1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

北朝鮮に関する論文

強大化した北朝鮮の核の脅威
―― 平壌の核ドクトリンと韓国、東アジア

2022年12月号

スー・ミ・テリー ウィルソンセンター アジアプログラム・ディレクター

金正恩は、2022年9月に、核の「先制使用」ドクトリンを公表した。核兵器で米本土を脅かす力をもっているだけではない。北朝鮮の核は、北東アジアで軍拡競争を引き起こす危険がある。金正恩が突きつける脅威ゆえに、これまであり得ないと考えられていた核保有を求める韓国民衆の声は大きくなっている。だが、この流れが形成されれば、韓国が核開発を試みる前に、北朝鮮が韓国を攻撃するリスクは高くなる。日本も核武装に向かうかもしれない。問題は、北朝鮮の脅威が増大するなか、トランプ政権以降のアメリカの安全保障コミットメントが、かつてほど手堅くはないようにみえることだ。実際、北朝鮮の核攻撃によるアメリカの脆弱性が高まるなか、東アジアの同盟国がアメリカの「核の傘」に依存し続けられるかどうか、はっきりしない状況にある。

ウクライナ危機と北朝鮮
―― 金正恩の思惑、変化した半島情勢

2022年5月号

スー・ミ・テリー 元米中央情報局(CIA)分析官

ロシアのウクライナ侵攻を前に、北朝鮮の指導者、金正恩は核の兵器庫を増強する決意をさらに強くしたはずだ。核を保有していれば、ロシアがあえてウクライナを攻撃したはずはないと彼は考えている。この半年間、北朝鮮は新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、鉄道発車式弾道ミサイル、新型地対空ミサイルシステム、長距離巡航ミサイル、極超音速ミサイルを実験し、3月24日には米全土と欧州を射程に収めると考えられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射している。一方、次期韓国大統領の尹錫悦は文在寅よりもバイデンに近い立場をとると考えられ、平壌が核実験を行えば、2人はより積極的な制裁の実施に向けて連携するだろう。日米韓の連携を強化するために、ソウルが東京との関係を修復する必要性でもバイデンと次期韓国大統領は一致している。

このままではロシアは北朝鮮化していく
―― 欧米は民衆への経済制裁を見直せ

2022年4月号

マキシム・ミロノフ IEビジネススクール准教授

最近プーチンは「フェイクニュースを流せば15年の禁固刑に処す」という新法に署名した。これで、ウクライナ戦争に関するモスクワに都合の悪い報道はすべてフェイクニュースとみなされる。一方で、欧米の厳格な経済制裁によって、ロシアで基本物資の不足や大量の失業が起き、人的資本流出を食い止めるための渡航制限も導入されるだろう。欧米がロシア経済全体への締め付けを続ければロシアをより大きく、より不安定で、より危険な北朝鮮に変えてしまう危険がある。しかも、モスクワはユーチューブさえも閉鎖すると脅しており、ウィキペディアのような情報サイトもブロックするかもしれない。要するに、ロシアは近く地球上でもっとも孤立した国の一つになる。このままロシア人全員を対象に徹底的な制裁を続ければ、欧米はロシアを貧窮化・没落させ、プーチンを増長させる危険がある。制裁はロシア政府高官とオリガルヒおよびその資産をターゲットにすべきだ。

北朝鮮危機と台湾有事
―― 半島危機と台湾有事のリンケージ

2022年3月号

ソンミン・チョ 米国防総省 アジア太平洋安全保障研究センター 教授 オリアナ・スカイラー・マストロ  スタンフォード大学 国際問題研究所センターフェロー

北朝鮮がアメリカとその同盟国をミサイル発射で挑発したタイミングで、中国が他の地域で行動に出る恐れがある。すでにそのリスクは高まっているのかもしれない。中国と競い合っているアメリカにとっては特に深刻なダメージになるだろう。戦略的競争の時代にある現在、朝鮮半島、東シナ海、台湾海峡は、良くも悪くも、ますます関連性とリンケージを高めている。こうした安全保障環境の変化に対応するには、日米韓の戦略家がこれらの問題をパッケージ化して捉え、対応策を考案しなければならない。金正恩や習近平を牽制するには、必要なら二つの戦争を同時に戦い、その双方に勝利できることを立証する必要がある。

アメリカは台湾をめぐる戦争で敗北する軌道にある。だが今からでも路線を見直せる。既存のすぐに手に入る軍事資源の分配を見直し、より効率的な計画を立て、重要な同盟関係をうまく生かせば、アメリカは早ければ2020年代の半ばまでには、台湾をめぐる戦争を阻止し、必要であれば相手に勝利する能力を手に入れているはずだ。中国共産党の自制心や10年以上先にならなければ利用できない技術に賭けるのではなく、アメリカの議会と政府は、新たな太平洋防衛戦略を遂行しなければならない。「バトルフォース2025」を新たに構築すれば、アメリカとその同盟国は、中国の侵攻を短期的に抑止し、必要に応じて撃退できるようになる。

バイデンと北朝鮮の核兵器
―― 核を放棄しない平壌への対策はあるか

2021年9月号

スー・ミ・テリー  戦略国際問題研究所シニアフェロー

北朝鮮の核ミサイルが米本土を射程に収めるにつれて、その脅威は質的に大きく変化している。変化が長い時間をかけて起きたために、分析者や政策決定者は脅威に慣れきってその深刻さを過小評価している。だが、軍事オプションはもはやとれない。外交では、妥協をするだけで結局何も得られない。むしろ、バイデンは二つの基本的な事実を認識する必要がある。現在の全体主義政権が続く限り、平壌は核兵器を放棄しないこと。もう一つは、米主導の体制変革(レジームチェンジ)は、少なくとも短期的にはオプションにはならないことだ。したがってバイデンが望み得る最善は、脅威を封じ込め、平壌の権力掌握をボトムアップで切り崩していくことだ。いまや、かつてなく多くの北朝鮮人が、政府が植え付けた神話と現実間のギャップを認識している。

解体する米韓同盟
―― 変化するアメリカの国防戦略

2020年8月号

スー・ミ・テリー  戦略国際問題研究所  シニアフェロー

北朝鮮との取引を無謀に模索する一方で、トランプはソウルとの関係に大きなダメージを与えた。北朝鮮の核兵器は手つかずのままだが、ボルトン回顧録が明らかにしている通り、長くアジアにおけるアメリカの防衛戦略の要だった米韓同盟は、トランプが再選されれば、もはや生き残れないかもしれない。米軍は「韓国を守るために」現地に駐留しており、この保護の代価として韓国はアメリカにより多くを支払うべきだとトランプは信じている。ボルトンによると、トランプは、アメリカ政府が部隊派遣からきちんとした利益を確保できるように、同盟国は「コストプラス50%」を支払うべきだと考えている。当然、韓国のアメリカへの信頼はひどく揺るがされており、かつてのような関係に戻ることは、おそらくないだろう。

アフター・キム・ジョンウン
―― 北朝鮮の後継危機に備えよ

2020年6月号

カトリン・フレイザー・カッツ  元アメリカ国家安全保障会議スタッフ ビクター・チャ  ジョージタウン大学教授

肥満、ヘビースモーキング、飲酒に加えて、腎臓や心疾患などの家族歴を抱えていることからみても、金正恩が4月に一時的に姿を消したのは、重大な健康問題のせいだった考えてもおかしくはない。彼が後継者を指名せずに急死したり、支配権を確立できない後継者を指名したりすれば、半島情勢が大きく不安定化する恐れがある。核兵器の管理、人道危機、難民危機を回避するための対応計画を準備しておくべきだし、状況を安定させようとする試みが侵略と誤解されないように配慮する必要もある。厄介なのは、米韓、日韓、米中と、それぞれが外交課題を抱え、しかも、北朝鮮をどう捉えるかに関するセンシティビティとプライオリティに違いがあることだ。・・・・

平壌とコロナウイルス
―― ウイルスと経済と体制危機

2020年4月号

スー・ミ・テリー  戦略国際問題研究所  シニアフェロー

コロナウイルスの侵入を警戒する北朝鮮は、国境線を封鎖し、あらゆるツーリズムを停止し、外国人のすべてに行動制限を課している。多くの公共サイトを閉鎖し、あらゆる学校を1カ月にわたって閉鎖している。こうした措置を続ければ、ウイルスの脅威は抑え込めても、経済的に追い込まれ、平壌の体制基盤が損なわれることになる。一方、北朝鮮にウイルスが入り込めば、感染は急速な広がりをみせるだろう。北朝鮮人口の43%(1100万人)が栄養失調に陥り、体力と抵抗力を失っており、この状況で感染症ウイルスが入り込めば、ひとたまりもない。しかも、この国にはパンデミックと闘うインフラはなく、病院システムはほとんど機能しておらず、医薬品も不足している。

CFRブリーフィング
北朝鮮経済制裁とイランの核問題の行方

2006年11月号

ライオネル・ビーナー  CFR スタッフライター 

今後、北朝鮮に対する厳格な制裁措置が間違いなく履行されていけば、イランも考えを改めるかもしれないが、現実にそうなるとは思えないし、中国とロシアが、イランに対して強硬な路線へとシフトするとも考えにくい。むしろイランの交渉上の立場は今後強まっていくと考える専門家は多い。北朝鮮は核不拡散条約(NPT)から離脱し、公然と核開発の意図を表明し、プルトニウムの再処理を通じた核分裂物質の生産を試みていたが、イランの場合、ウラン濃縮による核分裂物質の生産を試みているとはいえ、今もNPTに加盟しており、核兵器の開発ではなく、核の平和利用を目指していると繰り返し表明している。ブッシュ政権の高官のなかには、イランのような核開発の初期段階にある相手には、外交的に対処したほうが成果を期待できると考える者もいる。

Page Top