1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

中東に関する論文

原油価格高騰の真相

2006年4月号

レオナルド・モーゲリ
ENI企業戦略企画担当上席副社長

悲観論者たちは、世界の資源はすでに開発し尽くされており、原油価格のダイナミクスや技術の発展も石油資源の「限界」を覆すことはできないと考えている。たしかに石油の消費が増加の一途をたどっている以上、既存の石油資源に関しては必然的に枯渇に近づいている。だが、科学を装った「資源枯渇」という悲観論者の宿命論は、これまで幾度となく間違っていたことが実証されている。この20年にわたって石油関連投資がないがしろにされてきた結果の原油不足に、中国などの需要増が追い打ちをかけているというのが真実に他ならない。石油資源は潤沢にあるし、今回の原油高騰を例外的な現象とみなすのは間違っている。

CFRインタビュー
イランの核開発を警戒するサウジアラビア

2006年4月号

レイチェル・ブロンソン CFRシニア・フェロー

サウジアラビアはかつてはイスラエルを念頭に、中東の非核化を唱えていたが、いまや東方のイランを念頭に、ペルシャ湾岸の非核化を求めている。「リヤドはテヘラン、そして、アフマディネジャド大統領の行動を非常に心配している」と語るレイチェル・ブロンソン(CFRシニア・フェロー)は、歴史的にみても、アフガニスタンでの聖戦、最終的に9・11へとつながっていった1980年代以降の「サウジの保守化路線」は、革命イランに対抗するためにサウジの社会的な結束を強化するという意図に導かれていたと指摘する。核開発問題だけでなく、「アフガニスタン、イラクでの影響力を拡大したイランが、レバノンだけでなく、パレスチナ(ハマス政権)への影響力を高めつつある」ことをサウジは特に憂慮していると同氏は状況を分析する。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
イランの核開発路線の意図は何か
―― 分裂する政府と社会

2006年4月号

パトリック・クローソン スピーカー 近東政策ワシントン研究所 研究担当副所長
マフムード・サリオガラム  イラン国立大学国際関係学教授
カリム・サジャドプアー 国際危機グループ
デボラ・アモス 司会 米公共ラジオ放送(NPR) 

「やっかいなのは、イランの大統領が、欧米との摩擦など気にする必要はないし、むしろ、1979年のイスラム革命の熱情を今に呼び起こすには対立路線が好都合だと考えていることだ」。(P・クローソン)

「大多数のイラン人は経済発展を目指し、経済国家、それも国際的に認知される経済国家になるべきだと考えている。したがって、概念的にも知的にも、イランの政府と社会が何をもっとも重要と考えるかについて大きな開きがある」。(M・サリオガラム)

「現在テヘランは精神分裂症的な状況に陥っている。原油価格の高騰を前に、彼らは大胆になっているが、一方で自分たちの弱さも理解しており、懸念を募らせている部分もある。イラン政府の官僚と話をすると『われわれは米軍に包囲されていることを理解している』と言う」。(K・サジャドプアー)

CFRブリーフィング
戦争から3年を経たイラクを検証する

2006年3月号

ヒラリー・シンノット 前暫定占領当局(CPA)南部担当コーディネター。英国国際戦略研究所コンサルティング・シニアフェロー ニール・ローゼン ニュー・アメリカ財団研究員、『イラクにおける「殉教者」の勝利』が近く出版予定。 マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所シニア・フェロー マリナ・オッタウェイ カーネギー国際平和財団シニア・アソシエーツ マイケル・ルービン 中東クォータリー誌編集長、アメリカン・エンタープライズ研究所のレジデントスカラー 

ゲリラ勢力がシーア派の聖地であるアスカリ聖廟(せいびょう)を爆破したことをきっかけに、イラク戦争後最悪の紛争がイランで発生し、すでに数百人のイラク人が犠牲になっている。「イラクは低強度紛争状態にある」とみなす専門家も多い。一方で、すでにイラクでの流れは変化し、スンニ派、シーア派の武装組織の攻撃の応酬がすでにかつてのレバノンのような暴力の連鎖と無秩序をつくり出しているとみる専門家もいる。ここで考えるべきは、「米軍部隊がバグダッドに攻め入ってから3年、ワシントンがこの戦争に勝利しつつあるのか、それとも敗れつつあるのか」という設問だろう。情勢はさらなる混乱へと向かうのか、それとも、アメリカの行動には関係なく、何とか管理できる紛争、低強度紛争が今後も続くのか。

CFRインタビュー
ハマスに穏健化の兆しなし

2006年3月号

近東政策ワシントン研究所上席研究員 マシュー・レビット

ハマスは、軍事部門と政治部門をもつレバノンのヒズボラをモデルに活動を進めていくことをすでに決めており、政権を担うからといってハマスが今後穏健化していくとは考えられない。テロ問題の専門家マシュー・レビットは、その証拠として、ハマスが、テロ部門に加えて選挙の数カ月前に立ち上げを表明した常設軍事部門のカッサム旅団は、南レバノンにおけるヒズボラの常設軍と似ているし、アル・アクサ・テレビの開局計画も、ヒズボラの衛星テレビ局・アルマナルを真似たものだと指摘する。「ハマスは権力を利用して、西岸とガザ地区における政治プレイヤーとしての地位固めをしたいと考えており、パレスチナの治安部隊も自分たちの軍事部門に組み込んでいくつもりだ」と今後を予測するレビットは、いずれパレスチナの有権者が、ハマスの路線を支持するのか、それとも、「パレスチナに平和と繁栄をもたらすような路線」を支持するのかを選択することになるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRブリーフィング
有志同盟による対イラン経済制裁か

2006年3月号

Robert McMahon(Deputy Editor, www.cfr.org)

イランの核開発問題が国連安保理に付託され、テヘランにウラン濃縮をやめさせるための経済制裁をとりまとめられるかどうかが注目を集めている。アメリカとヨーロッパの外交官たちは、イランに圧力をかけるには安保理として何らかの行動を示す必要があると考えているが、イランと経済的に深い絆をもつロシアと中国は、イラン危機への対処策として経済制裁を導入することを事実上拒否している。このため、国連安保理の枠外での経済制裁に向けた多国間連帯をまとめることを求める専門家もいる。例えば、核不拡散政策教育センター所長のヘンリー・ソコルスキーは、イラン経済にとって非常に重要な工作機械や物質を輸出しているイタリア、ドイツ、フランスの禁輸措置への協力が特に重要だとし、イランが国内用原油の精製について外国に依存していることに注目すべきだと指摘する。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

CFRタスクフォース・リポート
イランの核開発危機を検証する

2006年3月号

パネリスト 米外交問題評議会(CFR) シニア・フェロー(科学技術担当) チャールズ・D・ファーガソン CFRシニア・フェロー(ロシア・ユーラシア担当) スティーブ・R・セスタノビッチ CFRシニア・フェロー(中東担当) レイ・タキー プロジェクト・ディレクター CFRシニア・フェロー リー・フェインシュタイン

イランは核開発と国家アイデンティティーを重ね合わせだしている。核開発はタカ派政権のアジェンダではなく、イランの国家的なアジェンダになりつつある。(R・タキー)

イランへの軍事攻撃の可能性は低い。……ブッシュ大統領は「イランの核の平和利用は認める」とすでに発言しているし、ロシアが示している妥協案にも前向きだからだ。(C・ファーガソン)

ロシアの目的はイランから(核開発放棄の)合意を引き出すことにあるのか、それとも玉虫色の発言を引き出すことにあるのか、はっきりしない。(S・セスタノビッチ)

NPTを踏みにじっているにもかかわらず、イランは「自分たちはNPTで認められた核の平和利用を行う権利をもつ」と争点をすり替えている。(L・フェインシュタイン)

膨大な石油資源を持ちながらも、治安問題、インフラの不備、さらには法環境の整備がまだできていないために、イラクは実質的に石油を輸入している状態にある。大手外国資本も、治安問題ゆえにイラク石油資源への投資にはまだ乗り気ではない。さらにやっかいなのは、石油からの歳入をどう分配するかについて国内的な対立があることだ。石油資源豊かな北部と南部では、連邦政府が管理するのは既存の油田だけなのか、これから発見される油田も含むのかをめぐって論争が起きているし、すでにスンニ派は、クルド人がバグダッドを迂回して、外国の石油企業と開発合意を交渉するのは憲法に反すると批判している。

CFRインタビュー
ポール・ブレマーが回顧するイラク占領

2006年2月号

ポール・ブレマー 前暫定占領当局(CPA)代表

米兵力の増強を認めないペンタゴンとの対立、旧イラク軍解体と新イラク軍創設の真相、イラク統治評議会(IGC)はなぜ機能せず、ゲリラ勢力に対する作戦はなぜうまくすすまなかったか。2003年5月からイラクが主権を回復する04年6月まで暫定占領当局(CPA)代表を務めたポール・ブレマーが回顧するイラク占領の真実。05年1月にイラク占領の回顧録(My Year in Iraq: The Struggle to Build a Future of Hope)を出版したブレマーは、H・キッシンジャー元国務長官の秘書官、駐オランダ米大使などを務めた国務省官僚で、テロ問題の専門家。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

新生イラクにおける女性とイスラム

2006年2月号

イソベル・コールマン 米外交問題評議会シニア・フェロー

イスラム法を重視する憲法が導入されたことで、イラクはタリバーン時代のアフガニスタンのような原理主義、あるいはイランのような神権政治へと回帰し、女性に対する差別と抑圧がイスラムの名の下に正当化されてしまうのだろうか。「憲法がイスラム法重視をうたっているからといって、直ちにイラク人女性が難しい状況に置かれるわけではない」とコールマンはみる。どのようなイスラム法の解釈が新生イラクの法制度において優先されるかで道は分かれる、と。イスラム保守派人口が多い環境のなかでは、西洋の論理を振りかざすのではなく、イスラム法解釈の枠内で、シャリアの進歩的解釈を盾にイスラム改革をめざすべきだ、と彼女は提言する。

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