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開放路線下ですすむ労働者虐待

アニタ・チャン 「チャイナ・ジャーナル」誌編集長、 ロバート・センサー  前米国務省在外公館付き労働問題担当顧問

China's Troubled Workers

アニタ・チャンはオーストラリア国立大学の研究員で、『チャイナ・ジャーナル』誌の共同編集長。ロバート・センサーは前国務省の在外公館付労働問題担当顧問で、労働者の権利についての論文が多い。

1997年5月号掲載論文

中国の労働者の多くは、急速な経済成長の恩恵を受けることもなく、酷使・虐待されたあげくに、搾取されており、その不満は高まる一方だ。共産主義イデオロギーが崩れはじめたいま、国や共産党への忠誠心が労働者の不満を緩和させることもありえない。にもかかわらず、中国の指導層は「労働者たちのことを経済発展のための踏み台」と見なしつづけ、「国の発展のための青写真を考える際に労働者の立場など全く考慮されない」のが現実だ。労働者であるとともに、一方では市場における最大の集団でもある彼らに「自分たちの利益をアピールする自由さえ認められない」とすれば、この矛盾によって政府や企業と労働者の摩擦は間違いなく激化し、現状がつづくかぎり、大いなる社会不安が起きるだろう。ここでのシナリオは三つ、「弾圧」「段階的変化」あるいは「革命」である。

  • 「われわれはもう我慢できない」
  • 中国版女工哀史
  • 「民工」はなぜつけ込まれる
  • 不透明な賃金体系
  • 「労働組合」の実態
  • 民間経営者団体の萌芽
  • 段階的変化、それとも革命

<「われわれはもう我慢できない」>

ウオール・ストリートの摩天楼から貿易のながれを見ている金融マネージャーたちは、高度成長を続ける中国経済に、畏敬の念と投資欲を掻き立てられている。だが、中国の工場で働く男女労働者の目に映っている経済状況は、ぞっとするほどそれとは異なるものだ。中国の労働者は困難な状況にあり、その一部はひどく深刻な状態に追い込まれている。

鄧小平が一九七八年に新路線を採用して以来、経済改革はこの国の労働力を大きく変化させてきた。改革路線は、中国の企業形態を、国有企業、ジョイント・ベンチャー、「郷鎮企業」、国内の民間企業、外資によって設立された企業という具合に多様化させたが、一方で、すべての形態の企業で労働問題を悪化させた。鄧小平の「中国的社会主義」にみられる主要な目新しい要素とは、一部の「なれる者からまず先に豊かにすること」だった。しかし、労働者の大半 ――― 本来、この国の「主役」であるべき人々 ────は依然としてその取り分を受け取れないまま配分を待っている状態にある。・・・

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