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中国に関する論文

核の優位を確立したアメリカ
―― 核抑止時代の終わりか

2006年6月号

ケイル・A・リーバー ノー トルダム大学政治学助教授、 ダリル・G・プレス ペンシルベニア大学政治学準教授

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーショ ンでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

CFRミーティング
「ハイテク・チャイナ」の課題と意味合い
 ――中国の技術開発力を検証する

2006年5月号

スピーカー
ウィリアム・T・アーチー  米エレクトロニクス協会会長兼最高経営責任者
アダム・シーガル  米外交問題評議会シニア・フェロー
司会
アン・G・K・ソロモン  戦略国際問題研究所(CSIS) シニア・アドバイザー

シリコンバレーで5年から7年働いた経験をもつ中国人、カーネギーメロン大学で科学技術を教えていた中国人などがいまや母国へと帰国している。帰国後、彼らは自分で研究所や企業を立ち上げるか、中国に進出している多国籍企業で働いている。(A・シーガル)

中国側からの技術移転を求める圧力は大きい。不本意ながら、米企業が要請に応じる場合もあれば、拒絶する場合もある。日本企業は米企業よりも、中国側の技術移転要請に強く抵抗する傾向がある。日本企業が、どの程度抵抗し続けられるかはよくわからない。(W・アーチー)

核の平和利用、石油シーレーンの安全確保などをめぐってアメリカとインドが急接近しつつある。一方、中国をこれまで安全保障上の脅威とみなしてきたインドと中国の関係も経済・貿易を軸に改善へと向かいつつある。対中封じ込めのためにアメリカはインドとの緊密な関係を形成しようとしていると考える専門家もいれば、インドには対中封じ込めに加担する気はないし、そもそも、アメリカにも対中封じ込めの意図はないと指摘する専門家もいる。中国とインドの台頭によって急激に動きだした南アジア秩序再編の流れを検証する。

中国は平和的台頭構想の下、東南アジア諸国連合と友好協力条約を結び、南米やアフリカとの外交関係を強化し、ベトナム、マレーシア、フィリピンとの領有権問題も解決した。さらに、パキスタンとの強固な関係を維持し、インドやロシアとも積極的に交渉している。平和的台頭構想は大きな成功を収めつつある。だが、中国の農村部では社会不満が高まり、政府も2005年だけで87000件のデモが起きていることを認めている。土地の接収、所得格差、地方役人の腐敗などがこうしたデモの背景にある。一方で北京は、日本や台湾に対しては、一転、強硬な外交路線で臨んでいる。特に中国が対日強硬路線をとる理由の一つとして、インドを別とすれば、アジア諸国のなかで中国の台頭を抑え込む力を持っているのが日本だけであることを指摘する専門家もいる。「アメリカが今後もアジアに関心を寄せなければ、いずれ中国か日本がその空白をうめることになる」と日中の覇権競争を示唆する専門家もいる。

エネルギー資源輸出国のロシア、経済成長を支えるのに必要なエネルギー資源を求める中国。互いの経済的必要性を満たす両国の接近を自然のなりゆきと考える専門家も多い。だが、両国の接近は貿易領域に留まらない。「アメリカの影響力を封じ込める」という共通の戦略目標を掲げる中国とロシアは、貿易だけでなく、中央アジアにおける資源開発や安全保障、そして、北朝・イランの核開発問題をめぐっても協調・共闘路線をとっている。両国は、アメリカの覇権に対抗するために広範な領域での外交問題について政策のすりあわせを行い、協調している。また、「ロシアが中国の後ろ盾となれば、経済的にも軍事的にもますます日本の立場は危うくなる」と中ロ連合の日本への余波を指摘する専門家もいる。アメリカの覇権に対抗する中ロ連合を軸に、東アジアの地政学はどう変化していくのか。

中台安定化時代の始まり  ――そして台湾は独立を望まなくなった

2006年4月号

ロバート・S・ロス ボストンカレッジ政治学教授

台湾海峡周辺地域へのミサイルと戦闘機の配備を強化した中国は、2000年までには、アメリカが軍事介入する前に台湾の繁栄を破壊できるだけの軍事力を整備していたし、急速な経済成長によって台湾経済を左右するような大きな経済的影響力も手に入れていた。北京の台湾に対する軍事的、経済的な影響力を前に、台湾の有権者は、台湾の独立を唱える陳総統と民進党に見切りをつけ、中国と折り合いをつけていくことを選択し、ここに、台湾独立を求める機運は事実上、消え去った。中国と台湾の関係が平和的に改善されていけば、米中戦争のリスクも低下する。北京、台北、ワシントンが軍事・防衛体制を調整する機会さえ生まれることになる。

原油価格高騰の真相

2006年4月号

レオナルド・モーゲリ
ENI企業戦略企画担当上席副社長

悲観論者たちは、世界の資源はすでに開発し尽くされており、原油価格のダイナミクスや技術の発展も石油資源の「限界」を覆すことはできないと考えている。たしかに石油の消費が増加の一途をたどっている以上、既存の石油資源に関しては必然的に枯渇に近づいている。だが、科学を装った「資源枯渇」という悲観論者の宿命論は、これまで幾度となく間違っていたことが実証されている。この20年にわたって石油関連投資がないがしろにされてきた結果の原油不足に、中国などの需要増が追い打ちをかけているというのが真実に他ならない。石油資源は潤沢にあるし、今回の原油高騰を例外的な現象とみなすのは間違っている。

台湾の陳水扁総統が中国の「一つの中国」路線に抵抗するなか、中台は互いに相手への批判を強めつつある。だが、現状を危機的な状況にあると考える専門家はほとんどいない。陳が台湾独立にこだわるのは、総統としてうまく権力を行使できないためだとみる専門家も多い。立法院(議会)では国民党と親民党の野党連合が多数派であるため、陳の政治構想のほとんどは挫折し、結果、陳は政治的には身動きのとれない状況にある。台湾政治が二極化するなか、中国は台湾の野党陣営との接触を増やし、一方、独立を求める陳水扁政権は、台湾政治内での存在をアピールしようと中国を挑発するかのような行動をとっているが、現実には「レームダック」に陥りつつある。

日中関係はどこへ向かうのか
 ――政治化された歴史とライバル意識の行方

2006年3月号

ケント・E・カルダー  ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー・センター所長。

小泉首相の個人的、政治的思惑が何であるにせよ、そして、その意図がうまく理解されていないとしても、彼の靖国参拝は、国際的に日本の外交路線を大きく誤解させる火種をつくり出し、日本と中国の指導者が2国間の経済・安全保障関係を管理していくのをますます難しくしている。しかし、ポスト小泉の指導者は大きな機会を手にすることになる。新首相は、日中の首脳会談を復活させ、エネルギー・環境問題をめぐる中国との対話路線を強化し、世俗的な戦没者追悼施設建設の可能性を模索し、靖国神社への参拝を慎むことができる。こうした路線をとれば、日本は外交的な優位をつくり出せるし、日本と中国は、とかく政治的論争となりがちな歴史問題に気を奪われることなく、両国の関係の安定化という真の課題に取り組めるようになるだろう。

アフリカでの影響力を模索する中国

2006年2月号

共同議長
アンソニー・レーク 元米国家安全保障問題担当大統領補佐官
クリスティーン・トッド・ホイットマン 元米環境保護庁長官
プロジェクト・ディレクター
プリンストン・N・ライマン 米外交問題評議会(CFR) シニア・フェロー(アフリカ担当)元駐南アフリカ、駐ナイジェリア米大使
J・スティーブン・モリソン 米戦略国際問題研究所(CSIS)アフリカ担当ディレクター

中国は、スーダンやジンバブエなど、目に余る人権弾圧を行う「ならず者国家」に保護の手を差し伸べ、資源確保のために無条件で融資を提供してアフリカ諸国から改革の動機を奪っている。収益だけでなく、中国の国益の確保を目指す中国企業は採算度外視の入札を行い、他国の企業を締め出している。中国は、相手国にキャッシュ、技術だけでなく、安保理常任理事国の立場を利用して国際的圧力からの盾さえ提供している。中国が天然資源を調達しようとするのは正当な試みだとはいえ、早急に策を講じる必要がある。

アンソニー・レーク、クリスティーン・トッド・ホイットマンを共同議長に迎えて組織された、アフリカ問題に関する米外交問題評議会(CFR)タスクフォースは、「人道支援を超えて――アフリカへの戦略的アプローチを考える」(More than Humanitarianism : A Strategic U.S. Approach toward Africa)というタイトルのリポートを2005年12月に発表した。リポートの内容は、アフリカにおける安全とテロ、紛争解決と平和維持活動、HIV・エイズ、中国の影響力増大、民主主義と人権、投資と多岐にわたる。邦訳文は同リポートの一章「アフリカでの影響力を模索する中国」からの抜粋。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

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