1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ヨーロッパに関する論文

NATOを中枢に据えた
グローバルな安全保障ネットワークを形成せよ

2009年9月号

ズビグネフ・ブレジンスキー 元米国家安全保障担当大統領補佐官

第二次世界大戦後のグローバル秩序が形骸化すると同時に、パワーが分散し、世界の大衆の政治的覚醒に伴う状況への反発が高まっている。これらが重なり合って、一触即発の危険な状態が生じている。この現実を踏まえて、NATOの集団安全保障条項を再定義し、NATOとロシア・旧ソビエト諸国の関係、NATOと中国、日本、インドとの関係を、グローバルな安全保障ウェブの一部として関連づけていく必要がある。中国、日本、インドとNATOの共同理事会の立ち上げも視野に入れるべきだろう。だが、一部で提言されているように、NATOをグローバルな同盟関係に変貌させたり、グローバルな民主国家連盟へと拡大させたりするのは良い考えではない。そうではなく、NATOが様々な地域的安全保障協調枠組みのネットワークの中枢を担う経験、制度、手段を備えていることを認識した上で、ロシア、旧ソビエト諸国、中央アジア、アジアとの安全保障上の連携を試みるべきだ。

途上国への農業援助を見直せ
―― 飢えに苦しむ人々を救うには

2009年7月号

キャサリン・ベルティニ 元国連食糧計画 エグゼクティブ・ディレクター
ダン・グリックマン 元米農務長官

(経済成長に伴う)アジアの食糧需要増、長期に及んだオーストラリアでの干ばつ、一次産品を対象とする投機、エネルギー価格の高騰および穀物がバイオ燃料の原料として転用されたことなど、2008年に穀物価格がこの数十年でもっとも上昇した背景にはさまざまな要因が重なり合っていた。その後、多くの穀物や食糧価格は低下したが、世界の貧困地域ではいまも多くの人々が十分な食糧を確保できずにいる。……国際社会は、飢えや栄養失調に派生する疾病が世界の公衆衛生にとっていまや最大の脅威であり、AIDS、マラリア、結核の犠牲者総数を上回る規模の人々を死に追いやっていることを忘れている。……金融危機のなか、この問題に目を背けることは簡単だが、その帰結は甚大なものになる。

経済危機の長期化は避けられない
――市場経済モデルの衰退は地政学秩序をどう変えるか

2009年7月号

ロジャー・アルトマン 元米財務副長官(1993~1994)

「現在の経済危機は秩序を揺るがすグローバルな事件だ。世界経済の今後は全般的にきわめて憂鬱な状況にあり、状況を不安定化させるような深刻なリセッションが世界中を覆い尽くしている。しかも、この30年にわたって地球を席巻してきた市場経済資本主義、グローバル化、規制緩和というアングロ・サクソンモデルの時代が終わりつつある。・・・(今後を考える上で)重要なのは「深刻なグローバル・リセッションが長期化する」と考えられ、金融危機によって受けた大きなダメージゆえに世界の3大経済であるアメリカ、EU、日本が循環的な回復を遂げることはおそらくあり得ないこと、そして中国が明らかな勝者として台頭しつつあることだ」

核の脅威を誇張するのは止めよ
―核の惨劇を回避できる見込みはかつてなく高まっている

2009年6月号

マイケル・クレポン ヘンリー・スチムソンセンター共同設立者 

今も世界は核の危険にさらされているが、脅威を削減するのに、脅威を過大視する必要はない。政治家と核不拡散の専門家が警告を発するのに、人々の危機意識をことさらに高める必要はない。国際政治において核を保有することの重要性と意味合いはかつてなく低下している。辛抱強く、一貫した外交を展開してきたことで、いまや核不拡散はグローバルな規範となり、これを受け入れていないのはごく一部の諸国に過ぎない。しかも、すべての安保理常任理事国、そしてインド、イスラエル、パキスタンは「核によるテロリズム」という共通の脅威に直面しており、この共通の脅威の存在が、核不拡散を試みていくための国際的協調基盤を提供している。

CFRブレス・ブリーフィング
最大の脅威はタミフルが
効かないウイルスへと
A(H1N1)が変異していくことだ

2009年6月号

ローリー・ギャレット CFRシニア・フェロー(グローバル・ヘルス担当)、ロバート・マクマホン www.cfr.orgのアクティング・エディター

「なぜ若年成人層がA(H1N1)のリスク・グループになっているかを考える必要がある。この場合に、免疫の弱っている人々、HIV感染者にどう作用するかを考えることも重要だ。次に、致死率を把握する必要がある。そしてウイルスの特性を突き止めなければならない。とくに、2008年9月からアメリカに姿を現し始めた豚インフルエンザとの関係を明らかにしなければならない。そしてタミフルへの耐性を持っているかどうかをつねに警戒しなければならない。すでにタミフルへの耐性を持っている季節型H1N1ウイルスと、今回の新型ウイルスが結びつけば非常に厄介なことになる」。

邦訳文は豚インフルエンザの発生直後、WHOが警戒レベルを4に引きあげるさなかの4月28日(現地27日)に開かれたCFRのプレス・ブリーフィングからの要約。現状でも関連性が高いと思われる部分だけを訳出した。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?

2009年6月号

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ会長

グローバルな金融危機にもかかわらず、国営石油企業が依然として世界でもっとも戦略性の高い資源の75%を支配し、国有企業そして政府の後ろ盾を持つ民間の覇権企業が、民間のライバル企業に対する競争上の優位を持っている。しかも、政府系ファンドは依然として潤沢な資金を持っている。本当に大きすぎて潰せないのはこれらの企業や組織のほうだろう。いまや市場経済の勢いは弱まり、国と政府が主要な経済アクターとして、主に政治的利益のために市場を利用しようとする「国家資本主義」が台頭し始めている。(冷戦期のような)政治的イデオロギーではなく、「市場経済」と「国家資本主義」という2つの経済モデルをめぐるグローバルな抗争という構図が生まれつつある。しかも、グローバルな金融危機とリセッションによって、「国が管理する資本主義」という強力なブランドが突きつける問題と課題はますます大きくなってきている。

Classic Selection 2009
金融危機後に出現する世界の姿は
―世界を主導するのはアメリカ、中国、それとも・・・

2009年6月号

スピーカー
ジョセフ・ナイ/ハーバード大学教授
フィリップ・ゼリコー/バージニア大学教授
司会
リチャード・メドレー/メドレー・キャピタル・マネジメント

「G2という枠組みで今後を捉えるのは間違いだと思う……世界が日本に期待している役割を果たしていくことを東京は真剣に考えるようになった。……より大きなポイントは中国が経済成長のモデルを見直すかどうかだ。今回のリセッションを脱した後も中国がこれまで同様に輸出主導型の成長戦略をとり、経常黒字をますます積みましていくようなら、国際システムは再び大きな圧力にさらされる」。(J・ナイ)

「全般的に『イギリスからアメリカへ』というかつての構図が、いまや『アメリカから中国へ』という構図として再登場している。ポイントは、世界にバランスよく資本を振り分けるとともに、グローバル経済を刺激するような内需を作り出す役割を中国が引き受けるかどうかだ」。(P・ゼリコー)

ウクライナの安定こそ欧米の対ロシア関係の前提だ

2009年6月

エイドリアン・カラトニツキー/アトランティック・カウンシル シニア・フェロー
アレクサンダー・J・モティル/ラトガース大学教授

ヨーロッパとロシアの安定した関係には、ロシア近隣諸国における安定が必要になる。そして、これら近隣諸国の安定はウクライナという鍵を握る国が安定して初めて実現する。一方、強大化したロシアがウクライナを隷従させることに成功すれば、ヨーロッパとアメリカがモスクワとの協調関係を築くのは事実上不可能になる。このジレンマを解く上で最大の障害は「覇権的なロシアを事実上無条件で支持すれば、ヨーロッパは地政学的・経済的に穏やかな環境を維持できる」と独仏が考えていることだ。ロシアとウクライナのいずれかを優先し、一方をおろそかにするのは、壊滅的な事態を招き入れる処方箋に等しい。

欧米とロシアとの関係の鍵を握るドイツ
――普通の国ドイツに求められる新しい役割

2009年4月

コンスタンツェ・ステルゼンミューラー/米ジャーマン・マーシャルファンド、ベルリン所長

ロシアのヨーロッパ戦略において最大の資産は緊密なドイツとの絆だし、一方、ドイツはモスクワとの「戦略的パートナーシップ」を模索している。これは、ロシアと欧米の緊張した関係の間に身を置くドイツがユニークな役割と責任を負っていることを意味する。「かつてのドイツ問題」はすでに解決されている。ドイツはヨーロッパ、そして欧米という枠組みにしっかりと根を下ろしている。しかし現在では、かつて同様に切実な「新しいドイツ問題」が生じている。それは「ドイツはロシアの行動を変え、必要ならモスクワに対して毅然と立ち上がるために政治資源の多くをつぎ込む能力と意思を持っているかどうか」という疑問に他ならない。

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