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中東に関する論文

米英の政府関係者は、ここにきて、「イランがタリバーンに武器を提供している証拠が出てきている」と相次いで発言している。だが、シーア派のイランが、スンニ派が主体のタリバーンを支援する必然性が本当にあるだろうかという大きな疑問がある。一方で、タリバーンを短期的に支えることはイランの利益になると指摘する専門家もいる。タリバーンを支援することで、アメリカの戦力バランスを崩すとともに、自国の核開発に寄せられている国際的関心と批判を低下させることができれば、それは、テヘランにプラスに作用する。歴史的にイランとアフガニスタンは複雑な関係にあるが、2001年のタリバーン政権崩壊以降は、少なくとも、両国間の商取引、文化的な交流は進んできたし、イランはカルザイ政権を支援してきた。米英が主張するように、イランがタリバーンに兵器を提供しているとすれば、その思惑は何なのか。米英の批判に対して、イラン政府は「根拠がない」と反論している。

CFRインタビュー
ガザは孤立しても、ハマスは封じ込められない
 ――二極化するパレスチナ

2007年6月号

アンソニー・コーデスマン 戦略問題国際研究所 戦略問題担当議長

先月号に掲載した「パレスチナ危機のなか、なぜ中東和平への機運が高まっているのか」でマーチン・インディクは、「国際社会の支援をバックにファタハが治安部門の強化を図っていることに危機感を募らせたハマスは、ファタハが力をつける前に粉砕しておく必要があると判断し、その結果、パレスチナは内戦状況に陥った」と分析した。インディクの予想通り、いまやファタハはガザ地区への影響力を失い、「西岸はファタハが、ガザ地区はハマスが支配する」という分断状況に陥っている。戦略国際問題研究所(CSIS)の中東問題の専門家であるアンソニー・コーデスマンは、ファタハによる統治がこれまで腐敗し、効率に欠けていたことを思えば、ハマスをガザに封じ込められるとは考えにくいと指摘し、今後、ハマスが力を得ていく可能性を示唆する。西岸(ファタハ、自治政府)とイスラエルの協調が進む可能性はあるとしても、パレスチナの二極化は当面続き、これが「イスラエル、アメリカ、西岸」と「イラン、シリア、ヒズボラ」の国際的対立として、広がりをみせていく危険もある。コーデスマンは二極化によって「パレスチナで大規模な紛争が起きるとは考えにくいが、パキスタンからアルジェリアにいたる一連の地域がますます不安定化する危険がある」と指摘した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

アルカイダ・ストライクスバック

2007年6月号

ブルース・リーデル ブルッキングス研究所 セバン中東研究センターシニア・フェロー

現在のアルカイダは、パキスタンに非常にすぐれたプロパガンダチームを擁し、グローバルな活動能力を持つテロネットワークである。二次的な独立拠点をイラクに持ち、ヨーロッパへの影響力も強めている。指導層はほぼ手つかずのままで存続している。指揮統制系統を分散化し、意見決定を下位委譲しているために、ザルカウィのような主要なプレーヤーが死亡しても、生き残り、活動を継続できる。同盟勢力であるタリバーンもアフガニスタンで再び影響力を強めている。一方、混沌とした状況をつくりだしてしまったアメリカのイラク占領はビンラディンの計画を先に進めるのに手を貸してしまっている。ビンラディンはかねて、「イラク」をアメリカを陥れる罠にしようと試みてきたが、いまや戦略を拡大し、アメリカとイランを戦争へと向かわせようと画策しているようだ。

穏健派ムスリム同胞団との対話を試みよ

2007年6月号

ロバート・S・レイケン ニクソン・センター、 移民・国家安全保障プログラムディレクター
スティーブン・ブルック ニクソン・センター、リサーチアソシエート

ザワヒリのようなジハード戦士たちは、ムスリム同胞団のことを、「グローバルなジハード(世界聖戦)を拒絶して、民主主義を擁護する」団体とみなし、毛嫌いしている。そうだとすれば、同胞団はまさにアメリカがイスラム世界で必要としている味方、つまりイスラム「穏健派」ではないのか。同胞団を理解する最初のステップは二つ。まずは同胞団を、急進的イスラム主義から離して考えること。次に、異なる国々で活動する同胞団系列のグループの間には、大きな違いが存在することを知ることだ。これらの多様性は、ワシントンが「同胞団」に対して是々非々のアプローチをとる必要があることを示唆している。

石油シーレーンの安全確保と海軍力

2007年5月号

デニス・C・ブレア 元米太平洋軍司令官
ケネス・リーバーサル ミシガン大学政治学教授

ますます多くの国が中東からの輸入石油への依存を高めるなか、グローバルな石油シーレーンの安全確保が注目されるようになり、中国やインドのように、石油タンカーを守るために外洋展開型海軍の整備を検討している国もある。だが一般に考えられているのとは逆に、テロ集団の行動や紛争によって、石油シーレーンの航行が脅かされるリスクはかなり小さくなってきている。タンカーが大型化し頑丈につくられるようになったために、機雷、潜水艦、そしてミサイル攻撃に対しても打たれ強くなっているし、仮にテロリストが石油タンカーをシンガポール海峡に沈めることに成功しても、海峡を封鎖できるわけではない。唯一、海洋の交通路を完全に遮断する力を持つ米海軍も、公海上の航行の安全を守ることを心がけており、国際輸送に干渉するような行動をとることはあり得ない。

キャンペーン2008
大統領選挙の争点としてのイラク

2007年5月号

ジェームズ・リンゼー テキサス大学ロバート・ストラウスセンター・ディレクター

ヒラリー・クリントン上院議員やジョセフ・バイデン上院議員のような中道派の候補者たちも、しだいに現政権の路線を敵視する民主党左派の立場に歩み寄りつつある。その理由を、前米外交問題評議会(CFR)研究部長で現在テキサス大学のロバート・ストラウスセンターのディレクターを務めるジェームズ・リンゼーは、「民主党指導層がイラクからの米軍撤退をはっきりと求め、イラク情勢が改善していないどころか、悪化しつつある以上、党内左派の立場に中道派の候補もすり寄っていくしかない」と説明する。しかし、本質的には「民主党指導層の共感を勝ち取りつつも、より広範な市民層にアピールするようなメッセージをいかに考案するか、つまり、予備選で党内の支持を取り付けつつも、指名を受けた後の本選挙で不利にならないようなバランスのあるメッセージをどのように考案するかという課題に直面している」と同氏は言う。誰が大統領になろうと、イラクからの米軍の大幅な撤退はもはや既定路線であり、「今後18カ月間のうちに、これまでにわれわれがイラクで犯した間違いの余波を封じ込めるために軍事的、外交的、経済的に何をすべきか、何を準備しておくかを考えなければならない」と指摘し、イラクを中心とするペルシャ湾岸地域の地政学的安定をどう確保するのか、石油資源へのアクセス、人権問題をどうするかを考えておく必要がある」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
流動化するパキスタン情勢
――国内暴動で追い込まれたムシャラフ大統領の選択

2007年5月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

「大統領と軍参謀長を兼務したままで再選を目指しているムシャラフの行く手を、チョードリ最高裁長官が法的に遮ろうとするのではないかとムシャラフ政権が懸念したことが、彼を停職処分にした本当の理由ではないか」。3月にチョードリ長官を停職処分としたことに端を発するパキスタン国内の暴動の背景をこう説明する米外交問題評議会(CFR)の中央アジア専門家、ダニエル・マーキーは、「ムシャラフが軍参謀長、大統領ポストのいずれかを辞するか、憲法の改正、修正を目指すかのいずれかしか道はなくなってきている」と指摘する。もっとも好ましいのは、「軍参謀長ポストを辞することだが、パキスタンの場合、むしろ、権力の中枢を担ってきたのは、大統領よりも軍の参謀長だった」とこの問題が極めて複雑であることをマーキーは示唆する。心配なのは、カラチで40人を超える人々が犠牲になった今回の暴動が、今後制御できない状況へと陥っていくことで、「私はこの点での懸念を、パキスタンに行ってますます強めた」と同氏は語っている。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター

CFRディベート
パキスタンは国境地帯の
安定確保に手を尽くしているのか

2007年5月号

◆混乱の責任はパキスタンにある◆
ビル・ロッジョ ジャーナリスト
◇混乱の責任はパキスタン、アフガンの双方にある◇
キャシー・ギャノン 元AP通信アフガニスタン・ パキスタン支局長

アフガニスタンが混迷から抜け出せずにいる理由は何か。アフガニスタンと国境を接するパキスタンの国境地帯(部族地域)にタリバーンやアルカイダが聖域を持つことをパキスタンが事実上認めているからなのか、それとも、アフガン政府が統治体制を確立できていないことが、この国が無法地帯と化している根本の原因なのか。専門家の間でも意見は分かれている。アフガンに展開する北大西洋条約機構(NATO)軍がいくらアフガン国内でタリバーンやアルカイダをたたいても、武装勢力はパキスタン国内に一時的に撤退し、態勢を整えて、再度国境線を越えて攻撃してくることが問題だとみる専門家もいれば、アフガン政府が事実上軍閥たちに支配されていることを問題視する専門家もいる。「アフガンを失わないため」には何が必要か、タリバーンが攻勢を強めるなか、国際社会は大きな決断を迫られている。

CFRインタビュー
パレスチナ危機のなか、
なぜ中東和平への機運が高まっているのか

2007年5月号

マーチン・インディク ブルックングス研究所 セバン中東研究センター・ディレクター

国際社会の支援をバックに治安能力の整備を進めていたファタハに危機感を募らせたハマスは、「ファタハが力をつける前に相手を粉砕しておく必要があると考え、その結果、ガザでハマスとファタハ間の内戦が起きてしまった。ハマスは、ファタハを攻撃するとともに、ガザ地区からのロケット弾によるイスラエル攻撃を激化させ、一方ではガザの民衆にイスラエルという敵対勢力に対して団結することを呼びかけている」。現在のイスラエルとガザの間で起きていることをこう分析する中東問題の専門家、マーチン・インディクは、ハマスによるイスラエル攻撃は、「本当の問題に目がいかないようにするためのハマスの陽動作戦だった」と指摘する。だが、こうした危機のさなかに、中東和平の機運が高まっている。「イラクの混迷が続いているためにイランが強大化することへの懸念が高まり、その結果、中東和平への機運が高まっている部分がある」。サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、その他のスンニ派国家は、イランの強大化に対抗するためにも、イスラエルとの関係を修復していくのは、自分たちの利益になると考えだしたからだ。インディクは、中東和平に向けたすぐれた戦略環境が存在すると指摘しつつも、「パレスチナ側に、信頼でき、力を持つパートナーが誕生しない限り、こうした戦略的好機を生かすこともできない」と語った。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
なぜパキスタンは タリバーン対策に
乗り気ではないか

2007年4月号

ダニエル・マーキー 米外交問題評議会シニア・フェロー (インド、パキスタン、南アジア担当)

アフガニスタンとの国境地帯にあるパキスタンの部族地域は、いまやタリバーンやアルカイダの聖域とされている。イスラム過激派は、この部族地域を拠点にアフガニスタンへの攻撃を繰り返しており、アフガニスタンだけでなく、アメリカも部族地域をうまく管理できないパキスタンに対する不満を高めつつある。一度は国軍を部族地域に投入したパキスタンだが、現地での駐留が長引くにつれて、部族地域の住民の反発を買うようになったため、「政府の代理人と部族長の交渉」という従来の路線に戻る一方で、「部族地域の治安部隊を強化して、こうした部隊がテロリストや民兵を取り締まることを期待している」。だが、「地方に配備されているパキスタンの治安部隊は装備も貧弱で、自動小銃で武装したアルカイダがジープで走り去るのを、50年前の銃を抱えて見逃すしかない状況だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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