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ヨーロッパに関する論文

イギリスがEUから脱退すれば
―― ヨーロッパもイギリスも敗者となる

2013年8月号

◎スピーカー
チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニア・フェロー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
◎プレサイダー
マイケル・モセティッグ PBSニュースアワー

「外交的なメタファーで言えば、現在のイギリスは、米ソが対立していた冷戦期のドイツ、米中対立のなかの日本のような存在だ。ヨーロッパで起きていること(銀行同盟・財政同盟)に引き込まれてもかまわないと思うほどに近い関係にあるわけではないが、流れから取り残されてもかまわないと思えるほどに遠い存在でもない」。(A・ポーゼン)

「現状では、ユーロを導入しているのは17カ国、導入していないEUメンバー国が11カ国だ。ある意味では、一定のバランスがある。だが、ユーロを導入していない第2集団がますます小さくなり、残されるのがイギリスとブルガリアだけになった場合にどうなるか。・・・イギリスは、最終的にEUからの脱退へとつながる道を歩みつつある。・・・イギリスがEUから脱退すれば、政治史における自己孤立のもっとも顕著な事例として記憶されることになるだろう」。(C・クプチャン)

世俗化する社会とキリスト教一致運動
―― ベネディクト16世の遺産と新教皇

2013年7月号

ビクター・ゲタン
ナショナル・カトリック・レジスター紙記者

キリスト教は11世紀に東方教会と西方カトリック教会に分裂し、16世紀の宗教改革(プロテスタント運動)でさらに分裂した。だが21世紀の現在、キリスト教はこうした過去の亀裂を修復しつつある。2013年に教皇を退任したベネディクト16世は「キリスト教の一致」を強く模索し、2012年の司教会議に招いたゲストの中にはロシア正教会のイラリオン渉外局長、トルコ正教会のバルトロメオ1世がいた。そして、ここで演説を行ったのは英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教だった。この流れは、先進国における世俗化と物質主義の波によってキリスト教の存続が脅かされているという危機感を各派が共有していることによって形作られている。「キリストは神であり救い主であり、隣人を愛することは信仰上の義務である」という信念に比べれば、これまでキリスト教の一致を妨げてきた教理上の違いなど取るに足らないという認識が高まりつつある。

ラデク・シコルスキはポーランドのビドゴシュチで育ち、1981年春に共産党政権に反対する学生ストライキ委員会を主導した経験がある。その年の後半にヤルゼルスキ政権が戒厳令を敷いたとき、彼はイギリスに留学していた。シコルスキは、1982年から1989年までイギリスで政治亡命者として生活している。オックスフォードを卒業した彼は、ジャーナリストになり、1989年の民主革命後にポーランドに帰国し、政界に身を転じた。1992年にポーランドの国防副大臣に就任した後、1998―2001年に外務副大臣、2005―2007年に国防大臣を務めている。2007年末以降は、ポーランドの外相として活動している。聞き手はギデオン・ローズ(フォーリン・アフェアーズ誌編集長)

CFR Interview
機能不全に陥ったポルトガルの緊縮財政路線

2013年5月号

マヌエル・ピニョ
前ポルトガル経済開発相

2013年4月、ポルトガルの憲法裁判所は、政府の緊縮政策の一部に対して違憲の判断を示した。EUおよびIMFと交わしたベイルアウト(救済)合意では、融資の条件として歳出削減が義務づけられているが、「現実には、緊縮財政への政治的・社会的反発が高まっており、ポルトガル政府は、これまでの路線を見直さざるを得なくなるだろう」。ポルトガルの前経済開発相のマヌエル・ピニョによれば、「リセッション下の緊縮財政が容易ではないこと」がヨーロッパでは必ずしも理解されていない。「これまでの路線を見直しつつあるとはいえ、ドイツとECBの行動はつねに現実よりも一歩出遅れている。・・・ヨーロッパは、財政上の素行の悪い国には懲罰と清算という路線をとるように求めているが、その結果、リセッションと失業が続いている」。・・・リセッションのときには公的支出を増やすべきだが、ヨーロッパはその逆のことをしている。(量的緩和を進めた)アメリカが経済成長を遂げて失業率が低下しているのに対して、(緊縮財政を固持する)ヨーロッパがリセッションから抜け出せず、失業が増大しているのはこのためだ」

CFR Meeting
民主国家同盟D10を立ち上げよ
――なぜ民主国家によるフォーラムが必要か

2013年2月号

◎スピーカー
アッシュ・ジェイン / ユーラシアグループ・コンサルタント
◎プレサイダー
スチュアート・パトリック / 米外交問題評議会シニアフェロー

経済領域ではグローバルな規範に向けたコンバージェンス(収斂)が進んでいるが、民主的秩序の中核である政治や安全保障領域では、民主国家とそうでない国の間に依然として大きな立場の違いがある。問題は民主国家間の戦略調整メカニズムが希薄になってきていることだ。NATO(北大西洋条約機構)やG8ではこの現実を克服できない。脅威が多様化しているために、任務を安全保障領域に限定しているNATO(北大西洋条約機構)が果たせる役割には限界があるし、ロシアをメンバーに迎え入れたことでG8は空虚な声明を発表するだけのフォーラムと化している。必要なのは民主的価値を共有する諸国によるフォーラムを立ち上げることlだ。このフォーラムのメンバーを構成すべきは、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アジア・太平洋の日本、オーストラリア、韓国、そして北米のカナダとアメリカだろう。これにEU(欧州連合)を加えればD10になる。民主的価値を共有する民主諸国連合(D10)は、現在の世界の課題に対処していくもっとも適切な枠組みとして機能するポテンシャルを秘めている。

イギリスのEUジレンマ
――脱退すべきか、踏みとどまるべきか

2013年2月号

ロビン・ニブレット
チャタムハウス ディレクター

「あなたはEUのことが好きですか」とイギリス人に聞けば、「嫌いだ」という答えが返ってくる。「EUから脱退するチャンスがあれば、脱退を支持するか」と聞けば、一部の人は「支持すると思う」と答えるだろう。だが、「イギリスの国内雇用と経済成長をリスクにさらしてもEUから脱退すべきか」と聞けば、人々から明確な答えは返ってこなくなる。つまり、開放的なヨーロッパそして貿易をめぐって、イギリスは主要プレイヤーであり続けたいと考えているが、ユーロのメンバーではないイギリスが、銀行同盟や財政同盟などの経済同盟の深化が必要とするルールに、手足を縛られるのは避けたいと考えている。これが脱退論の背景にある。・・・私はイギリスがEUから脱退する可能性は低いとみている。問題は、仮に国民投票でEU脱退が否決されても、ヨーロッパは「イギリスが本当にヨーロッパにコミットしている」とはもう考えなくなることだ。この場合、イギリスはヨーロッパ政治の傍流に追いやられることになる。(R・ニブレット)

イタリアの緊縮財政拒否でユーロ危機の再燃か

2013年2月号

チャールズ・クプチャン
米外問題評議会シニア・フェロー(ヨーロッパ担当)

反既成政党の立場をとる元コメディアンのベッペ・グリッロ氏率いるポピュリスト運動(五つ星運動)と緊縮財政を批判するシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる自由国民が勢力を伸ばしたことで、イタリア政治は混沌とした状況に陥っている。新政権を組織できなければ、数カ月以内に選挙が再び実施されることになるかもしれない。だが、その間にも緊縮財政への批判が高まり、再度選挙を実施しても、さらに政治的混迷が高まる危険がある。すでに市場は今回の選挙結果にネガティブな反応を示し、株価は下落し、国債の利回りは上昇している。・・・

衰退する独仏協調
――政治統合から危機対応へ変化した 欧州のメカニズム

2012年12月号

ヤコブ・ファンク・キルケガード ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー

これまでヨーロッパ統合のプロセスと制度は、「統合ヨーロッパという政治ビジョン」を前提に組み立てられ、その中枢が独仏の妥協によって形作られる統合プロセスだった。しかし、現在のヨーロッパのプロセスは政治ビジョンを前提とする統合ではない。それは、(危機に対応するための)政治、経済、金融上の必要性に突き動かされた対応プロセスにすぎない。「ユーロゾーンを存続させるには、ユーロゾーンの基本制度を改革する必要がある」という危機対応認識に根ざしている。だが、この対応プロセスにおいて、何かを実現するために、独仏が必ず合意する必要があるかどうか、はっきりしない。別の言い方をすれば、このプロセスにおけるフランスの影響力は、これまでに比べて非常に小さい。オランドが、どのようなヨーロッパをフランスが望むかについての一貫性のあるビジョンを描き、それをどのように実現していくか考案するまでは、かつての欧州統合の時代と比べて、独仏協調の重要性は間違いなく低下していくだろう。

ユーロの解体・存続の 鍵を握るスペイン

2012年11月号

ミーガン・グリーン ルービニ・グローバルエコノミクス、欧州経済担当ディレクター

ギリシャ、ポルトガル、アイルランドのような比較的小さな周辺国経済の危機はなんとか管理できたが、EUはスペインとイタリア経済の双方を救える規模の資金は持っていない。つまり、スペインのケースは、ヨーロッパが危機を管理できるか、それとも、管理できなくなるかの試金石なのだ。おそらく2013年のどこかの段階で、スペインは市場から資金を調達できなくなり、この段階でスペインは全面的なトロイカの支援、つまり、IMF(国際通貨基金)、欧州委員会、ECBによるベイルアウトのすべてを必要とするようになる。そして、スペインにベイルアウト策がとられれば、今度は誰もがイタリアに注目する。仮に危機がスペインとイタリアに全面的に広がりをみせていけば、ソブリン危機、銀行危機がユーロゾーン全体に広がりをみせ、ユーロ圏は全面的に解体していく。問題は、ユーロゾーンを維持して持続的な成長路線に立ち返るには、各国が構造改革を進める必要があるにも関わらず、政治家は誰もが次の選挙での再選を念頭に政治ゲームを展開し、政府も本腰を入れて構造改革に取り組んではいないことだ。

ユーロ危機とECBの役割
――国債購入プログラムの功罪を検証する

2012年11月号

クリストファー・アレッシ オンラインエディター、cfr.org

「ヨーロッパ各国の指導者による危機対応が遅れたために空白が生じ、ユーロゾーンで唯一迅速かつ積極的に事態に介入する力をもつECBは、従来の役割から大きく逸脱した領域へと足を踏み入れざるを得なくなった」。ECBによる国債購入によって、周辺国に流動性がもたらされ、イタリアやスペインなどの経済規模の大きい国の借り入れコスト(国債利回り)も一時的に低下した。しかし、ECBの国債市場への介入に反対する意見もある。「介入は、周辺国が財政均衡に向けて厳格な措置を取ることへのインセンティブを弱めてしまう」とECB前理事のロレンツォ・ビーニ・スマギは言う。特にドイツではこの点が問題視されている。ドイツの保守派の多くは、「こうしたやり方は必然的に財政補填になる」と主張している。債務の重荷に苦しみ支援を求めるユーロ周辺国のすべてにECBはプログラムを適用すべきなのか、その場合、歳出削減と構造改革をめぐってどのような条件を課すべきなのか。苦肉の策であるECBの国債購入は必要な政策なのか。単なる時間稼ぎなのか、モラルハザードやインフレに行き着くことになるのか。

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