡散の大潮流が起きる
―― 危機感をもって核不拡散レジームの再確立を

2010年2月号

グレアム・アリソン ハーバード大学政治学教授

北朝鮮が核を開発し、イランが核開発の道を歩んでいるにも関わらず、多くの人は世界の核秩序は安定していると考えている。たしかに、核保有国の数は9カ国に留まっているし、今後、北朝鮮とイランが核保有国と見なされるような事態にならなければ、近い将来に核拡散の潮流が生じて、数多くの国が核武装すると危機感を抱く必要はないと考えることもできるだろう。だが現実には、核不拡散レジームの形骸化が進み、一気に核が拡散してしまう、取り返しのつかない臨界点へと近づきつつある。盗み出された核によってテロが起きる危険もある。核秩序を守るための措置はすでに表明されているが、国際社会がそうした措置を現実に実行していかなければ、世界は一気に核拡散の大潮流に席巻される危険がある。今後の一年は非常に重要であり、各国が行動を起こすべきタイミングはいまだ。核不拡散レジームが崩壊したら、もはや手の打ちようはないのだから。

CFRインタビュー
トタル社CEO、ドマルジェリーが語る
エネルギーと環境のバランス

2010年2月

クリストフ・ドマルジェリー 仏トタル社CEO(最高経営責任者)

「今後がどうなるかについての予測もなしに長期投資を行うのは難しい」。したがって、「環境とエネルギーのバランス」に関する議論の結論がどのようなものになるか。「それが分かるのは早ければ早いほどよい」と考え、われわれエネルギー産業は焦りを感じている。だが一方で、「議論の結論次第では、われわれが想像さえしていないような極端な路線の修正を強いられるかもしれない以上、(長期投資の判断は)結論を待ったほうがよい」という考えももっている。「議論の結論が出るのは早いほうがいいが、・・・・環境とエネルギーの二者択一は良くない、バランスを取るべきだと考えている」。

サイバー攻撃に対する防衛策を
―― サイバーインフラの多様性を高めてリスク管理を

2010年2月号

ウェズリー・K・クラーク 元NATO軍最高司令官 (1997年~2000年)
ピーター・L・レビン DAFCA社最高技術責任者

サイバー攻撃は相手を攻撃するための魅力的な選択肢だ。陸上交通や航空の管制、電力の生産・供給、水道・下水道処理の制御、電子コミュニケーション・システム、さらには、高度に自動化されたアメリカの金融システムなど、国家にとって重要なインフラを、敵対勢力が遠隔地からサイバー攻撃のターゲットにする危険もある。ソフトウェアに対する攻撃は一般に認識され、対策も進められているが、ハード部門の防衛対策は遅れている。(誤作動を起こすように)欠陥を埋め込まれた集積回路は、ソフトウェアとは違って、パッチをあてて修復するのは不可能であり、これは、ふだんは市民になりすまして生活し、いざとなればテロリストの本性を現す究極の「スリーパー・セル」のようなものだ。サイバー攻撃の脅威を完全に封じ込めるのはもはや不可能だが、リスクを管理していくにはシステムの多様性を高めるとともに、開放的なオープンリソースの問題解決方法に学んでいく必要がある。

アメリカは「新しいアジア」にどう関わるべきか
―― 5カ国(日中韓プラス米ロ)協議メカニズムの構築を

2010年1月号

エバン・A・フェイゲンバーム CFRシニア・フェロー
ロバート・マニング 米国家情報会議ディレクター

6者協議にこだわり、北朝鮮とは関係のない北東アジアの非安全保障領域のアジェンダをめぐる多国間協力に関して平壌に拒否権を与える理由はどこにもない。いまや日中韓(プラス3)を、(北朝鮮問題をめぐる)6者協議に協力してきた5カ国のフォーラム(日中韓米ロ)へと拡大すべきタイミングにある。

この枠組みがあれば、北太平洋の主要5カ国が連帯して、経済問題、環境問題、トランスナショナルな課題、外交問題など、非安全保障領域でそれぞれが持つ利益や資源、能力、専門知識をうまく組み合わせられるようになる。安全保障領域での協調は依然として難しいとはいえ、少なくとも、5カ国が朝鮮半島の最終的な統合に向けた移行管理策を含む、緊急対応計画を話し合うことはできるはずだ。

ジャーナリズムの衰退を考える

2010年1月号

ピーター・オスノス 米パブリック・アフェアーズ・ブックス設立者

全盛期の米主要紙の海外支局長には、高級外交官並みの手当てと住宅があてがわれてきた。だが現在は多くの支局が閉鎖されるか、記者がいたとしても1人で、現地のコーディネーター1人、ラップトップコンピューター、携帯電話、事務所兼アパートだけで活動しなくてはならない。だが、うまくやっているメディアもある。通信社(AP通信、ロイター、金融・経済分野のブルームバーグ)は、世界各地に大規模なプレゼンスを維持しているし、いまや通信社の伝統的な守備範囲を超える記事を書ける記者や編集者を擁している。高級誌エコノミストの場合、ストリンガーとわずかな専属記者、そして専門性の高い編集者を組み合わせて、比較的高い価格を正当化するだけの見事な調査記事を毎週送り出している。だが・・・・

東南アジアの貧困と教育への支援を
―― イスラム教徒の人心を勝ち取るには

2009年12月号

クリストファー・S・ボンド 共和党上院議員
ルイス・M・サイモンズ ジャーナリスト

いまや東南アジアでもイスラム過激派が台頭している。その原因は何か。どこにテロの根っこがあるかを知りたいのなら、東南アジアのイスラム教徒たちが暮らす荒廃した村を見て回り、悪臭たちこめる大都市の裏通りに足を踏み入れる必要がある。そこに広がるのは、陰うつで絶望的な景色だ。玄関先や街角にたむろし、たばこをまわし吸いし、遠くを見つめるだけの若者たちがいる。アメリカが原理主義の宗教指導者に先駆けて説得すべきは、こうした未来に希望を持てない若者たちだ。テロの背景にある貧困や腐敗に目を向けないかぎり、軍事作戦を遂行するだけでは、東南アジアにおけるイスラム教徒の人心を勝ち取ることはできない。

CFRミーティング
核のない世界は幻想か?

2009年12月号

スピーカー モハメド・エルバラダイ 前IAEA事務局長
司会 リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

残念なことだが、核を保有するか、核兵器を開発する能力を持っていればパワーと名声、そして保険策を手にできると多くの国が依然として考えている。・・・彼らが考えているのは軍備管理ではない。「核兵器を開発する必要があるか」という命題だ。・・・より状況を複雑にしているのは、・・・ウラン濃縮技術や再処理能力など、(核兵器そのものではなく)核開発に必要な能力を獲得するだけで十分だと各国が考えだしていることだ。・・・核廃絶を唱えるのは簡単だ。重要なのは、それに必要なシステムやレジームを考え、整備していくことだ。

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