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中国に関する論文

統治危機が招く中国の憂鬱な未来
――世界の対中認識は間違っている

2002年9月号

ミンシン・ペイ
カーネギー国際平和財団シニア・アソシエイト

中国における腐敗の蔓延、地方官僚の士気の低下、エリート層のシニシズム、大衆に広がる幻滅などの社会現象は、統治能力の低下を示す典型的症状だ。いまや中国は、多くの点で、ブレジネフ時代のソビエトの政治的停滞と、スハルト時代のインドネシアでの情実資本主義と全く同じ病巣を抱え込んでいる。統治能力の悪化は、外国企業にとっての対中貿易・投資のコストやリスクを増大させ、現在の経済発展は程なく色あせたものとなり、その後には、長期的な停滞が待ち受けている。世界は、長い間受け入れてきたバラ色の中国の未来像、それも、おそらくは希望的観測が形づくった中国像を再検討する時期に来ている。

変貌する米中通商関係

2002年8月号

ジョセフ・P・クインラン モルガン・スタンレー上級グローバルエコノミスト

米企業は対中輸出を増やすよりも、中国市場に投資して進出し、新たに設立した在中米系関連企業による現地市場での販売を強化するほうが好ましいと考えている。
実際、こうした米系企業による現地での販売、対米逆輸出はともに急増している。いまや米企業の対中投資の目的は、中国市場へのアクセスよりも、国際競争に勝ち抜くための低コストの製造・輸出基地として中国を利用することへとシフトしている。
したがって、ワシントンが対中経済政策を考える変数として重視すべきは、対中貿易赤字ではなく、直接投資による通商関係の質的変化だ。米企業がすでに中国を「戦略的パートナー」とみなしているのに、ワシントンが依然として中国を「戦略的ライバル」ととらえているのは間違った政策を呼び込む処方箋のようなものだ。

中国のWTO加盟という機会と危機

2002年1月号

ジェフリー・L・フィードラー 米労働総同盟・産別会議顧問   ロバート・D・ホーマッツ ゴールドマン・サックス&カンパニー副会長 ケビン・ニーラー 国際政策フォーラム上級研究員  デービッド・E・サンガー ニューヨーク・タイムズ紙ホワイトハウス担当記者

以下は十月中旬に公開された米外交問題評議会のリポート「中国のWTO加盟と米中関係の行方」(日本語インターネット版二〇〇一年十二月号掲載)の公表を受けて開かれた討論会の議事録からの抜粋。スピーカーはいずれもリポートの作成にかかわったタスクフォース・メンバー。発言部分の前に名前を記していない議論は匿名によるもの(匿名と表記)。

朝鮮半島の平和的進化への道筋──米軍の全面撤退を検討せよ

2002年1月号

セリグ・ハリソン センチュリー財団研究員

未来がいかなるものであっても、朝鮮半島は米中間そして日中間の緊張の焦点であり続ける。北朝鮮の脅威がなくなった後も半島での軍事プレゼンスをアメリカが維持すれば、北京政府が、それをアメリカによる中国封じ込めだと考えてもおかしくはないし、中国と日本の旧来の敵意を再燃させることにもなる。まず、経済交流と三十八度線での軍事的緊張緩和に必要とされる法律的枠組み、交渉枠組みの条件を整えるべきである。次に、南北間の緊張が低下し、南北国家連合形成の流れが勢いを持ち始めたら、アメリカは朝鮮半島の非核化構想とともに米戦力の朝鮮半島からの撤退を申し入れ、アメリカと中国はそれぞれソウルと平壌との相互安全保障同盟を同時に解消すべきだろう。

中国のWTO加盟と米中関係の行方

2001年12月号

タスクフォース議長 ロバート・D・ホーマッツ ゴールドマン・サックス&カンパニー副会長、 プロジェクト・ディレクター エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会中国研究プログラムシニア・フェロー 、ケビン・ニーラー 国際政策フォーラム上級研究員

以下は、二〇〇一年十月に発表された米外交問題評議会のタスクフォース・リポートからの抜粋。

レビュー・エッセイ
核の存在理由を問い直せ

2001年8月号

ロバート・ジャービス  コロンビア大学国際政治学教授

アメリカの安全保障政策をうまく機能させるには、その政策を国際社会が受け入れて認めることが前提だが、現実には世界の多くの諸国が、(北朝鮮やイラクよりも)むしろアメリカのことをならず者の超大国と見ている。ミサイル防衛構想に関連して、大量破壊兵器、ならず者国家、テロリズムに対する脅威認識が高まっているのは、アメリカの安全保障に対する伝統的な脅威が存在しなくなったためであり、これらが現実上の問題だからではない。外交政策の一手段として核兵器が存在するわけで、その逆ではないことを認識し、核兵器がどのように外交を利するかが、核の論争の基本テーマでなければならない。

現実味を帯びてきた台湾海峡危機

2001年7月号

カート・M・キャンベル  戦略国際問題研究所上席副会長 デレク・J・ミッチェル 戦略国際問題研究所上席研究員

北京と台北の間の軍事・政治上のコミュニケーションラインが存在しないために、理解不足からの誤算が生じる危険が近年とみに高まっている。これまで北京は、台湾が現状の変革を試みるのであれば、武力行使も辞さないという態度をとってきたが、いまや「台湾が現状の姿勢を維持するようであれば、武力行使を検討する」としている。アメリカの台湾海峡政策の本質は、問題の最終的解決を永遠に先送りし、この地域での平和と安定を維持することにあったが、このままでは、これまでに先送りしようとしてきた問題が目の前にあることをいずれ思い知ることになるかもしれない。

対中強硬策と中国の政治改革の行方

2001年7月号

ジョージ・ギルボーイ マサチューセッツ工科大学政治学部博士課程、 エリック・ヘジンボサム マサチューセッツ工科大学政治学部博士課程

中国は急速な経済改革を模索しつつも、政治的には現状維持策をとり、その結果、今日の中国は、次第に組織化が進み、複雑さを増している社会への適応力に欠ける硬直的で脆い国家になっている。
だが、二〇〇二~二〇〇三年の政権交代期に要職に就くであろう中国の新指導者たちは政治的自由化を進め、社会と政治、国家と社会の関係の再編を試みるだろう。
当然、ワシントンは対中封じ込め政策などとるべきではない。そうした政策は、中国の政治改革プロセスを「封じ込める」だけである。

天安門ペーパー再考

2001年6月号

ルシアン・W・パイ マサチューセッツ工科大学名誉教授

「重要な決定はみな私が承諾しなければならなかった。私はあまりに独りで重責を担いすぎた。これは、共産党にとっても、国にとってもよいことではない。私は、引退を考えるべきだ。しかし、いまこの瞬間に身を引くことはできない。目の前にある問題を放置したままで、どうして引退などできようか」(戒厳令直前の鄧小平の言葉)

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