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日本に関する論文

CFR Update
衝突する日韓の自画像
―― 未来志向の日韓共同宣言を

2014年3月号

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニアフェロー(朝鮮半島担当)

この60年で韓国は近代化と民主化を見事に実現したが、20世紀初頭の40年間にわたって堪え忍ばざるを得なかった日本による植民地支配の記憶が、韓国の国家アイデンティティの中枢にいまも位置づけられている。この歴史的経験ゆえに、韓国のアイデンティティは反日という枠組みで長く規定されてきた。日本も被害者意識をもっている。第二次世界大戦における敗戦と原爆投下、そして(東京裁判に象徴される)戦時の行動に関する戦後の解釈をめぐって差別されてきたと考えている。こうした自画像が日本人のアイデンティティを複雑にし、侵略者として自らを認識できずにいる。・・・二つの自画像が重なり合うことで政治が動き、その相互作用によって自らが好む歴史解釈が強化され、領土問題への対応は硬直化していく。・・・この状況で欠落しているのは両国の政治家のリーダーシップに他ならない。

日中の政治対立と経済関係
―― 政治対立から経済関係を救い出せるか

2014年2月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

中国は日本との政治対立から経済を切り離そうと試みている。2012年当時は、「日本が中国市場に依存していることを利用して、東京から領土上の妥協を引き出せる」と北京が考えていたことを思えば、これは中国側の大きな路線見直しだろう。中国が対日戦略を見直したのは、日本同様に中国も日本を必要としているという経済的現実を再認識したからだ。中国の輸出部門は日本からのパーツ輸入に依存しているし、省政府は、中国に進出している日本企業がもたらす雇用、投資、技術移転という恩恵を手放したくないと考えている。重要なのは、政治から経済を切り離す構想が北京でなく、日本の中国への直接投資(FDI)が減少していることを憂慮する中国のビジネスコミュニティ、そして省や地方レベルの政治指導者のイニシアティブで進められていることだ。政治対立が経済関係に影を落とすのを放置するのか、相互依存で日本との関係を包み込むのか。中国は分裂しているようだ。

日本の新安全保障戦略の真意はどこに

2014年2月号

J・バークシャー・ミラー
戦略国際問題研究所 パシフィックフォーラム日本担当フェロー

前回防衛大綱がまとめられて数年しか経っていない現状で、新たに防衛大綱が慌ただしく改訂されたことをもって「安倍晋三首相は、東シナ海の問題をめぐって、一か八かの瀬戸際政策を北京に挑むつもりだ」と結論づける専門家もいるし、中国国防部は日本の防衛大綱について「地域の緊張を高め、地域情勢を混乱させようとしている」と強く非難している。だが、日本の国家安全保障戦略が右傾化していると騒ぎ立てるのは間違っている。安倍首相の挑発的な靖国神社参拝は問題があるが、政府が試みている安全保障改革と首相の個人的な見解を混同すべきではない。新戦略や日本版NSCは、中国問題だけでなく、幅広い分野において迅速に重大な国家安全保障上の決定を下すために不可欠なツールだ。日本の新しい安全保障戦略についてバランスのとれた解釈をするには、中国にばかり焦点を合わせるのではなく、日本を取り巻く安全保障環境、アメリカの主要な地域同盟国としての日本の役割、そして、日本がアジア・太平洋地域の安全保障を促進する有資格国であるという全ての点を考慮する必要がある。

韓国経済のポテンシャルとリスク

2014年1月号 

マーカス・ノーランド ピーターソン国際経済研究所 上席副会長(研究部長)

韓国を新興国と呼ぶのは、もはや時代遅れかもしれない。この国は豊かだし、技術面でも洗練され、イノベーション、経済改革、健全なリーダーシップという面で見事な成果を上げている成熟した民主国家だ。しかし、それでも韓国を先進国市場とみなすのは無理がある。経済の貿易依存度が高いために、主要先進国と比べて、市場の変動に翻弄される度合いが大きく、これは韓国経済が克服すべき重要な課題の一つだ。企業部門への集中度が高く、社会の高齢化が進んでいること、政府と企業の不透明な関係、そして、北朝鮮という政治的に危険な隣国を抱えていることも大きな課題だ。北の隣国が唐突に崩壊する可能性は現に存在する。その場合、韓国が大規模な資金を北に援助するか、北朝鮮の民衆が韓国へと流れ込むかのいずれかが現実になる。・・・

Foreign Affairs Update
国際政治と謝罪のリスク

2014年1月号

ジェニファー・リンド
ダートマスカレッジ准教授

日本を批判する人々は、公式に何度も謝罪し、かなりの規模の賠償を行い、第二次世界大戦の残虐行為に関する実直な歴史教科書を出版したドイツと比べて、日本のやり方は十分ではないと考えている。だが、謝罪は和解の前提ではないし、日本だけが例外的な行動をとっているわけではない。ドイツではなく、日本のスタイルが世界の規範なのだ。多くの国は、過去の残虐行為を取り繕い、自国の戦没者を弔ってきた。そして東京だけでなく、ワシントン、ロンドン、テヘラン、テルアビブを含む、世界各国の保守派は、謝罪を求める声に強い反発を示してきた。だが謝罪が必要でもなければ、関係改善の助けにならないことが多いとしても、国際的な和解を実現するには、相手国に大きなダメージを与え、苦しみを強いたことを認めなければならない。・・・

中国の台頭で変化した日ロ関係
―― 和解を模索しつつも、不透明な未来

2014年1月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所 シニアフェロー

いまや中国の台頭が、あらゆる地域関係を緊張させている。ロシアはオホーツク海、北極海での中国の活動に神経をとがらせ、一方の日本は尖閣問題を憂慮している。東京は、尖閣問題をめぐって軍事衝突が起きるのではないかと憂慮している。中国だけでなく、韓国との関係も不安定化しているために、東京はアメリカとの同盟関係を補完するために、北東アジアでもう一つの友好関係を確立したいと考えているようだ。中国の台頭を前に変化する地域環境のなかで、2013年に開かれた日ロ「2プラス2」会合は、両国の関係を先に進める大きなステップだった。日ロ間の懸案である北方領土問題にも変化の兆しがある。・・・ソチオリンピック後に、プーチンは日本を訪問する予定であり、2014年に大きな展開があるかもしれない。だが、この変化が直線的に進むとは考えにくい。・・・

Foreign Affairs Update
日本にネオリベラリズムは似合わない

2013年12月号

トバイアス・ハリス
テネオ・インテリジェンス
アナリスト(日本の政治・経済)

小泉元首相同様に、安倍首相もネオリベラルの改革者になれる可能性はほとんどない。安倍政権の第3の矢も、経済産業省が描く国が主導する優先課題を反映しているに過ぎない。しかも、改革案が表明されても、その構想を結束して骨抜きにし、停滞させ、ブロックしようとする官僚と政治家たちがいるし、年功序列、終身雇用といった現在の経済システムを支えるさまざまな要因は、それぞれに相互を補完し、堅固さを保っている。安倍首相がネオリベラリズムに向けた日本流のショック療法を実施すると考えるのは合理性を欠いている。確かに、アベノミクスはすでに日本のマクロ経済パフォーマンスを改善しているかにみえるし、制度的改革も段階的に刺激できるかもしれない。だが、安倍首相がネオリベラルの経済体制へと日本を作り替えて、それを後任者に委ねることはあり得ないだろう。・・・

効率に欠ける企業、流動性に乏しい硬直的労働市場、低い失業率、相対的に公平な所得分配、女性に不利な雇用市場など、日本経済の特質の多くは文化によって説明されることが多い。だが、こうした特質は、他の先進諸国が1970年代末から1980年代初頭にかけて導入したネオリベラルの経済改革を日本が実施せずに、近代経済を運営してきた結果に他ならない。そして現在、ネオリベラリズム路線に即して、日本経済を未来へと向かわせようとしているのがTPP(規制緩和)と労働市場改革を中核とするアベノミクスの第3の矢だ。だが、第3の矢が折れれば、生産性の低い会社本位主義を中核とする日本の社会モデルが温存され、結局、日本は経済的にさらに取り残されていく。日本は、1980年代にとらなかった選択を下す、2度目のそして最後のチャンスを手にしている。

CFR Meeting
R・フェルドマンが語る
安倍政権の経済思想と構造改革

2013年11月号

ロバート・フェルドマン
モルガン・スタンレーMUFG証券
チーフエコノミスト 兼 債券調査部長

選挙改革が重要なのは、社会保障支出の問題を解決しないことには財政問題が解決できないからだ。選挙制度によって高齢者の利益が一方的に重視されている状況に対処しない限り、問題は解決できない。・・・必要なのは社会保障関連支出を引き下げることだ。一方で、経済成長を加速するには、研究開発、教育、インフラなど、社会保障関連以外のその他の分野への支出を引き上げる必要がある。現状では、これらの非社会保障関連支出はそれほど大きくない。・・・経済情勢が悪化したときに、いかにして高い支持率を保つかは、アベノミクスの今後にとって非常に重要だ。賃金レベルは重要な要因だが、株価や雇用も重要だ。安倍政権にとって重要なのは、とにかく、支持率を高く保つことだ。

CFR Meeting
世界経済アップデート
―― アベノミクスと中国経済の行方

2013年11月号

◎スピーカー
ルイス・アレキサンダー
野村ホールディングスアメリカ、チーフエコノミスト
ビンセント・ラインハルト
モルガンスタンレー、チーフエコノミスト
ネマト・シャフィク
国際通貨基金(IMF)副専務理事

◎プレサイダー
セバスチャン・マラビー
米外交問題評議会地政経済学センター所長

アベノミクスは、日本の金融政策を根本的に転換させ、資産市場を刺激することに成功し、その効果はインフレ期待や実質インフレ率に次第に現れ始めている。投資も上向いてきている。これまでのところうまく施策が機能し、経済状況が進展している以上、アベノミクスが上手くいっていないと決めつけることはできない。・・・(問題は構造改革の)非常に多くがアジアとアメリカを結びつける環太平洋パートナーシップ(TPP)の交渉に左右されることだ。非常に多くの日本の国内アジェンダが(今後の交渉に左右される)TPPの交渉と結びつけられている。・・・」(L・アレクサンダー)

「(債務問題を別のアングルから捉えれば)日本政府は貯蓄率の高い高齢者世代に対して、間接的に国債の利払い義務を負っていると同時に、同じ高齢者世代に年金の支払い義務を負っていることになる。当然、何らかの再調整が不可欠となる。・・・最終的に、日本の構造問題は持続不可能な政府債務と不公平な世代間移転の問題に行き当たる。・・・・」(V・ラインハルト)

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