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中国に関する論文

米中関係を考える
――建設的アジェンダと責任あるコース

2007年4月号

スピーカー
デニス・C・ブレア/元米太平洋軍司令官
カーラ・A・ヒルズ/元米通商代表
司会
ジュディ・C・ウッドルフ/ジムレイラー・ニュースアワー、シニア・コレスポンデント

アメリカは、日本、オーストラリアなどの同盟国との関係を強化し、インドや東南アジア諸国との関係も新たに構築していく必要がある。だが、これらは中国を締め出すことが目的ではない。アメリカは日米関係の文脈を踏まえて、日本に中国との関係を改善していくように慎重に働きかけるべきだろう。同様に米印関係も、一方で中国との関係に配慮する必要があり、中印を共通の課題に取り組ませ、互いに競わせるべきではない。(デニス・ブレア)

米中双方にとっての懸案である貿易や経済上の問題をめぐって協調し、中国をグローバルな機構・制度に取り込んでいけば、前向きの結果を得られる可能性を最大限に高められるし、紛争の可能性を最低限に抑え込むことができる。(カーラ・ヒルズ)

2007年1月、中国はすでに打ち上げていた気象衛星を弾道ミサイルで破壊する実験に成功した。その結果、破壊された衛星やミサイルの破片や残骸が地球の軌道で漂泊することになり、これらが商業・軍事衛星その他と衝突する危険が生じている。また今回の実験をきっかけに、宇宙での軍拡レースが誘発される恐れもある。その後、中国はこれ以上実験をする予定はないと表明したが、1月11日の衛星破壊実験は中国が宇宙計画をめぐって大きな進歩を遂げていること、有事の際には、敵の情報収集衛星を破壊する能力を持っていることを世界に見せつけた。実験後、国際社会が中国に説明を求めたにもかかわらず、公式声明を発表するのに数日を要したため、実験をめぐる中国の意図が疑われ、北京が、穏やかな台頭、平和的台頭を本当に目指しているのかも疑問視されだしている。いまや軍事情報だけでなく、金融、経済取引システムの多くが、衛星によって統御されており、アメリカとロシアに加えて、中国が衛星破壊能力を手にしたことの意味合いは非常に大きい。

「ブッシュ政権は、平壌がそう望むのなら、北朝鮮を改革・開放化へと向かわせるような道筋を築き、そのうえで、朝鮮半島の安全保障問題、ひいては北東アジアでの大国間関係のための枠組みをつくろうと、中国、日本、韓国、ロシアの4カ国との協調路線を試みている」。2月の6者協議での合意は、「こうした壮大な計画の序章にすぎない」と語るロバート・ゼーリック前国務副長官は、北朝鮮が開放路線を選択するかどうかは、はっきりとしないとしながらも、今回アメリカが描いた道筋は「金正日が改革と経済開放路線を推進していけば、北朝鮮がさまざまな機会を手にできるように設計されており」、これに北朝鮮への安全の保証、和平条約の締結を組み合わせれば、「改革・開放路線をとれば、体制の崩壊につながる」とみる平壌の危機感を緩和させて、北朝鮮の核問題に対処していく広範な枠組みにできると指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

中国のパワーを検証する
――軍事、経済、ソフトパワーの実態と課題

2007年1月号

デビッド・M・ランプトン 米中関係全米委員会前会長

アメリカを含む世界各国は、中国の軍事パワーを過大評価し、経済面でも、売り手、輸出業者としての中国の役割を過大評価し、買い手、輸入業者、投資家としての中国の活動を過小評価している。そして、中国のソフトパワーの拡大はおおむね無視されている。一方の中国は、経済成長を持続させることこそ、現在の共産党政府の政治的正統性を維持していくうえでの不可欠の要因とみている。そのために、(技術、投資、戦略物資などの)資源を可能な限り国際社会から調達し、対外的脅威を緩和させようと心がけている。だが、国内での政治的緊張に直面すると対外的ナショナリズムのカードを切ろうとする傾向があるし、経済パフォーマンスが低下すれば、政府の正統性も、中国のソフトパワーも損なわれていく。状況が流動的であるがゆえに、中国のパワーの実態を明確に把握しておく必要がある。

CFRミーティング
次期台湾総統候補
呂秀蓮台湾副総統が語る台湾と中国

2007年1月号

スピーカー 呂秀蓮(アネッタ・ルー)  台湾副総統
司会 ジェローム・A・コーエン  米外交問題評議会(CFR) アジア担当非常勤シニア・フェロー

台湾と中国は別の存在であり、ともに独立している以上、国際社会は、もはや時代にそぐわず、とかく誤解をまねくだけの「一つの中国」政策を再検証する必要がある。こうした再検証作業を行って初めて、海峡間論争の効果的な解決策を見いだすことができる。われわれは、台湾の歴史を検証するにつけて、台湾の運命は中国によってではなく、世界情勢によって左右されていると確信している。北京にしてみれば、中国を台湾に再編するのは必然なのかもしれない。しかし、グローバルな視点でみれば、台湾が中国に帰属しないこと、台湾はむしろ世界の一部であることがわかるはずだ。(アネッタ・ルー)

中国の人民元切り上げ問題を考える
――人民元切り上げで「グローバルな不均衡」をなくせるのか

2006年12月号

スティーブン・ローチ モルガンスタンレー・チーフエコノミスト(当時)
デスモンド・ラックマン アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)レジデントフェロー

ワシントンは、中国政府は輸出競争力を強化しようと、人民元レートを人為的に低いレベルにとどめようとしていると批判し、北京が人民元を早急に切り上げることが、アメリカの膨大な経常赤字と中国の巨大な貿易黒字という「グローバルな不均衡」を是正することにつながると主張してきた。しかし、人民元が切り上げられてもアメリカの経常赤字はなくならないとする見方もあれば、人民元が切り上げられなければ、米欧では保護主義が台頭して、グローバル経済の流れが停滞するという議論もある。アメリカの消費者がモノを買いすぎることが問題なのか、それとも、中国が為替操作を通じて輸出競争力を強化しようとしていることが問題なのか。スティーブン・ローチとデスモンド・ラックマンという2人のエコノミストが検証する中国の人民元切り上げ問題。

CFRブリーフィング
北朝鮮経済制裁とイランの核問題の行方

2006年11月号

ライオネル・ビーナー  CFR スタッフライター 

今後、北朝鮮に対する厳格な制裁措置が間違いなく履行されていけば、イランも考えを改めるかもしれないが、現実にそうなるとは思えないし、中国とロシアが、イランに対して強硬な路線へとシフトするとも考えにくい。むしろイランの交渉上の立場は今後強まっていくと考える専門家は多い。北朝鮮は核不拡散条約(NPT)から離脱し、公然と核開発の意図を表明し、プルトニウムの再処理を通じた核分裂物質の生産を試みていたが、イランの場合、ウラン濃縮による核分裂物質の生産を試みているとはいえ、今もNPTに加盟しており、核兵器の開発ではなく、核の平和利用を目指していると繰り返し表明している。ブッシュ政権の高官のなかには、イランのような核開発の初期段階にある相手には、外交的に対処したほうが成果を期待できると考える者もいる。

Review Essay
中国の政治経済体制の今後を検証する
――民主化、崩壊、それとも現体制の存続?

2006年11月号

アンドリュー・J・ネーサン コロンビア大学政治学教授

中国の民主化、崩壊シナリオを唱える人がいる一方で、現体制の存続を予測する人もいる。農村部の貧困や不良債権問題など、山積する課題に直面しているとはいえ、現体制が崩壊する気配はないし、一方で、民主化プロセスが進展する様子もない。 実際、中国の実験は、近代化路線を導入しても、権威主義体制の基盤を損なうことなく繁栄を手にできることを実証しつつあるのかもしれない。カザフスタンからイランまでの独裁政権が、中国の状況を、固唾をのんで見守っているわけはここにある。中国の歴史の流れを大きく変化させるものがあるとすれば、それは、内的要因よりも、むしろ、外からの衝撃かもしれない。アメリカ経済が衰退すれば、経済成長を前提とする中国における社会契約が崩壊してしまうかもしれないし、朝鮮半島で戦争が起き、感染症が蔓延した場合も同様に流れは大きく変化する。

中国の改革とリーダーシップ危機

2006年11月号

ジョン・L・ソーントン ブルッキングス研究所理事長

かつては官僚ポストを独占していたエリート大学の卒業生の多くが、いまでは民間の雇用へと流れつつある。経済開放政策の結果、新たに民間に魅力的な雇用がつくりだされたことで、皮肉にも、この30年に及ぶ改革路線を今後踏襲していけるような、若くて優秀な人材を中国政府は確保しにくくなっているのが現状だ。現在の硬直的なトップダウン型の政治構造にばかり依存し続けるのは、もう無理な段階にきている。共産党は、多くの優れた人材を持つ民間と政府の間に存在する壁を取り払うべきだろう。政治指導者のポストを民間の優れた人材に開放すれば、政治力学と行政効率のせめぎ合いに頭を悩ます現在の指導層のジレンマを解決する助けにもなる。

米印関係は反中同盟の布石なのか
――台頭するインドとバランス・オブ・パワー

2006年9月号

C・ラジャ・モハン/インド国家安全保障諮問委員会メンバー

インドは、米中間の中立を維持しようとするだろうか、それとも現在のインドの大戦略に即してアメリカの側につくだろうか。米印原子力合意は、この設問への最終的な答えを左右しようとするアメリカの試みだった。インドはアジアやインド洋地域で、中国の2番手に甘んじることだけは避けたいと考えているし、むしろ遠く離れた超大国との協調に安定的な利益を見いだしている。ワシントンとの安全保障関係の強化を望むのは、こうした構造的な理由がある。だが、利益を共有しているからといって、それだけで同盟関係が成立するわけではない。両国間のパワーに格差があり、政治的協調の歴史がなく、より踏み込んだ米印の協調に抵抗する官僚が両国に存在する以上、米印の戦略的な協調関係の進化のペースと、規模の広がりは段階的なものになる。

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