イスラエル : 成功の代償
1999年2月号

建国から五十年を経たイスラエルは、その成功ゆえのジレンマに直面している。五十年前と比べれば、パレスチナや近隣のアラブ諸国との関係も改善し、経済も格段に進歩した。だが、敵に囲まれた状態でつくられた軍のシステムはしだいに社会とのバランスが悪くなり、一方で、宗教的に敬虔な人々と世俗的な人々の対立も先鋭化しつつある。さらに、移民の波によって社会は多様化し、しかも今やアメリカ化が支配的な社会潮流だ。「困難な状況にあるユダヤ人が避難できる国家」は、すでに完成している。であればこそ、互いに錯綜する社会・経済・軍事上の変化を受けて、この国の「存在理由」が問われている。つまり、「ユダヤ人とは何者か」というポスト・シオニズム的なアイデンティティー上の命題である。この五十年間のイスラエルの成功が導いたこの実存主義的命題に、イスラエルはどのような答えを出すのだろうか。