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米国に関する論文

グローバル「#MeToo」ムーブメント
――女性の権利確立を促すグローバルな好循環

2018年5月号

ルディス・マーダビ デンバー大学 国際関係大学院 上席副学部長

「#MeToo」はアメリカで起きている出来事と結びつけられたグローバルなムーブメントだ。ソーシャルメディアで流された#ミィトゥーというハッシュタグがもつ意味合いを世界は直ちに受け入れ、アラビア語、ペルシア語、ヒンディー語、スペイン語を含む複数の言語で、同じムーブメントが展開されている。現在、85か国の女性たちがこのハッシュタグを使って、変革を求めている。メッセージの拡散を刺激しているのは、ソーシャルメディアだけではない。過去に築かれてきた各国の女性運動の基盤が今回のグローバルムーブメントを支えている。女性たちが団結して声を上げるなか、あまりに長い間抑え込まれてきた彼女たちの痛ましいストーリーが、変革を促す一貫した、断固たる流れを作り出しつつある。

イランを内包する新中東秩序の構築を
―― 中東の安定を取り戻すには

2018年4月号

バリ・ナスル  ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院院長

中東を規定してきたこれまでのアラブ秩序は、この7年間の社会的混乱と内戦によってすでに引き裂かれている。ワシントンでは「イランの影響力を押し返せば中東に秩序を取り戻せる」と考えられているが、これは間違っている。むしろ、今後の持続可能な中東秩序にとって、イランが必要不可欠の存在であることを認識しなければならない。イランの対外行動が、イスラム革命の輸出ではなく、国益についての冷徹な計算によって導かれていることも理解すべきだ。現在の中東政策を続けても、イランの影響力を低下させることはなく、むしろ中東におけるロシアの影響力を拡大させるだけだ。紛争に終止符を打ち、平和と安定の枠組みを作るための地域合意を仲介するための国際外交に向けたリーダーシップを発揮しなければならない。この任務をロシアに任せるべきではない。

同盟関係と国際機関の価値に目を向けよ
―― 大国間競争で勝利を収めるには

2018年4月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

冷戦初期同様に現在のアメリカは大国間競争の時代に足を踏み入れている。しかし、アメリカファーストを掲げるトランプ政権は、冷戦における勝利を西側にもたらした同盟関係や国際機関を基盤とする秩序に背を向けてしまっている。戦後戦略の中枢は「ヨーロッパとアジアで、権威主義の誘惑と脅威に対抗する力をもつ強固な民主的な同盟関係を築くことだった」。当時のアメリカは、そうすることで、軍事力に過度に依存せずに、自国の経済・安全保障利益を守れるようになると考えた。トランプ政権が大国間競争の時代の幕開けを宣言したタイミングで、アメリカが冷戦という大国間競争に勝利を収めるのを助けたツールを大統領が放棄し、その価値を否定しようとしているのは大きな皮肉としか言いようがない。

何が米戦略の立案を阻んでいるのか
―― ホワイトハウスとペンタゴンの対立

2018年4月号

ジュリアン・スミス 前米副大統領副補佐官 (国家安全保障問題担当)
ローレン・デヨング・シュルマン 前米国家安全保障会議ディレクター (国防政策担当)

北朝鮮軍事戦略の策定を阻んでいるのはホワイトハウスや米国家安全保障会議(NSC)とペンタゴンの確執なのか。おそらくそうではない。ホワイトハウスが戦略をもっていないこと、数日毎に新たな戦略の条件を示し続けていることが問題だ。さらに、機能する省庁間調整プロセス、政府の方針を維持する閣僚、高官ポストが空席でない国務省、駐韓アメリカ大使、さらにはアメリカの政策や大統領のツイートを解読するのに次第に苛立ちを感じているかにみえる同盟諸国との開放的なコミュニケーションチャンネルも必要とされている。国務省、ソウル、あるいは平壌、どこにいようと、ホワイトハウスが本当に望んでいるものが何なのかを理解できない状態にある。

大統領と核兵器
―― 核兵器発射プロセスの見直しを

2018年4月号

リチャード・K・ベッツ コロンビア大学教授
マシュー・C・ワックスマン コロンビア大学法科大学院教授

アメリカの情報機関によって北朝鮮の臨戦態勢が強化されていることが確認されれば、先制攻撃に向けた議論が高まるのは避けられない。しかし、それによって、核の使用を自粛する合理性が覆されてはならない。むしろ、そうした状況でも、政策決定者は通常戦力による先制攻撃能力を最大化することに努めるべきだろう。この側面からみても、核兵器発射の決定について「トップアドバイザーたちと協議するかどうかを大統領が決める」現行のシステムには問題がある。国防長官が核の先制使用の決定が最高司令官による本当の命令であることを確認し、司法長官が、それが合法的であること、つまり、大統領にはそうする法的権限があると保証するというもう一つのチェック機能をシステムに加える必要がある。現状では、核攻撃を固く決意した大統領の行動を阻むものは何もない。

CFR Blog
ティラーソンからポンペオへ
―― 米国務省を救うには

2018年4月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ティラーソンは、スティーブ・バノン(首席戦略官)やスティーブン・ミラー(政策担当上級顧問)のような、トランプ大統領を取り巻く保守・ナショナリスト系のイデオローグたちによる攻撃から国務省を守ることができなかった。こうした自称「反グローバリスト」たちは、国務省のことを、勤勉なアメリカの愛国者ではなく、アメリカの主権を価値のない合意と引き換えに売り渡す国際主義者たちが埋め尽くす、敵に乗っ取られた組織とみなした。・・・後任のポンペオは、その忠誠ゆえにトランプに好ましく思われているが、大統領が外交的カオスを作り出そうとしたり、無謀にもアメリカを脅かす脅威を無視しようとしたりしたときに、大統領の前に立ちはだかれるだろうか。ポンペオのCIAでの記録をみれば、楽観は許されない。・・・

対中冷戦戦略の誤謬
―― 対中協調の余地は残されている

2018年4月号

マイケル・D・スワイン  カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

トランプ政権は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を、あらゆる地域プレイヤーが繁栄と安全を手に入れるための包括的ビジョン、そして中国に対抗するアメリカの同盟国とパートナーのためのネットワークとして描いているが、この戦略に中身はない。アメリカとその同盟国がアジア太平洋地域におけるもっともダイナミックな大国である中国を敵として扱って、安全と繁栄が包括的なものになることなどあり得ない。中国は、アメリカとそのパートナーとの長期的な関係について何かを決断しているわけでも、グローバルな覇権国としてのアメリカに取って代わることを決意しているわけでもない。リビジョニストパワー、現状維持パワーという二つの顔をもつ中国の複雑な自己アイデンティティの片方にだけ焦点を合わせて、二つの大国間の存亡をかけた抗争をイメージするのは間違っている。

中国のエネルギー地政学
―― クリーンエネルギーへの戦略的投資

2018年4月号

エイミー・マイヤーズ・ジャッフェ 米外交問題評議会シニアフェロー (エネルギー&環境問題担当)

トランプ政権が石油・天然ガスを重視し、パリ協定に背を向けるなか、すでに中国は戦略的にクリーンエネルギー大国の道を歩みつつある。新エネルギー戦略が成功すれば、世界の気候変動との闘い、さらには地域的同盟関係や貿易関係の双方において、中国はアメリカに代わる最重要国に浮上する。クリーンエネルギーテクノロジーの輸出国として中国は、各国に石油・天然ガスの輸入量さらには二酸化炭素排出量を減らす機会を提供できるし、相手国政府との関係も強化できる。冷戦期のアメリカが、ソビエトとの宇宙開発競争に敗れた場合の経済的・軍事的余波を認識して、対抗策をとったように、ワシントンは中国の再生可能エネルギーへの移行にも、同様の対策をとるべきだろう。アメリカは、世界のエネルギー市場における優位を手放すリスクを冒している。

対中幻想に決別した新アプローチを
―― 中国の変化に期待するのは止めよ

2018年4月号

カート・キャンベル 前米国務次官補(東アジア・太平洋担当)
イーライ・ラトナー 前米副大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)

中国を孤立させ、弱体化させようと試みるべきではないし、よりよい方向へと変化させようとすべきでもない。これをアジア戦略の道標とすべきだ。外交や通商面でのエンゲージメントも、軍事力もアジアリバランシング戦略も効果はなかった。リベラルな国際秩序も、期待されたように中国を惹きつけることも、つなぎ止めることもできなかった。中国はむしろ独自の道を歩むことで、アメリカの多方面での期待が間違っていることを示した。さまざまな働きかけで中国が好ましい方向へ進化していくという期待に基づく政策をとるのはもう止めるべきだ。中国を変化させるアメリカの力をもっと謙虚に見据える必要がある。

中国とロシアは、権威主義国家の閉鎖性と民主国家の開放性という非対称性につけ込んで、「世界における自国のイメージを形作り、自国に対する民主国家の行動を枠にはめるための」キャンペーンに巨額の資金を注ぎ込み、その余波は世界に及んでいる。しかし、民主社会が権威主義国家のシャープパワーに対抗していく上で留意すべきことがある。それは、権威主義と同じやり方で相手のシャープパワーに対抗措置をとってはならないということだ。そのような過剰反応を示せば、自らのソフトパワーを傷つけることになる。アメリカ社会へのアクセスを閉ざしたり、その開放性を無くしたりすれば、ソフトパワーという大切な資産を損なうことになる。

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