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米国に関する論文

米金融政策の国際的衝撃
―― 量的緩和縮小と新興国経済

2014年8月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー

ユーロ圏以外の世界の貿易決済の大部分、そして外貨準備の60%には依然として米ドルが利用されており、当然、FRBの金融政策の変更は、グローバル市場に瞬時に大きな影響を与え、途上国へのキャピタルフローを極端に変化させ、途上国通貨の米ドルに対する価値は激しく変動する。この意味において、途上国の金融政策上の主権は事実上形骸化している。実際、連邦準備制度が資産の買い入れを縮小していくと示唆しただけで、投資家が資金を途上国から引き揚げて米国内の安全な投資先へと移動させたために、途上国の債券・通貨市場は大きな混乱に陥った。問題は、連邦準備制度が政策の判断にその国際的余波を考慮することは法的に想定されていないこと。そして、IMFを別にすれば、その余波を防ぐためのチェンマイ・イニシアティブやBRICS開発銀行構想が依然として実体を伴っていないことだ。・・・

イラク・シリア問題にどう対処するか ―― 分割による連邦国家化を

2014年7月号

レスリー・ゲルブ 米外交問題評議会名誉会長

オバマ政権は明確な戦略をもつ必要がある。包括的な戦略枠組みを意識した行動をとらない限り、結局は何をしてもうまくいかない。先ず、イラクの混乱に関連する本当の脅威を作り出しているのが誰であるかを特定しなければならない。答えは、シリアでもイラクでも脅威を作り出しているのは(スンニ派の)ジハーディストだ。したがって、この脅威に対抗することに利益を見いだす勢力を特定し、連帯を組織する必要がある。それは皮肉にもアサド政権やロシア、イランに他ならない。アサド政権もイランもロシアも、スンニ派の過激主義集団を敵視している。私なら、現在の問題に対処するためにイランと取引する。スンニ派のジハード主義者がイラクとシリアで大きな影響力を手にすれば、将来における和平への道筋を描くための政治的解決策を模索するのは不可能になる。実際、シリア、イラク双方における見込みのある平和への道筋を描くには、(ジハード主義勢力を抑え込んだ上で)連邦制を導入するしかないだろう。(聞き手はバーナード・ガーズマン、consulting editor@cfr.org)

米中露・新戦略トライアングルで 何が変わるか

2014年7月号

デビッド・ゴードン  ユーラシアグループ・ グローバルマクロ分析ディレクター
ジョーダン・シュナイダー  ユーラシアグループ リサーチャー

冷戦期を思わせる戦略トライアングルが再び復活しつつある。冷戦期の米中ロ戦略トライアングルを巧みに利用したのはアメリカだったが、今回のトライアングルで強い立場を手にしているのは中国だ。北京は、ウクライナ危機に派生する米ロ対立をうまく利用できる立場にある。中国はロシアからのエネルギー供給を確保するだけでなく、ロシア市場へのアクセスの強化、ロシアからの軍事技術の供与を望んでいる。もちろん、戦略トライアングル内部の対立構図をはっきりと区分できるわけではない。中国にとってアメリカは依然として重要な経済パートナーだし、住民投票で国境線を変えたロシアのやり方を、国内に大きな火種を抱える中国が認めることもあり得ない。だがそれでも、この新環境のなかで大胆になった中国が、現在の東アジアにおける地域バランサーとしての役割をアメリカが遂行していくのを難しくするのは避けられないだろう。・・・

ロシア、中国と新しい外交課題

2014年7月号

ロバート・ゲーツ 元米国防長官、 ファリード・ザカリア CNNファリード・ザカリアGPS ホスト

プーチンにとって、ウクライナにおける最終目的はキエフに親ロシアの政権を誕生させることだ。ヤヌコビッチほど、はっきりとした親ロ派である必要はない。東部がモスクワに目を向け、独立に近い大きな自治権を確保し、しかもウクライナがNATOやEUにこれ以上近づいていかなければ、おそらくプーチンはその状況で満足するのではないかと思う。すくなとも、当面はそうした状況で十分のはずだ。

そこに戦略的空白が存在すれば、(台頭する国家は)自分たちのナショナリスティックなアジェンダを模索するチャンスがあると考える。そしてひとたび行動を起こせば、それは自律的にエスカレートしていく。防空識別圏の設定、単なる監視船ではなく、戦闘機まで投入し始めた尖閣諸島をめぐる対日アプローチの激化、さらには南シナ海における石油掘削プラットホームの設置に象徴される、この18カ月から2年間の中国の攻撃的なアプローチを、私はこの文脈で捉えている。

アジア重視戦略の本質

2014年5月号

カート・M・キャンベル
前米国務省国務次官補
(東アジア・太平洋担当)イーライ・ラトナー
新アメリカ安全保障センター シニアフェロー

東シナ海での問題を超えて、日本の安倍晋三首相は、日本を数十年に及ぶ経済停滞から解き放ち、市民に国にもっと新たなプライドと、影響力ある国としての自覚をもたせたいと考えている。安倍首相は、第二次世界大戦の戦犯を含む戦没者を称える靖国神社を2013年末に参拝した。その国際的コストは高かった。日本と韓国の関係はさらに険悪になり、中国は安倍首相が権力ポストにある限り、日本との直接交渉には応じないという路線をさらに固めた。・・・・外交的緊張が高まっているとはいえ、アメリカは、日本がもっと地域的にも世界的にも積極的な安全保障上の役割を担えるように、自衛隊との協力関係を強化していくだろう。実際には完全に合理的な措置であり、むしろもっと早く手をつけてもおかしくなかった「日本憲法の再解釈と軍事的の近代化」を「反動的で軍国主義的だ」と批判する中国のプロパガンダに対抗していくことも必要だ。一方で、アメリカは日本と韓国の関係を改善するためにかなりの政治資源を投入する必要がある。・・・

「歴史の終わり」と地政学の復活
―― リビジョニストパワーの復活

2014年5月号

ウォルター・ラッセル・ミード バードカレッジ教授(歴史・外交)

政治学者フランシス・フクヤマは、「冷戦の終わり」をイデオロギー領域での「歴史の終わり」と位置づけたが、多くの人は、ソビエトの崩壊はイデオロギー抗争の終わりだけでなく、「地政学時代の終わり」を意味すると考えてしまった。現実には、ウクライナをめぐるロシアとEUの対立、東アジアにおける中国と日本の対立、そして中東における宗派間抗争が国際的な紛争や内戦へとエスカレートするリスクなど、いまや歴史は終わるどころか、再び動き出している。中国、イラン、ロシアは冷戦後の秩序を力で覆そうとしており、このプロセスが平和的なものになることはあり得ない。その試みは、すでにパワーバランスを揺るがし、国際政治のダイナミクスを変化させつつある。いまや、リベラルな秩序内に地政学の基盤が築かれつつあるのを憂慮せざるを得ない状況にある。・・・・

シェール革命で変化するエネルギー市場と価格

2014年5月号

エドワード・L・モース シティグループ原材料担当グローバル統括者

ロシアを抜いて世界最大の天然ガス生産国の地位を手に入れたアメリカは、2015年までには、サウジアラビアを抜いて最大の原油生産国になると考えられている。2011年に3540億ドルの赤字だったアメリカの石油貿易収支も、2020年には50億ドルの黒字へと転じる。一方、シェール資源の開発技術は外国にも移転可能であり、今後、シェール資源開発は世界的に広がっていくだろう。実際、シェール資源は世界各地で発見されており、多くの国がこの分野でアメリカに続きたいと考えている。アメリカの開発可能なシェール資源が世界全体の資源の15%程度である以上、世界的な開発が進めば、これまでになく安いコストでエネルギー資源が供給されるようになる。40年にわたって市場を支配してきたOPECが恣意的に原油価格を設定し、世界経済を苦しめてきた時代にもいずれ終止符が打たれ、世界経済は大きな成長を遂げることになるだろう。・・・・

北東アジアにおける歴史戦争
―― アメリカの関与がなぜ必要か

2014年5月号

ギウク・シン
スタンフォード大学教授(社会学)
ダニエル・C・シュナイダー
スタンフォード大学アジア太平洋研究センター
アソシエート・ディレクター

第二次世界大戦に由来する未解決の歴史問題が、北東アジアの地域的緊張の背景に存在する。歴史問題が日本と韓国というアメリカの主要な同盟国を反目させ、日本と中国のライバル関係を再燃させている。だが、この現状をめぐって、東アジアの戦後秩序を形作ったアメリカにも責任があることを認識する必要がある。アメリカは、冷戦という特有の環境のなかで戦後処理を行い、以来、状況を放置してきた。日本は「ドイツがいまも謝罪の必要性を認識し、自己検証の試みを続けていること」から教訓を学ぶ必要があるし、アメリカも戦争と過去に正面から向き合い、米大統領はヒロシマあるいはナガサキを訪問し、日本に原子爆弾を投下した結果、非常に多くの人命が奪われたことに対する自らの考えを示すべきだ。そうしない限り、北東アジアの歴史問題にアメリカが介入することは正当化できない。・・・・

CFR Meeting
ケビン・ラッドが語る
北朝鮮危機、日中対立、
アジア重視戦略と中国

2013年4月号

ケビン・ラッド  前オーストラリア首相、ジョナサン・テッパーマン  フォーリン・アフェアーズ誌副編集長

「中国軍の高官を含む、私の中国の友人たちと話した感触では、中国政府は、面目を保つ形で、東シナ海の状況を安定化させ、長期的な問題の管理プロセスを日本との間で見いだそうと水面下で積極的に模索している。一方で、この問題をめぐる世論の高揚を前に、一体どうすれば実際に面子を失わずに危機を安定化できるか、疑問に感じ、困惑しているのも事実だろう」

アメリカのアジア重視戦略は、東アジアサミットへのアメリカの参加、アジア・太平洋での戦略プレゼンスを維持し、米海軍戦力の60%をアジア・太平洋に投入する軍事的リバランシング戦略、そして日本を含む環太平洋パートナーシップ(TPP)の構築という三つの支柱によって支えられている。こうした「アメリカの戦略を批判する中国の友人には、次のように答えることにしている。「北朝鮮を例外にして、アメリカのアジア重視戦略を歓迎しない国があれば、その国名を言って欲しい。ほとんどの場合、彼らは黙り込んでしまう」

中国は欧米秩序を拒絶する ―― 米中衝突が避けられない理由

2014年4月号

ミンシン・ペイ クレアモント・マッケンナ大学教授(政治学)

中国による防空識別圏の設定は「それなりの力を獲得すれば、北京は欧米の秩序に挑戦することを躊躇しない」とみるリアリストの警告が正しかったことを意味する。「開放性やルールに基づく行動」を基盤とする現在の国際システムと、「閉鎖的な政治と権力の恣意的行使」を特徴とする中国の国内体制とのギャップからみても、中国のエリート層が欧米秩序に正統性を見いだす日がやってくるはずはない。中国は今後さらに力をつけるにつれて、既存秩序の変更を求めるか、中国にとって好ましい秩序を構築しようとするはずだ。それは、独自のルールで動き、欧米を排除し、中国が支配的役割を果たす秩序になるだろう。もはやアメリカは「同盟国やパートナーとの関係を強化し、地域国家が中国に翻弄されないようにする」リアリスト路線をとるしかない。

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