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中東に関する論文

マドラサは本当に脅威なのか
 ――イスラム過激主義とマドラサ

2006年2月号

イギリス外務連邦省 アレキサンダー・エバンス

専門家たちは、パキスタンのマドラサが黒幕であるとみられる比較的少数の紛争やテロの事例を基に、すべてのマドラサが狂信主義を子供たちに植え付けていると判断してしまっている。だが実際のマドラサはわれわれがイメージするようなものではない。南アジアの村の子供たちの多くにとって、マドラサは読み書きを習える唯一の場所だし、マドラサは親を失った子供たちや貧困家庭の子供たちの多くに社会サービスを提供している。マドラサに対して上から何かを強制し、締め付けるのではなく、マドラサ内部での改革を促す必要がある。

CFRインタビュー
それでもイラクの政治プロセスは破綻しない

2006年2月号

W・パトリック・ランゲ 前米国防情報庁中東・対テロ部長

シーア派の聖地であるアスカリ聖廟が爆破された事件によって、シーア派とスンニ派間の紛争が誘発され、すでに有力なスンニ派指導者を含む165人が犠牲になっている。イラクの暴力レベルがかつてないほどに高まり、無秩序状態に陥るなか、シーア派の指導者はシーア派の群衆に自重を呼びかけている。メディアはイラクが内戦に陥る危険を指摘し、ニューヨーク・タイムズ紙も「政治交渉は崩壊した」と伝えた。しかし、米国防情報庁の前中東・対テロ部長のW・パトリック・ランゲは、こうした見方には与しない。これまではシーア派が大規模な反撃を慎んできただけの話で、実際には、イラクでは長く宗派間紛争による内戦状態にあったとみるランゲは、「宗派間紛争はいずれ下火になっていき、シーア派は今後も政治権力の基盤固めに取り組み、スンニ派は政府にゲリラ戦争を挑み続けるだろう」と今後を分析した。聞き手はリオネル・ビーナー(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRインタビュー
イラクの今後を左右する
スンニ派とシーア派の関係

2006年2月号

シブリー・テルハミ メリーランド大学教授

「少数派に歩み寄ってこそ、多数派としての価値を生かせるようになる。イラクのシーア派もイラク統一を望むのなら、未来に思いをめぐらして今を考え、少数派のスンニ派に手を差し伸べるべきだろう」。アラブ政治の専門家シブリー・テルハミはこう指摘しつつも、イラクの今後は楽観を許さないとみる。「現時点では、スンニ派の指導者のなかに、シーア派との妥協を受け入れるという英断を下せるような人物はみあたらないし、シーア派の指導者のなかにも、スンニ派に妥協を提示できるような人物はおらず、依然として、イラクの政治は民族や宗派で規定されている」と彼は指摘する。イラク中部にあるシーア派の聖地「アスカリ聖廟」の爆破事件の余波のなか、2月下旬にはシーア派の武装手段がスンニ派モスクを襲撃する事件が頻発し、いまやスンニ派とシーア派の緊張は一層高まっている。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRインタビュー
イラン核開発問題をめぐる米欧協調の危うさ
―― 打開の鍵をにぎるのはロシアだ

2006年1月号

リー・フェイシュタイン 米外交問題評議会シニア・フェロー

現在のところ、イランの核開発問題に対して共同歩調をとっているとはいえ、アメリカとヨーロッパの脅威認識にはかなりの気温差がある。「ヨーロッパ人はすでに対イラン貿易制裁には反対すると表明している」。リー・フェイシュタイン(米外交問題評議会<CFR>シニア・フェロー)は、イランの核開発の脅威の本質、切迫性をめぐって、米欧の認識は大きく違っているし、米欧は経済制裁の効果についても違う意見を持っていると指摘し、今後もアメリカとヨーロッパが同じ土俵に立ち続けることができるかどうかを疑問視する。むしろ、イラン問題をめぐって何らかの進展が期待できるのは、ロシアでウラン濃縮の合弁事業を立ち上げる妥協案が進展した場合だろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
邦訳文は英文からの抜粋。

CFRインタビュー
イランの核開発問題
―― ロシア案の受け入れか、安保理付託か

2006年1月号

ジョセフ・シリンシオーネ カーネギー国際平和財団 核不拡散研究プロジェクト・ディレクター

すこしばかり核開発計画を先にすすめ……それで、ヨーロッパが立場を後退させるかどうか、「状況を容認するか、あるいは、状況を批判しつつも具体的行動はとらないか」を見極めるという戦術をこれまでテヘランは慎重に試みてきた。イランの核開発に向けた戦術をこう分析するジョセフ・シリンシオーネ(カーネギー国際平和財団の核不拡散研究プロジェクト・ディレクター)は、だが今回ばかりは、イランは強硬な発言を繰り返すことで、ヨーロッパの出方を見誤ったとみる。「一線を越えないように配慮しつつ、核兵器開発に必要な全技術を獲得すること」がテヘランの戦術であるにも関わらず、アフマディネジャド大統領は、「平和利用という自分たちの主張に酔いしれるあまり」、あるいは、「国内政治面での窮状を打開しようと」、今回は、勇み足を踏んだと分析する。安保理への付託か、ロシア案の受け入れか。その大きな鍵を握るのはロシアになるとシリンシオーネは語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

民主化途上にある国の危うさ
――イラク民主化構想の落とし穴

2006年1月号

ジョン・M・オーウェン/バージニア大学準教授

民主主義国家どうしは戦争をしないと言われる。だが、選挙は実施したものの、(独立した司法制度、軍の文民統治、複数政党制、報道の自由など)政府の説明責任を問うための適切な制度を確立していない「民主化の途上にある国」の政治家は、他国と領土論争を展開し、外国人に対する不満を煽れば、市民の支持を得やすいことを理解しており、あえて、戦争のリスクを高めるような政策をとりがちだ。民主主義国家どうしは戦争をしないという理論を前提に、イラクへと足を踏み込んだブッシュ政権は、国際政治理論のどの部分を誤解していたのか。イラクはまさに中途半端な民主主義国家になろうとしているのではないか。

CFRミーテ ィ ング
IEAチーフエコノミストが語る、 世界のエネルギー需給見通し

2005年12月号

ファティ・バイロル スピーカー 国際エネルギー機関 (IEA) 経済分析部長  司会  ニューヨークタイムズ記者  ジャド・モーアワッド

「この5~6年をみると、世界の石油の需要増のほぼすべては交通・運輸部門の需要増大によるもので、これはかつてとは違うパターンだ。これまでは、産業、電力生産、家庭での需要増がその内訳だったが、いまや、需要増のほぼすべてが交通・運輸部門の需要増大に引きずられている。だが、この部門を石油以外のエネルギー資源へと移行させていくのは容易ではない。いかなるシナリオをたどっても、今後中東と北アフリカMENA の世界の石油供給にしめるシェアはますます増大していく」(F・バイロル)

イラク・シンドローム

2005年12月号

ジョン・ミューラー オハイオ州立大学教授

米兵犠牲者の増大とともに、世論の戦争への支持は低下する。そして、こうした戦争への支持率の低下を挽回するために大統領にできることはほとんど何もないし、支持率の低下は、戦争が終わっ ても歯止めが利かない。こうして、戦争後にはアメリカ社会での対外介入への嫌悪感が高まる。すでにイラク・シンドロームとでもいうべき対外介入を嫌悪する感情が高まりをみせつつある。対外介入を忌み嫌う戦後のシンドロームによって大きく損なわれるのは、ブッシュ・ドクトリン、単独行動主義、先制攻撃、予防戦争、そして世界にとって不可欠の国としてのアメリカという自己イメージに他ならない。とすれば、イラク戦争から最終的にもっとも大きな利益を引き出しているのは、イラク同様に悪の枢軸と名指しされた国々なのかもしれない。

M・レアードが回顧するイラク戦争とベトナムの教訓(上)

2005年11月号

メルビン・R・レアード/ニクソン政権国防長官

ベトナムの屈辱とは、われわれがベトナムに介入したことではなく、最終的にわれわれが同盟勢力を裏切ってしまったことだ。パリ協定の約束に背を向けて、米議会が南ベトナムへの援助を打ち切ったために南ベトナム軍は総崩れになり、結局は崩壊した。イラク戦争にも同じことが言える。米政府と議会の連帯を維持することが、イラクでの対ゲリラ戦を遂行するうえでも非常に重要である。アメリカのイラクへのコミットメントが、将来においても尊重されるように、それが何を意味するかを現在理解しておく必要がある。イラク問題に関するアメリカ国内での論争は、議会と政府間の連帯を損ない、ゲリラ勢力に希望を与え、イラクに送り込まれているアメリカの兵士たちを危機にさらすだけだ。

イラク連合国家構想を推進せよ

2005年11月号

レスリー・ゲルブ/米外交問題評議会名誉会長
ジュディ・ウッドルフ/前CNNアンカーパーソン

イラクはすでに三つの地域に分裂している。米軍がイラクに駐留する限り、ゲリラ勢力が勝利を手にすることはないが、北部、中央部、南部の三つの地域間の主要勢力間の政治的取り決めが成立しない限り、われわれがイラクで勝利を勝ち取ることはできない。そして、クルド人、シーア派、スンニ派という三つの集団間の政治的取り決めの切り札が、連合国家としての枠内でイラクの3地域に大幅な自治権を与えることだ。すでにこの方向での流れが生まれつつある。

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