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日本に関する論文

変化する北東アジアに
アメリカはどう関与すべきか
 ――日中韓の台頭で流動化する北東アジア秩序

2007年11月号

ジェーソン・T・シャプレン 元朝鮮半島エネルギー開発機構政策顧問
ジェームズ・T・レーニー 元駐韓アメリカ大使

いまや、北東アジアには、危険なダイナミクスが出現している。いずれもパワフルでナショナリスティック、しかも反目の歴史を持つ中国、日本、韓国という3カ国が、同時に対外的低姿勢の時代を脱して覚醒しつつあり、パワーを競い合っている。この半世紀にわたって、アメリカは日本、韓国との関係を、北東アジア政策の基盤とし、日韓との関係を基盤に中国とのアジェンダも規定されると考えてきた。だが、そうした前提はすでに崩れ去っている。中国が、独自のコースを描けるような環境づくりにすでに成功している以上、日韓との2国間関係だけでは、今後の北東アジアにおけるアメリカのパワーの十分な基盤にはなり得ない。北東アジアのパワーバランスは変化しており、アメリカは、そうした変化を促している経済、安全保障、人口動態、ナショナリズムという各ファクター、さらには、中国が外交攻勢を強めているという事実を踏まえた、包括的で一貫性のある一連の政策をとる必要がある。

Classic Selection
21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか

2007年8月号

アザル・ガット テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

安倍政権は改革政権となれるのか

2007年3月号

リチャード・カッツ/オリエンタル・エコノミスト・レポート共同編集長
ピーター・エニス/オリエンタル・エコノミスト・レポート共同編集長

2005年の衆議院選挙で立証されたように、市民は改革路線を強く支持しているにもかかわらず、小泉がつくりだした改革の流れが鈍化するか、停止しかねないリスクが現に存在する。安倍の関心はもっぱら外交と社会政策に向けられており、経済には目を向けていないからだ。しかし、日本経済の再生はとうてい本物とは言い難く、改革を続けない限り、再度漂流しだすことになる。しかし、安倍の野心的な安全保障目標が、日本の経済的必要性を満たす糸口をつくりだすかもしれない。中国への対抗バランスを形成したい安倍は、例えば、オーストラリアとの自由貿易合意の締結にも意欲をみせているし、そうした合意を実現するには、農業部門の障壁その他をめぐって妥協しなければならず、それが日本経済を上向かせることにもつながるからだ。明らかなのは、安倍が改革に向けた行動を起こさなければ、政権は短命に終わるかもしれないし、日本の影響力も低下していくということだ。

5年前アメリカの研究者は、安倍政権と日本をどうみていたか
――安倍政権のアジェンダ

2007年3月号

◎スピーカー
ケント・E・カルダー
ジョンズ・ホプキンス大学教授
ライシャワー・センター所長
マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所(CSIS)
日本部長
◎司会
マーク・マニーン
米議会調査局(CRS)
アジア担当研究員

安倍政権は、オーストラリアとの安全保障関係、インドネシアとのパートナーシップを形成し、国際環境を形づくるために「民主主義と市場経済」というグローバルな規範を持ち出し、これまでの経済的影響力だけをツールとする戦略を一新した。その背景には、経済的ツールだけではもはや国際環境に対処できないという読みがある。……ある人にとってのナショナリズムが他の人にとっての愛国主義であることもある。安倍首相が求めている国家としての誇り・プライドについては、アメリカ人も理解している。日本人に……誇りを持って欲しいし、日本が国際的な役割を果たし、繁栄と安定の要として機能して欲しいと願っている。(M・グリーン)

政治構造的に、日本が将来を見据えた決意ある政策を表明することはあり得ない。選挙制度、政治的伝統その他の要因によって、日本の政策決定はどうしても視野の狭いものになりがちだ。国内志向が強いということもできる。潜在的なパートナーとしての日本という点では……日米関係が、米英関係のような存在になるとは考えにくいと私は思う。……文化的な違いゆえに、日本は経済領域を中心としたパートナーに留まると思う。(K・カルダー)

復活した日本と現実主義外交の伝統

2007年3月号

マイケル・グリーン
戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長

日本の最大の強みは、国力を構成する軍事、経済、文化その他の要因を時代に即してうまく再定義してきたことにあり、小泉政権以降の日本政府は、アジアにおける主要なプレーヤーとしての地位を維持していこうと、新たな国力構成領域での強さを培いつつある。若手政治家たちは、日米同盟が両国にとってもっとうまく機能するようになることを願っており、より多くの役割を引き受け、その代わりにより多くを求めることについても躊躇しない。こうした状況にある以上、ワシントンが東京を犠牲にする形で北京との和解路線をとれば、東京は自主路線の度合いを高め、その結果、アジアの安全保障環境はますます不透明になる。ワシントンが中国との緊密な経済的絆に加えて、安定した戦略関係を築くことについて日本を過度に刺激しないようにするには、あくまでも東京との同盟関係を基盤に中国への関与策を進める必要がある。

2006年7月、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドは再開の目処が立たぬままに凍結され、もはや今回のドーハ・ラウンドが目的に掲げた、踏み込んだ貿易自由化は永遠に陳腐化したとする見方もあった。しかし、ダボスで2007年1月に開かれた世界経済フォーラムに集った30カ国の閣僚たちは、数カ月以内に交渉を再開することに合意し、2月9日には、農業自由化交渉が再開された。だが、交渉の今後を楽観できる情勢にはない。ドーハが失敗に終われば、貿易自由化の進展が望めなくなるだけでなく、グローバル化は停滞し、世界は保護主義の時代に突入する危険もある。無論、WTOの力は損なわれ、富裕国市場へのアクセスを求める貧困国の願いも絶たれることになる。とはいえ、これまでのすべての貿易ラウンドも膠着状態を経て、土壇場で合意形成にいたっていることも事実だ。今後を考えるうえでの懸念材料は、保護主義が高まりをみせるなか、各国が「多角的貿易ラウンドに代わる選択肢として」2国間貿易合意路線へと傾斜しつつあることだ。

CFRインタビュー
なぜアメリカは北朝鮮に妥協したのか

2007年2月号

ゲリー・サモア 米外交問題評議会(CFR) 上席副会長・研究部長

「ホワイトハウスにしてみれば、6者協議における交渉が進展しなければ、北朝鮮が核実験を再度試みる危険があることを憂慮したと思われる。そのような事態になれば、中東、特にイラクで数多くの問題に直面するなか、東アジアでも危機が誘発され、対応を余儀なくされる」。2月の6者協議での合意の背景をこう分析するゲリー・サモアは、核兵器のことを国の存続を保証する切り札とみなす平壌には核を解体するつもりが全くない以上、外交で状況を安定化させ、東アジアで危機を誘発するのを回避するには、今回のような曖昧で、核心部分を先送りした合意で手を打つしかなかったとみる。サモアは、今回の合意を、「賢明な路線」とブッシュ政権を評価しつつも、妥協と見返りに関する連鎖の詳細が合意で定義されていない以上、今後、非常に難しい問題を交渉していかなければならなくなると語った。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

北東アジア戦略環境を検証する

2006年8月号

FAJブリーフィング

日米を中心に各国が対北朝鮮金融制裁を強化するなか、今度は北朝鮮が核実験を準備しているという情報も出てきている。だが、今後を考える上で、7月のミサイル実験を境に、北朝鮮をとりまく戦略環境がすでに変化していることにも目を向ける必要がある。日本は地上配備型ミサイル防衛システムの配備にますます積極的になり、一方、北朝鮮の不安定化を恐れ、これまで慎重な姿勢をとってきた韓国と中国の立場も明らかに変化してきている。韓国はこれまでの北朝鮮関与政策を見直し始め、中国も北朝鮮関係口座の凍結へと踏み切った。ウィリアム・ベリー元国防長官は、「北朝鮮が核実験に踏み切れば、①北朝鮮は核兵器、核関連物質の輸出を試み、②アジア太平洋全域で核の軍拡レースが起き、③イランの核開発を事実上黙認せざるを得なくなり、その結果、イスラエルのイランに対する先制攻撃の可能性を含むまったく新しい問題がつくりだされる」と指摘している。

主要国の指導者はG8サミットに参加するために、7月にサンクトペテルブルクに集う。G8の閣僚レベル会合はすでに今年に入って数回実施されているが、主要国の指導者が集う年次サミットはこのフォーラムのハイライトだ。今年は議長国としてロシアがはじめてG8のホスト国になる。しかし、民主化からの後退をみせ、権威主義路線を強めるロシアのメンバーシップを疑問視する声が各方面から挙がっている。米議会ではサミットのボイコットを求める動きもある。また、中国とインドを除外したG8では、もはや現在の世界の現実をうまく反映できないし、すでにG8は時代遅れの存在で陳腐化しているという見方もある。エネルギー、教育、感染症などが今回のアジェンダとしてすでに特定されているが、真のアジェンダは、ロシアの政治路線とG8の存在理由そのものにあるとみる専門家もいる。

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