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中国に関する論文

ユーラシアの地政学と日米中を考える

1997年11月号

ズビグニュー・ブレジンスキー 戦略問題国際研究所(CSIS)顧問

世界の人口の75パーセント、GNPの60パーセント、エネルギー資源の75パーセントが存在するユーラシア大陸は21世紀の安定の鍵を握る「スーパー・コンチネント」だ。ユーラシアにおけるアメリカの差し迫った課題は、「いかなる単独の国家、あるいは国家連合も、アメリカを放逐したり、その役割を周辺化させたりするような力をもてないようにすることだ。この点でとりわけ重要なのが、NATO、そして、アメリカと中国の関係であり、これを軸に、ロシア、中央アジア、日本との安定的共存を図っていかなければならない。NATO拡大とロシアの関係同様に、アメリカ、日本、中国の戦略関係にも細心の配慮が必要になる。肝に銘じておくべきは「再軍備路線への傾斜であれ、単独での対中共存路線であれ、日本が方向性を誤った場合には、安定した米日中の3国間アレンジメント形成の可能性はついえ去り、アジア・太平洋地域でのアメリカの役割は終わる」ということだ。

中国・ロシアを国際秩序に組み込む道

1997年7月号

マイケル・マンデルバーム  外交問題評議会・東西関係プロジェクト議長

「正統的共産主義」がすでに崩壊・解体しているにもかかわらず、ロシアと中国はいまだに新たなシステムを構築できずにいる。そのため両国では、国内ではナショナリズムが幅を効かせ、対外的には自国の主権や地位に過度に敏感な外交路線が採用され、こうした環境を背景に、「ウクライナと台湾が、世界でもっとも危険なスポット」として浮上してきている。大切なのは、国際社会が現状の変革に反対していることを明確に伝え、彼らの現状変革の試みを今後も先送りし続けるように仕向け、すでに定着しつつあるポスト冷戦秩序のなかに、この二つの国家をゆっくりと組み込んで行くことである。いまわれわれに必要なのは、厄介で他の存在を脅かすようなロシアと中国の行動パターンが永続的ではないことを認識した上での、「忍耐強さ」である。

香港返還を読み違えるアメリカ

1997年7月号

フランク・チン  『ファーイースタン・エコノミック・レビュー』誌・シニアエディター

香港の今後をめぐるメディアの懸念は明らかに行き過ぎである。たしかに、主権の返還が制度面にとどまらない政治的混乱をある程度伴うのは避けられないだろうし、返還後の人権、政治システムについての中国の姿勢に世界のマスコミが懸念を募らせてもおかしくはない。だが、中国が香港を徹頭徹尾「経済都市」と捉えようとし、経済システムの多くを温存しようと努めていることを忘れてはならない。中国が「七月一日を期してすべてを破棄してしまおう」ともくろんでいるわけではない。事実、北京政府は「金の卵を生むガチョウとしての香港」が別個の行政・政治単位としての国際的地位を維持するのを認めているし、さらに、台湾の再統一を最終目標にしている中国は、「一国二制度」のテスト・ケースである返還後の香港がうまくいかなければ、最終目標の実現がさらに遠のいてしまうことを十分承知している。これこそ、中国が香港をめぐるこれまでの穏当な約束を尊重すると信じるに足る強力な理由である。香港の不安定化を詮索するのは、少なくとも現段階では「時期尚早」である。

朝鮮半島の統一を急げ

1997年5月号

ニコラス・エバースタット  アメリカン・エンタープライズ研究所・研究員

韓国を含む、北東アジア地域に利害を有する関係諸国は、様々な経済、安全保障上の理由から、朝鮮半島の統一プロセスは、かなりの長期的視野にたった段階的なものであるほうが好ましいと考えている。だが、統一の時期が先送りされればその分、韓国をはじめとする関係諸国が担わなければならない経済、安全保障上の潜在的コストは高くなる。なぜなら「今後時とともに、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が経済的にはより貧しく、軍事的にはより危険な存在」になっていくのはほぼ間違いないからだ。中国とロシアの意向を配慮しつつも、早期統一を目的とする準備を韓国、アメリカ、日本という旧西側同盟諸国のイニシアティブによって即座に開始すべきである。「段階的で秩序立った分断朝鮮の幕引きという楽観的なビジョンは、今日の現実からすれば幻想にすぎない」

開放路線下ですすむ労働者虐待

1997年5月号

アニタ・チャン 「チャイナ・ジャーナル」誌編集長、 ロバート・センサー  前米国務省在外公館付き労働問題担当顧問

中国の労働者の多くは、急速な経済成長の恩恵を受けることもなく、酷使・虐待されたあげくに、搾取されており、その不満は高まる一方だ。共産主義イデオロギーが崩れはじめたいま、国や共産党への忠誠心が労働者の不満を緩和させることもありえない。にもかかわらず、中国の指導層は「労働者たちのことを経済発展のための踏み台」と見なしつづけ、「国の発展のための青写真を考える際に労働者の立場など全く考慮されない」のが現実だ。労働者であるとともに、一方では市場における最大の集団でもある彼らに「自分たちの利益をアピールする自由さえ認められない」とすれば、この矛盾によって政府や企業と労働者の摩擦は間違いなく激化し、現状がつづくかぎり、大いなる社会不安が起きるだろう。ここでのシナリオは三つ、「弾圧」「段階的変化」あるいは「革命」である。

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