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米国に関する論文

外交問題評議会ラウンドテーブル・リポート
米日中とアジア安全保障の将来 (後半)

2000年6,7月号

ニール・E・シルバー 前外交問題評議会客員研究員

中国人が日本に抱く否定的なイメージ、日本側の歴史認識をめぐる日中の政治学、日米同盟やTMD配備に対する中国側の姿勢などを検証し、アメリカの現実的な戦略的選択肢を検討したこのレポートは、アジア安保の「かなめ」としての日米関係の重要性を強調する。世界システムへの中国の統合、北朝鮮・台湾の問題、日本経済の衰退、アジアでの多国間主義の今後という五つの課題を踏まえ、アジア地域の安定と平和に向けた提言でレポートを締めくくっている。(前編はフォーリン・アフェアーズ日本語版6月号に掲載)

グローバルな金融市場統合へ
―― 欧米証券取引所の大改革

2000年6月号

ポール・アールマン 欧州証券取引所連合理事長 ブランドン・ベッカー ウィルマー・カトラー・アンド・ピカリングパートナー、米国証券取引委員会(SEC)市場規制局前局長

証券取引所における電子化と証券取引所の株式会社化という大潮流のなかで、欧米では証券取引所の大統合が起こっている。証券取引所という分野にもっとも鋭い見識を持つアールマン氏とベッカー氏の対談を通し、ヨーロッパとアメリカ双方の立場から、グローバルな金融市場の統合に向けた、法的規制の現状と課題、投資家保護の仕組みなどを明らかにする。

「グローバル経済に挑む国際労働運動」への反論

2000年6月号

ジャグディシュ・バグワティ コロンビア大学教授 トマス・ドナヒュー  前米労働総同盟産業別会議会長

ジェイ・マズアー米労働総同盟産業別会議会長は「グローバル経済に挑む国際労働運動」で、グローバリゼーションは一握りの人々に繁栄をもたらす一方で、多くの労働者を追い込んでおり、状況を是正するには労働者の権利を国際的な貿易合意に明文化するとともに、労働組合が国際的に連帯する必要があると呼び掛けた。だが、彼の言う「労働者」とは一体だれなのか、貿易合意への権利の明記は先進国による保護主義につながらないか、「国際労働運動」の本質は何か……グローバリゼーションをめぐる論争はさらに続く。

外交問題評議会ラウンドテーブル・リポート
米日中とアジア安全保障の将来 (前半)

2000年6月号

ニール・E・シルバー
前外交問題評議会客員研究員

現役の米国務省高官ニール・シルバーが、客員研究員としてニューヨークの外交問題評議会に滞在した(1998年-1999年)に書き下ろした東アジア安全保障の将来への提言。冷戦の終結、中国の台頭、日本経済の凋落という昨今のトレンドが、日米中安全保障にどのような影響を与えるかについて、シルバーは戦略的観点からだけでなく、世論、相互イメージ、非政府組織の活動など多角的な要素を織り込みつつ論じている。九八年から九九年に実施された評議会のラウンドテーブル・ミーティングでの議論を踏まえた、東アジア安全保障の包括的な検証。(後編はフォーリン・アフェアーズ日本語版7月号に掲載)

グローバリズムと多国間開発政策の新枠組み

2000年5月号

ローレンス・H・サマーズ 米財務長官

貧困の削減を考えるうえで経済成長を重視しないのは、それこそ主人公のいない劇のようなものだ。援助がうまく使われると確信できる国に融資を提供し、誤用される危険、とくに汚職がらみで悪用される国への融資は行わない、という方針を強めていく必要がある。下へ下へと向かう競争に世界がのみ込まれていくのを回避するために、底辺にいる人々が立ち上がれるように本腰で取り組む必要がある。

覇権か孤立主義か 強すぎる米国の行方

2000年5月号

サミュエル・R・バーガー アメリカ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

孤立主義的と覇権主義、アメリカのリーダーシップが今までになく必要とされるなかで、アメリカはどこに身を置くべきなのか。アメリカは「すべてに対応することも、世界中で行動を起こすこともできないが、なにもしないでよいことは断じてありえない」。穏やかな関与(エンゲージメント)政策こそ、政治的、経済的にアメリカにとって、そして世界にとっての利益なのだ。

お門違いのクリントン外交批判 

2000年4月号

スティーブン・M・ウォルト  ハーバード大学教授

今そこにある危険(現存する明白な危険)がない状態では、外交政策にも国内の党派政治が大きな影響を持つようになる。共和党は繰り返し大統領の対中政策を非難しているが、現実にはジョージ・W・ブッシュが唱えている対中認識はクリントンの政策と非常によく似ている。現存する国際機関を自分の都合のよい手段として用いるような態度は、将来アメリカを困らせることになるかもしれない。

アジアの軍事力がアメリカの優位を脅かす

2000年4月号

ポール・ブラッケン  イェール大学政治学・経営学教授

過去二百年にわたって世界の枠組みを定めてきたのは、欧米の軍事的優位だった。かつて国力の象徴といえば砲艦だった。次いで戦艦となり、そして巡航ミサイルやステルス爆撃機へとそれは代わっていった。その間、これらの軍備を独占してきたのは、欧米諸国であった。しかし、そうした欧米による先進軍事技術の独占時代も、いまや終わりを迎えようとしている。今日では、イスラエルから北朝鮮にいたる十にものぼるアジア(東洋)の国々が、通常兵器や大量破壊兵器(WMD)を搭載した弾道ミサイルや、その他の先端技術を手にしようとしている。世界のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)が大きく変わろうとしているのだ。第二次世界大戦後の冷戦期が第一の核時代だとすれば、アジアの軍事力の台頭は、第二の核時代がやって来ることを告げている。欧米がつくりだした世界の枠組みが変わろうとしているのは、軍事面だけではない。こうした変化は、文化的・哲学的な意味においても起こりつつある。一九六○年代と七○年代に経済分野で存在感を強めたアジア諸国は、いまや軍事分野でも存在感を強めつつある。これらの諸国が保有する兵器のことを考えると、欧米によるアジアへの干渉は平時においてすら、これまでになく危険でコストの高いものになるだろう。欧米諸国の軍事力は、非欧米諸国の弱い軍隊を打ち負かす以上の意味をもっていた。それは、欧米の方針に沿って世界を構築するための手段であり、さらに、商業・技術の全般におよぶ欧米優位の象徴として先進国と後進国の格差も表してきた。欧米の掲げる世界構想に積極的に反対すれば、敗北することが目に見えていただけに、一九九○年代初期までは、そのような反対者の出現はありえないと考えられていた。しかし、ペルシャ湾や旧ユーゴで示された、圧倒的なアメリカの軍事力にもかかわらず、欧米諸国の既成概念を打ち破る国が登場しつつある。これらの国々は、先進国との軍備格差を埋めようとしたわけではない。むしろ、アメリカの軍事力の裏をかき、アジアにおける米軍の弱点をつくような、妨害・非対称テクノロジー(disruptive technology)の開発に力を入れたのだ。欧米の戦略の基本的前提は、現在の技術的・軍事的均衡を維持し、その他の分野でも欧米支配を継続させることにある。しかし、それは(インド、パキスタンの核実験に象徴される)第二の核時代の幕開けによって覆されてしまった。一例をあげると、欧米が掲げる国際的課題はもっぱら経済的な視点から語られ、「大切なのは経済だ」という主張が、一九九○年代を通じて内政と同様に外交にも大きな影響を与えた。外交の主要任務はアジアの大国を欧米主導の経済システムに組み入れることと考えられていた。「どの時点で中国のWTO(世界貿易機関)加盟を承認すべきか」「どうすればインドに海外からの投資に対する規制を緩和させることができるか」「どうすれば新たな金融危機を予防できるか」といった問題設定は今でも適切ではある。しかし、欧米が依然としてアジェンダ・セッティングをし、アジアが世界システムに参加する条件を設定できるとみなすのは、果たして妥当だろうか。

民主党次期大統領のグローバル経済対策

2000年4月号

W・ボーマン・カッター 前経済政策担当次席補佐官  ジョアン・スペロ 前経済・ビジネス・農業問題担当国務次官

ネットワーク経済(電子商取引)にだけ焦点を当てた具体的な多国間プロセスを開始すべきであり、これは民主党次期大統領が取り組むべき中心的な目標の一つとなろう。アメリカは日本をたんなる同盟国としてではなく、アジア太平洋地域の経済、政治、安全保障を守り、既存の多国間枠組みを強化し、新しい多国間枠組みを構築するためのパートナーとして扱うべきである。世界貿易機関(WTO)を環境問題の多国間交渉の場とするのではなく……環境問題に関する新しい国際公約を策定・実行する『地球環境機関(GEO)』の創設を新たに提案すべきだ。

多国間協調と単独主義の間

2000年2月号

ロバート・W・タッカー/ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授

「グローバリゼーションは実在するが秩序を保証できないし、一方で多極世界は秩序を保証できるかもしれないが、実在しない」。したがって、アメリカがもつ支配的な力が世界秩序への特別な責任を作り出すのは避けられない。ここでの問題は、アメリカは単独で行動すべきか、あるいは他国とともに行動すべきか、という古くからのテーマにある。「国際コミュニティーによるコンセンサスなどいまなお幻想」なのだから、現実には原則や利益を共有する「より小さなコミュニティーによる支持」をアメリカは模索し、こうした諸国ととも多国間協調がともなう制約や妥協という重荷を担っていくべきだろう。アメリカが力の誘惑に抵抗できる唯一の国家だと信じこむのは問題がある。肝に銘ずべきは、「力に乱用は付き物だが、一方で力は責任を生む」という真理のバランスである。

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