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ヨーロッパに関する論文

CFR Briefing
欧州市場は再び不安定化へ
―― ディセンバーサプライズ?

2013年8月号

ロバート・カーン/米外交問題評議会国際経済担当シニア・フェロー

多くの人が指摘するように、ヨーロッパでは危機への対応疲れがみられる。これは、ユーロゾーン全域でみられる各国政府に対する批判の高まり、緊縮財政への反発、あるいは反エスタブリッシュメント政党の台頭などからも明らかだろう。・・・さらに、9月に予定されるドイツの連邦議会選挙が終わるまで(そして、ECBの資産購入プログラムに関する独憲法裁判所の判断が示されるまでは)、依然として困難な状況にあるヨーロッパの周辺諸国に支援が提供されることはあり得ない。今後、銀行と政府に対する圧力がさらに高まっていけば、ECBの債券購入計画はたんなるブラフにすぎなかったという疑問が出てくるかもしれない。ユーロメンバー国がECBによる債券購入の条件(コンディショナリティ)をめぐって、スムーズに合意できるとも考えにくいし、ECBが独自に条件を緩和できるとも考えにくいからだ。・・・秋には、ヨーロッパの金融市場の小康状態は終わり、再び変動期に突入することになるかもしれない。

ヨーロッパ連邦の形成を
―― 次なるヨーロッパプロジェクト

2013年8月号

ニコラス・バーググルーエン バーググルーエン統治研究所理事長
ネイサン・ガーデルス ニューパースペクティブ・クォータリー編集長

「世界の人口の7%が暮らし、世界の経済生産の25%を担う現在のヨーロッパは、世界の社会関連支出の50%を拠出している」。メルケル独首相のこの発言が示唆するとおり、(この人口・経済生産・社会保障支出間の不均衡を)改革を通じて是正していかない限り、ヨーロッパの福祉国家を財政面で支えていくのはますます難しくなる。より踏み込んだ制度的改革も必要だ。EU(欧州連合)を構成する欧州委員会、欧州理事会、欧州議会の正統性を強化し、EUを、単一通貨を支える共通の財政・金融政策をもつヨーロッパ連邦へと進化させていかない限り、ヨーロッパはこれまで同様に未来においても不安にさいなまれることになる。さまざまな不確実性のなかでヨーロッパが直面する課題に対応していく唯一の方法は、ヨーロッパの指導者と市民が、前に踏み出すのを嫌がって機能不全状況のなかに身を置き続けるのではなく、ヨーロッパ連邦の形成という壮大な変革ビジョンにコミットし、前に歩き始めることだろう。

金融政策と財政政策の間
―― イギリスの失策から何を学ぶ

2013年8月号

◎スピーカー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
J・ブラッドフォード・デロング カリフォルニア大学教授
◎プレサイダー
ギデオン・ローズ フォーリン・アフェアーズ誌編集長

「バーナンキは金融緩和に向けてこれまですぐれた措置をとってきた。だがいまでは、われわれは非伝統的な金融政策からは可能な限り、手を引いていくという立場を示唆している。これは、(われわれ金融当局は十分に手を尽くしたのだから)依然として経済が停滞しているのは議会と大統領のせいだと言っているようなものだ。経済の停滞という現状は、財政当局(政府)に責任があり、いまや金融当局としては、長期的な金融の安定に配慮しなければならない。これがバーナンキの本音だろう」。(B・デロング)

「スペイン同様に、イギリスが自国の経済を袋小路に追い込んでしまったのは、中途半端な金融緩和をとり、一方で財政緊縮策をとってしまったからだ。現在、日本は、当時のイギリスとは全く逆のことをしている。日本銀行はついに、われわれが求めてきたような、大胆な量的緩和策をとり、経済は回復しつつある」。(A・ポーゼン)

イギリスがEUから脱退すれば
―― ヨーロッパもイギリスも敗者となる

2013年8月号

◎スピーカー
チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニア・フェロー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
◎プレサイダー
マイケル・モセティッグ PBSニュースアワー

「外交的なメタファーで言えば、現在のイギリスは、米ソが対立していた冷戦期のドイツ、米中対立のなかの日本のような存在だ。ヨーロッパで起きていること(銀行同盟・財政同盟)に引き込まれてもかまわないと思うほどに近い関係にあるわけではないが、流れから取り残されてもかまわないと思えるほどに遠い存在でもない」。(A・ポーゼン)

「現状では、ユーロを導入しているのは17カ国、導入していないEUメンバー国が11カ国だ。ある意味では、一定のバランスがある。だが、ユーロを導入していない第2集団がますます小さくなり、残されるのがイギリスとブルガリアだけになった場合にどうなるか。・・・イギリスは、最終的にEUからの脱退へとつながる道を歩みつつある。・・・イギリスがEUから脱退すれば、政治史における自己孤立のもっとも顕著な事例として記憶されることになるだろう」。(C・クプチャン)

世俗化する社会とキリスト教一致運動
―― ベネディクト16世の遺産と新教皇

2013年7月号

ビクター・ゲタン
ナショナル・カトリック・レジスター紙記者

キリスト教は11世紀に東方教会と西方カトリック教会に分裂し、16世紀の宗教改革(プロテスタント運動)でさらに分裂した。だが21世紀の現在、キリスト教はこうした過去の亀裂を修復しつつある。2013年に教皇を退任したベネディクト16世は「キリスト教の一致」を強く模索し、2012年の司教会議に招いたゲストの中にはロシア正教会のイラリオン渉外局長、トルコ正教会のバルトロメオ1世がいた。そして、ここで演説を行ったのは英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教だった。この流れは、先進国における世俗化と物質主義の波によってキリスト教の存続が脅かされているという危機感を各派が共有していることによって形作られている。「キリストは神であり救い主であり、隣人を愛することは信仰上の義務である」という信念に比べれば、これまでキリスト教の一致を妨げてきた教理上の違いなど取るに足らないという認識が高まりつつある。

ラデク・シコルスキはポーランドのビドゴシュチで育ち、1981年春に共産党政権に反対する学生ストライキ委員会を主導した経験がある。その年の後半にヤルゼルスキ政権が戒厳令を敷いたとき、彼はイギリスに留学していた。シコルスキは、1982年から1989年までイギリスで政治亡命者として生活している。オックスフォードを卒業した彼は、ジャーナリストになり、1989年の民主革命後にポーランドに帰国し、政界に身を転じた。1992年にポーランドの国防副大臣に就任した後、1998―2001年に外務副大臣、2005―2007年に国防大臣を務めている。2007年末以降は、ポーランドの外相として活動している。聞き手はギデオン・ローズ(フォーリン・アフェアーズ誌編集長)

CFR Interview
機能不全に陥ったポルトガルの緊縮財政路線

2013年5月号

マヌエル・ピニョ
前ポルトガル経済開発相

2013年4月、ポルトガルの憲法裁判所は、政府の緊縮政策の一部に対して違憲の判断を示した。EUおよびIMFと交わしたベイルアウト(救済)合意では、融資の条件として歳出削減が義務づけられているが、「現実には、緊縮財政への政治的・社会的反発が高まっており、ポルトガル政府は、これまでの路線を見直さざるを得なくなるだろう」。ポルトガルの前経済開発相のマヌエル・ピニョによれば、「リセッション下の緊縮財政が容易ではないこと」がヨーロッパでは必ずしも理解されていない。「これまでの路線を見直しつつあるとはいえ、ドイツとECBの行動はつねに現実よりも一歩出遅れている。・・・ヨーロッパは、財政上の素行の悪い国には懲罰と清算という路線をとるように求めているが、その結果、リセッションと失業が続いている」。・・・リセッションのときには公的支出を増やすべきだが、ヨーロッパはその逆のことをしている。(量的緩和を進めた)アメリカが経済成長を遂げて失業率が低下しているのに対して、(緊縮財政を固持する)ヨーロッパがリセッションから抜け出せず、失業が増大しているのはこのためだ」

CFR Meeting
民主国家同盟D10を立ち上げよ
――なぜ民主国家によるフォーラムが必要か

2013年2月号

◎スピーカー
アッシュ・ジェイン / ユーラシアグループ・コンサルタント
◎プレサイダー
スチュアート・パトリック / 米外交問題評議会シニアフェロー

経済領域ではグローバルな規範に向けたコンバージェンス(収斂)が進んでいるが、民主的秩序の中核である政治や安全保障領域では、民主国家とそうでない国の間に依然として大きな立場の違いがある。問題は民主国家間の戦略調整メカニズムが希薄になってきていることだ。NATO(北大西洋条約機構)やG8ではこの現実を克服できない。脅威が多様化しているために、任務を安全保障領域に限定しているNATO(北大西洋条約機構)が果たせる役割には限界があるし、ロシアをメンバーに迎え入れたことでG8は空虚な声明を発表するだけのフォーラムと化している。必要なのは民主的価値を共有する諸国によるフォーラムを立ち上げることlだ。このフォーラムのメンバーを構成すべきは、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アジア・太平洋の日本、オーストラリア、韓国、そして北米のカナダとアメリカだろう。これにEU(欧州連合)を加えればD10になる。民主的価値を共有する民主諸国連合(D10)は、現在の世界の課題に対処していくもっとも適切な枠組みとして機能するポテンシャルを秘めている。

イギリスのEUジレンマ
――脱退すべきか、踏みとどまるべきか

2013年2月号

ロビン・ニブレット
チャタムハウス ディレクター

「あなたはEUのことが好きですか」とイギリス人に聞けば、「嫌いだ」という答えが返ってくる。「EUから脱退するチャンスがあれば、脱退を支持するか」と聞けば、一部の人は「支持すると思う」と答えるだろう。だが、「イギリスの国内雇用と経済成長をリスクにさらしてもEUから脱退すべきか」と聞けば、人々から明確な答えは返ってこなくなる。つまり、開放的なヨーロッパそして貿易をめぐって、イギリスは主要プレイヤーであり続けたいと考えているが、ユーロのメンバーではないイギリスが、銀行同盟や財政同盟などの経済同盟の深化が必要とするルールに、手足を縛られるのは避けたいと考えている。これが脱退論の背景にある。・・・私はイギリスがEUから脱退する可能性は低いとみている。問題は、仮に国民投票でEU脱退が否決されても、ヨーロッパは「イギリスが本当にヨーロッパにコミットしている」とはもう考えなくなることだ。この場合、イギリスはヨーロッパ政治の傍流に追いやられることになる。(R・ニブレット)

イタリアの緊縮財政拒否でユーロ危機の再燃か

2013年2月号

チャールズ・クプチャン
米外問題評議会シニア・フェロー(ヨーロッパ担当)

反既成政党の立場をとる元コメディアンのベッペ・グリッロ氏率いるポピュリスト運動(五つ星運動)と緊縮財政を批判するシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる自由国民が勢力を伸ばしたことで、イタリア政治は混沌とした状況に陥っている。新政権を組織できなければ、数カ月以内に選挙が再び実施されることになるかもしれない。だが、その間にも緊縮財政への批判が高まり、再度選挙を実施しても、さらに政治的混迷が高まる危険がある。すでに市場は今回の選挙結果にネガティブな反応を示し、株価は下落し、国債の利回りは上昇している。・・・

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