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変貌する米中通商関係

ジョセフ・P・クインラン モルガン・スタンレー上級グローバルエコノミスト

Ties that Bind

Joseph・P・Quinlan モルガン・スタンレー上級グローバルエコノミスト

2002年8月号掲載論文

米企業は対中輸出を増やすよりも、中国市場に投資して進出し、新たに設立した在中米系関連企業による現地市場での販売を強化するほうが好ましいと考えている。
実際、こうした米系企業による現地での販売、対米逆輸出はともに急増している。いまや米企業の対中投資の目的は、中国市場へのアクセスよりも、国際競争に勝ち抜くための低コストの製造・輸出基地として中国を利用することへとシフトしている。
したがって、ワシントンが対中経済政策を考える変数として重視すべきは、対中貿易赤字ではなく、直接投資による通商関係の質的変化だ。米企業がすでに中国を「戦略的パートナー」とみなしているのに、ワシントンが依然として中国を「戦略的ライバル」ととらえているのは間違った政策を呼び込む処方箋のようなものだ。

  • 流れは貿易から市場進出へ
  • 在中米系企業の躍進
  • 市場アクセスから生産基地へ
  • WTO加盟は何を変えるのか
  • 「メード・イン・チャイナ」の正体
  • 中国はライバルか、パートナーか

<流れは貿易から市場進出へ>

一九九九年十一月に歴史的な合意に達して以来、米中の貿易関係は急速な展開を見せた。それまでの十五年間に及ぶ苦難に満ちた交渉の総決算となった中国の世界貿易機関(WTO)加盟に関するこの米中合意は、二〇〇〇年の米議会によるPNTR法案(米中貿易正常化法案)の承認に向けた追い風もつくり出した。二〇〇一年には、農業、小売り、保険を含む政治的にデリケートな産業に関しても協定が結ばれ、中国のWTO加盟という世紀の取り決めの地盤固めもなされた(訳注:WTOへの加盟を希望する国は、加盟する前にすべての既加盟国との二国間貿易合意を交わすことが義務づけられている。中国のWTO加盟にとっては、アメリカとの合意が最大の難関とみられていた)。

中国のWTO加盟交渉は成功したが、こうした合意も、二〇〇一年には八百億ドルにまで膨れ上がっていた巨大な対中貿易赤字を削減することには役立ちそうもない。だが、長期に及んだ交渉が行われている間に、米中の通商関係が質的な変化を遂げていたことに目を向ける必要がある。この十年のうちに、貿易だけを基盤とするかつての底の浅い通商関係は、米企業の対中直接投資の増加、在中米系企業の中国内での販売増などによって質的に変化し、複雑化している。・・・

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